異世界編 1-13
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フルカネルリだ。プロトが私を‘お母さん’と呼んだ。まあ、仕方がない。父には見えんしな。
《そうだネー》
ナイアのせいだがな。
今までに覚えた知識の中から必要なものだけを取り出し、組み合わせて理論を作る。
そうしてできあがった理論の検証をして、自分の望む物に近づけて行く。
《何作ってるノー?》
ん? ああ、これは白衣のポケットの中身についてのことだ。
拡がった空間には空気が無く、真空とも言える状態のはずなのだが、なぜか外から空気を吸い込むこともなくそのまま存在しているだろう?
《……あー、言われてみれば確かにそうだよネー。なんデー?》
簡単な話だ。拡がる前からその中に入っていた物は空間が拡がる際にその空間が拡がった分だけ大きくなる。それだけのことだ。
無論拡がった後から入ったものはそのままの大きさなのだが、そのせいで少々困っているのだ。
《なになにどうしたノー?》
……前から入っていたものが大きくなりすぎて、後から入れたものを出すときに邪魔で仕方がないのだ。
それを何とかしようとしているのだが…………難しいな……。
『……ならぁ……一回中身を全部出してぇ……中に外から新しく空気を入れちゃえばいいんじゃないのかしらぁ……?』
……出したとして、その後にどこから空気を持ってくる? この地球上に存在する分では絶望的なまでに足りないぞ。
《木星って中身が氷で外側は全部空気だったよネー?》
…………ああ、つまりそうすればいいのか。
それに原子変換機で幾つか星を全て空気に変えてやれば……いや、その前に大きくなった原子をそのまま変換して細かくすれば…………
久々に徹夜をした。実験は大成功、これでポケットの中身を取るのに不便はなくなった。
それに欲しいものを思い浮かべながらポケットに手を入れれば勝手に検索して手の方に近寄らせてくれるようにしたし、改造ついでにポケットの中に原子変換機と発電機と半重力発生装置を入れ、半永久的に空間を拡げたままでいられるようにした。
発電機で作った電気で原子変換機を動かし、燃料を作ると同時に半重力発生装置で重力を打ち消す。
原子変換器が燃料に変えるのはポケットの中の空気。ただし発電機が物質の質量をそのまま電気エネルギーに変えた上でほぼ抵抗が0の状態で流すという凄まじく効率がよいものなので、あまり気にしなくても勝手に動き続けるのだが。
しかもその上で私の組んだ術式の効果によってその周りだけ時間の流れが遅くなっているため、使うエネルギーはずっと少なく済んでいる。
《科学と幻想が合わさるって怖いネー》
そうだな。それに霊気を圧縮した球体を燃料にすれば私が存在している限りは動き続けることができるようにすることも可能だ。
つまり、私が元の世界に帰るまでは事実上動き続けるわけだ。
……まあ、それはおいておくとしよう。今さらこの服の性能がわかったところで大した違いは無いだろうし。
食事にしよう。ナイアとアザギも一緒に。
《やっター!》
『……ふふふ……ありがとねぇ……?』
こうして異世界で仲良く暮らすフルカネルリ一行の話。