二十万アクセス記念外伝
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これは昔々の話。まだまだナイアが幼くて、あんまり物事を深く考えなかった頃の話。
「てけりっ!お茶のお代わりはいかがでしょうか?」
目の前にショゴスさんがティーポットを片手に近寄ってくる。
「んー、じゃあお願いしよっかナー」
ボクがそう言ってカップを出すと、ショゴスさんは嬉しそうにそれを受け取って、
「てけりりっ!」
と返事をした。
そのメイドのような格好の女性は、この家に代々使えている奉仕種族の一人であった。名前はショゴス。
そして、今ショゴスにお茶を入れてもらっているのは、この家に遊びに来ていたナイアである。
「てけりりー♪ はいどうぞ」
「ありがとネー」
ショゴスからカップを受け取ったナイアは、くぴっとその中身を飲み始めた。
そして一言呟く。
「……遅いナー……」
「……遅いですね……」
今日ナイアがここに来た理由は、友神のことで相談があったからである。
その友神は、なぜかは知らないが最近引きこもりではなくなってきたヨグソトスのことだ。
「……先生は、今何をしてるのかナー?」
「……てけり。おそらくまだ寝ているのではないでしょうか? あの方は休みの前日には限界まで徹夜を繰り返し、休みの日に纏めて眠るという習性がありますから……」
「……ふーん」
はぁ、と溜め息をついて、ナイアはまた紅茶を啜る。
「……てけり。ご主人様がいらっしゃるまで、私とお話でもいかがでしょうか?」
「……それも良いかもネー……おかわりってまだあるかナー?」
「てけり。お好きなだけ」
こぽこぽとナイアのカップに紅茶が注がれる。淹れてからしばらくたっているはずのそれは、なぜか今もまだ湯気を立てるほどに暖かい。
ナイアは注がれたそれを一口飲んで、テーブルの上に置いた。
「そうだネー。お話しよっカー」
その言葉を待っていたかのように、ショゴスという名のメイドさんは笑いながら答えた。
「てけりっ。お望みのままに」
独特な話し方をする二人は、のんびりと長い時間話を続けた。
話の途中で喉が乾けば紅茶を飲み、小腹が空けば少しだけ菓子を摘まみながら、二柱は多くのことを話した。
――でネー。それからこんなこともあってサー……」
「てけりりりり……そうですか、そんなことが……なら、こんなことは知っていましたか?」
「え? 何なニー?……でもその前ニー……」
「てけり。どうぞ」
赤い液体がナイアの持つカップに注がれる。
「ありがとネー」
「てけり。奉仕種族としては当然です」
くすくすと笑い合いながら話は緩やかに続く。
「……それにしても、先生は遅いネー?」
「……てけり。遅いですね……ところで、ケーキを作ってみたのですが、ご試食はいかがですか? 味見はしてありますが」
「うーん……もらっちゃっていいかナー?」
「てけり。どうぞ」
ショゴスがそういうと、どこからともなく一切れのケーキが現れた。丁度1つの丸いケーキを十二等分すればこのケーキができるだろうという程度の大きさだ。
「……もくもく……うん。美味しいヨー」
「てけりりっ♪ それはよかったです♪」
「いいお嫁さんになるヨー」
「てけりっ!?」
そんなことを言われることになるとは思ってもみなかったようで、ショゴスは頬を赤らめながら叫んだ。
「……ところで、紅茶のお代わりはまだあるかナー?」
ナイアがそう言うと、その動揺はすぐさま抑えられ、
「……てけり。望みのままに」
こぽこぽと真っ赤な液体が、ナイアの持つカップに注がれた。
この頃から人をからかうのが大好きだったナイアとそれに振り回されていた有能なメイドさんのある日のできごと。
「……え、あノー、ショゴスさん? 多すぎるような気がするんだけドー?」
「てけり。どうぞお口の方からお迎えに行って上げてくださいませ」
「………もしかして、怒ってたリー?」
「てけり。どうでしょうか?」
そしてメイドさんの可愛い仕返し。