異世界編 1-9
フルカネルリだ。流石の未来科学でも時間跳躍を安定して行うことは不可能だったようで、いまだに完成していない設計図のデータが出てきた。
正確に言うと理論的にはこれで時空間跳躍は可能となるのだが、このままでは人間の体のままでは……いや、たとえ人間以上の再生力、そして頑丈さを兼ね備えていたとしても、生きて時空を越えることは不可能だというものだ。
《そりゃあもうそこまでいったら化物の域だからネー。神様には程遠いとしたって人間のままじゃあ無理サー》
私なら出来るか?
《楽々できるヨー》
邪神直々に人外認定をもらってしまった。
『……それでも……瑠璃は、瑠璃よぉ……?』
わかっているさ。
やはり私の予測は当たっていたようだ。
この世界にはもう生きた人間は居ない。既に滅びているらしい。
だからハヴィラックやその他の機械兵は、私の命令を全て実行してくれたらしい。
……ナイア。お前は知っていたのだろうな?
《知ってたヨー》
それでこそ神だ。
………だが、私にとってそれはむしろ好都合だ。
すぐさま火星と月の住居に連絡を入れて、記録されている全ての情報を地球に送らせる。
なぜこれほどの技術を持った世界が滅んだのか……非常に興味深い。
様々な予測を裏切り、滅んだ理由はただのうっかりと不幸の連続だったらしい。
ことの始まりは、とある研究者のある発明からだった。
データの破損が酷すぎて詳細は不明だったが、どうやら当時に流行していた病の特効薬であるらしい。
病名はデータが無いために不明だが、ウィルス性の病で、かつ放っておけば徐々に体の末端から痺れが広がって行き、酷くなれば動かなくなり、最後にはゆっくりと心臓が動きを止めるという病。
発症から四十年ほどの時間をかけて緩やかに症状が進んで行くその病の特効薬。それはその当時の者達に諸手を上げて歓迎される物だった。
しかしその薬は健康な者には猛毒であり、ほんの僅かな量を摂取するだけで医学が異様に発達していたその時代でも僅かな延命が限界なまでのダメージを肉体に与えるような物であったようだ。
しかしその科学者はその事がわかっていたにもかかわらず、その事を伝えるのを忘れてしまった。
当時は割合にして九割以上の人間がその病にかかっていたらしい。その薬はあっという間にその病を払ってみせた。
しかし、発症していなければそれはただの毒。
治った途端に殆どの人間は全身に深いダメージを負った。受けていないのは、まだ産まれたばかりの子供と、ほんの僅かな健康だった大人のみ。開発した科学者すら、その問題が表面化した時には死んでいたようだ。
こうしてほぼ全ての人間は死に絶え、残った者達も超科学の檻の中でゆっくりとその命を消していったらしい。
……………まあ、私には関係無いことだがな。
《健康呪いがあるもんネー》
そうだな。
……さて。昔のことも良いが、今はこっちの研究の方が大切だ。
『……そうねぇ……初めて瑠璃が一人で作る、人造人間だものねぇ……?』
ちなみに元はハヴィラック。それに私の遺伝子も少々混じっている。
《文字通りの子供だネー》
そうだな。名前はプロトだ。
《……ネーミングセンスがないネー》
………私がつける名前はもっと酷いからな。安直な名前の方が良いのだよ。
《例えばどんなやツー?》
……ハングッドマン?
《………ゴメン。ボクが悪かったヨー》
本当にな。空から降り注ぐ鉄アレイの雨に全身を打ち付けられて死ね。
《なんかすごい久々!? でもやだヨー!?》
世界で一人きりのフルカネルリ。