異世界編 1-14
フルカネルリだ。プロトに身長を抜かれてしまった。喜ぶべきなのだが、何故か釈然としない気分だ。
《確かにそれはちょっと嫌かもネー》
『……わたしも、経験あるわねぇ……?』
《経験あんノー!?》
『……あるわよぉ……?』
おそらくナイアもあるのではないか? 例えば同級生は昔は同じくらいの背の高さだったのに、気付いたら皆自分よりずっと背が高くなっていた、ということが。
《……あるヨー。嫌だけどネー》
やはりあったか。
さて、ようやくプロトがある程度の免疫力を持ったことだし、危なくない薬の実験台になってもらうか。
《何このド外道!? 自分の息子を新薬の実験台にしようとするなんテー!?》
危なくないもの限定だ。本来ならば私自身で試すのだが、健康の呪いのお陰で薬が全く効かないのでな。
それに実験台にすると言ってもしっかりと実験用のマウスで効果を確認した後での話だ。さすがの私でもいきなり自分で産み出した存在を実験程度で潰す気は無いさ。
……元々そのために作ったものでなければ。
《プロト君ハー?》
プロトは科学力だけで人間を作れると知ってついやりたくなってしまったので作ったものだ。それに私の体の一部を受け継いで作られた人間に私の呪いが遺伝するのかといった実験という意味もある。
……実験の結果、呪いは受け継がれることはないとわかったが。
《ボクに聞いてくれれば良いのニー》
あまりナイアに頼ってばかりではつまらないからな。
………さて、手始めに性別逆転薬の実験に移るとしようか!
《いきなりフルカネルリのテンションダダ上がりしター!?》
『……気持ち悪いくらいに上がったらわねぇ………』
実験成功。プロトは息子から娘になった。
……とは言え、流石に永遠にと言うわけではなく一時的なものだったし、思考や言動もそのままだったが。
いつか効果が永遠に続く物を作ってみたいな。
《フルカネルリには効果がないけどネー》
それについては仕方がない。おそらくナイアならばなんとかできるのだろうが、あまりそうしてもらいたいと言うことは無いしな。
……やる気も無いだろう?
《さっすがフルカネルリ。ボクの事をよーくわかってるネー》
長い付き合いだからな。
……十年ほど違うが、アザギもな。
『……うふふ……あら、嬉しぃ……♪』
性別転換薬の効果は実証されたので、すぐに解除薬を飲ませて様子を見る。
性転換時の初めは軽い痛みを訴えていたが、それは解除するときも同じであったようだ。
……ふむ。およそ‘紙で指を切った’程度の痛みらしいな。ピリピリとした痛みが全身、それも皮膚だけではなく体の内側までしているらしい。できることならば使いたくないな。
……ああ、私の場合使っても意味はないのだったか。
さて、次の実験に行く前に……
「昼食にするか。なぁ、プロト?」
「はい、お母さん」
……やれやれ。こういうところまでハヴィラックにそっくりなのだな。
……あれ、なんか久々な気がする。なんでかナー?
…………まあいいヤー。久々だろうがなんだろうが、神にはあんまり関係ないしネー。
フルカネルリはプロト君と一緒にご飯を食べている。
今はいないけど、いつもはハヴィラックも一緒。今は多分フルカネルリのお願いを実行するために無理してるんだと思う。
……ま、フルカネルリのために、ついでにボクの暇潰しのために、頑張ってネー。
久々に視点交代をしたナイアの一人語り。