異世界編 1-12
すみません、遅れてしまいました。受験って面倒ですね。
フルカネルリだ。プロトもずいぶん大きくなって、自分の力で歩けるようになった。行動範囲が一気に広がって大変だが、ハヴィラック達がいつも見ているし、知識もあるので危ないところには近寄らないだろう。
《そうだネー》
最近は研究を機械の私に任せてプロトの世話をしている。
トイレには自分で行けるようになったが、まだおねしょはなおらない。
《フルカネルリは三歳の時に止まったんだっケー?》
ああそうだ。どうしても嫌で気合で止めた覚えがある。
ちなみに、母は小さい頃から果物が好きで夜寝る前に果物を食べたいがおねしょがまだなおっておらず、禁止されそうになったがところで絶対におねしょはしないから果物を食べさせてくれと懇願して本当に止めたらしいな。これも三歳の頃だと聞いたが。
《意思の力ってすごいネー》
『……ふふふ………驚きねぇ……♪』
……もしかしてプロトも同じような理由で三歳になったあたりで止めるのだろうか?
《……ありそうな気がするナー》
『……十分、考えられるわねぇ……?』
どうやらプロトは私の血を引いているが、ナイアから受けた呪いはかかっていないらしい。風邪をひいてしまったようだ。
……流石に万能の風邪薬は無いが、すぐに治せるようだから別に構わないな。
しかしこの時代の細菌は薬に異常と言っても良いほどに強く、また毒性も強いものが多いな。私が元の世界に帰るときに一緒に持っていくようなことがなければいいのだが……。
《大丈夫サー。元々フルカネルリとフルカネルリが求めたものだけを連れて帰るようにしてるからネー》
そうか。ならば安心だな。
………しかし、やろうとすれば生命体ですら持ち帰ることができるのだな。
《そうだヨー》
ならば細菌のサンプルやこの時代の麹も持ち帰ることができるのか。それならば今のうちからワインでも作っておくか。
「ハヴィラック」
「はい、フルカネルリ様」
呼んですぐに私の目の前にハヴィラックの立体映像が映し出される。声はその辺りに浮いている小さな機械群が細かく振動することによって出ていると設計図に載っていた。
「酒を作ろうと思う。材料を用意してくれるか?」
「お酒は二十歳になってからです、フルカネルリ様」
……やれやれ、またか。
私は軽く溜め息をついてからハヴィラックの立体映像を見やる。
「……私はすでに五百を越えているが?」
確かに体は十歳のままだが、年月だけならばそれだけ長いことこの世界に存在している。
ハヴィラック達は私の体が未だに十歳の頃と変わっていないためにそう言うのだが、健康の呪いのお陰で酒を飲もうが煙草を吸おうが劇物を摂取しようが全く体に害はないのだ。
……煙草はあの匂いで集中が途切れてしまうので嫌いだ。それに前世ではまだそういったものに耐性が無かったため、頭にぼんやりと霞がかったような気分になるのが嫌だった。それが今も残ってはいるが。
《吸わない方が自分のだけじゃなく、周りの人の健康にも良いしネー》
そうだな。
「……了解しました。二時間ほどお待ちください」
ハヴィラックはそう言って通信を切った。
……二時間か。ハヴィラックにしては少し長いな。星を越えて最高級品でも集めるつもりか?
『……ふふふふ……どうかしらねぇ……♪』
……まあいい。とりあえず、上手く酒が出来たら飲ませてやる。
《宴会ダー!》
『……宴会ねぇ……♪』
フルカネルリはお酒好き、でもあまり量を飲もうとはしないタイプ。