帰還編 1-2
フルカネルリだ。目が覚めたときにはもう周囲は明るくなりかけていた。私はどの程度の時間、眠っていたのだろうか?
《今の話なら三時間くらいだヨー》
死んでいた時間は?
《……ざっと、三日位かナー?》
……そうか。
目を覚ました私は、とりあえず周囲を散策してみた。
『……葬儀の途中みたいねぇ……?』
そうだな。
……しかし、自分の葬儀の場を見るのは初めてだ。
《そりゃそうでショー》
『……わたしも、見たこと無いわねぇ……』
そうか。元は人間で亡霊に成ったアザギならば見たことがあってもおかしくないと思ったのだがな?
……おお、私の写真だ。あまり大きいものではないが、まあ、こんなものだろう。
私に友と呼べるものはあまり多くはなかったし、大きすぎても困るだろう。
……それにしても喉が乾いた。
《なんの脈絡も無いんだけドー!?》
仕方ないだろう、乾いたものは乾いたのだ。
さて、近くの水道は……。
水を飲んでいると、急に辺りが騒がしくなった。
何が起きているのかは知らないが、小さく聞こえてくる声を聞けば、明日火葬する予定だった死体が無くなっているらしい。
……私か?
《キミだろうネー》
『……瑠璃よねぇ……』
だろうな。
騒ぎの方へ近付いて行くと、父と母の怒鳴り声が聞こえた。
「母よ、父よ、何故そんなに騒いでいるのだ?」
「「……………へ?」」
父と母に話しかけると、何故か二人は固まってしまった。
「……ああ、そうだ。言い忘れていた」
いまだに固まったままの二人に目を合わせて。
「ただいま」
次の瞬間、私は両親に抱き締められていた。
……痛い痛い、とても痛い。
困惑したまま抱き締められているフルカネルリに、ボクとアザギはやれやれ、といった空気になってしまう。
『……瑠璃ってぇ……鋭いのか、鈍いのか……わからないわねぇ……?』
「そうだネー。それでこそフルカネルリって感じもするけどサー」
……でも、なんとなくわざと気づいてないような気もするんだよネー。とぼけてる、って言ってもいいかも。
ボクとしては楽しいからなんでもいいんだけど。
ハッピーエンドもバッドエンドもいっぱい見てきたし、あんまり終わった話に興味は無いんだよネー。
長生きしてみるとよくわかるヨー。昔のことに囚われてばかりいると、今を楽しめなくなっちゃうのサー。
……さてと。そろそろアフターサービスの時間かナー?
邪神流のアフターサービスはしっかりしてるヨー? ほとんどボク限定だけどネー。
普通なら生き返ったら大騒ぎになるところを、ボクの力で隠し通す。
周りのフルカネルリと関係が薄い人間達の記憶からフルカネルリ達のことを別人に置き換えて、今日で火葬まで全てを滞りなく終わらせたことにしておく。これが一番自然でばれにくいからネー。
それからクトちゃんとクトゥグア、それにアブホースにも連絡を入れる。
これで大体大丈夫、っと。
じゃ、久々に仕事したことだし、寝よっかナー。
……オヤスミー。
真面目で不真面目なナイアの一仕事。