異世界編 1-6
実は異世界編は六話で終了の予定でした。
……いえ、まだ続きますよ? 色々とノリで付け加えたので。
フルカネルリだ。さて、研究の続きをするか。
《全くあと引いてないノー!?》
引いていないが?
《……人間味のない人間だナー………》
『………ほんとにねぇ……』
悪いか?
《別ニー?》
『……いいんじゃないのぉ……?』
そうか。
壊れた機兵はすぐに溶かされて再び資源になるようだが、一機だけもらって分解してみた。
……うむ。やはり設計図と実物の差は大きいな。
設計図はいつからか専門の機械が引いているようで、感情や意思といったものが全く感じ取れない。
……精々ひたすらに良いものを作ろうとしていることぐらいなものだ。
『……ふふふ……瑠璃に、似てないかしらぁ……?』
……流石にあそこまで感情がないわけではないし、私は作る者ではなくただの知りたがりという違いがあるが…………その通りかもしれないな。
……だからといって研究の手を休める事は無いが。
《……根っからの研究者がなんか言ってるヨー》
五月蝿い。酸性雨を頭からかぶり続けて溶けて死ね。
《すっごい嫌だし痛々しいんだけドー!?》
『……あららぁ……頑張ってねぇ……?』
《こんなこと頑張るわけないでショー!?》
毎日の日課であった朝の太極拳だが、一度眠って起きた後にやるように変化した。
……毎朝やっていては研究が進まん。
そのかわり、量と質を少しずつ上げて行く。元々太極拳だけではなく様々な中華系拳法の套路の組み合わせだったが、今や中華系拳法の以外の物もふんだんに取り入れられている。
その分長くなったはずなのだが、時間は変わらない。
これは恐らく体が慣れてきていて、少しずつ早くなっていっているのだろう。
……まあ、なんであろうが私のやることは変わらない。ただ、毎回起きれば体を動かし、それから食事をして研究に戻り、限界まで研究に没頭して気絶するか自分でベッドまで戻って眠る。
それの繰り返し。
なんのために研究を続けるかなど知ったことではない。私が知りたいからやっているだけだ。
調べたものがなんの役に立つのか? そんなものはどうでもいい。役に立とうがたつまいが関係無く私は知りたい。
私の限界まで。
《………このままだと、いつか祭り上げられて神様になっちゃいそうだって、言っといた方がいいよネー?》
ああ、その方がありがたい。
だが、それでも私は研究を続けるぞ?
《好きにしなヨー。ボクはフルカネルリが神様になろうがどうでもいいからネー》
そうだな。私もそんなことはどうでもいいさ。
《自分のことだヨー!?》
……あれか、私はそんなこともわからないような馬鹿だとでも?
《いやいやいやいや!そうじゃなくってネー……》
まあ確かに私はこういったことに関しては馬鹿だがな。
《自分で言っちゃっター!?》
事実だからな。
いつの間にやらこの大隊の名がフルカネルリ機甲兵大隊になっていたのを発見した。
……なぜ私の名がここで出てくるのだ?
《秘密にして自分で調べルー? それとも今ここでボクに聞いちゃうことにすルー?》
その前に……調べればわかるのか?
《わかるはずサー》
そうか。ならば秘密にしておいてくれ。
《オッケーだヨー》
よし。
……さて、調べるのはまた後にするとして……
《後にしちゃうんダー》
するとも。今は古くからの酒作りの方法を学ぶので忙しいのだ。
《体十歳だからネー!?》
知っている。だがそれがなんだ? お前自身が掛けた健康の呪いによってアルコール中毒や二日酔いにはならないだろう?
《……ならないけどサー……》
『……ふふふふ………こんな風に使われるなんて、思ってなかったかしらぁ?』
《………まあネー》
それはお前のミスだな。私はやるぞ。
……ハヴィラックはいまだに私を子供扱いして酒もタバコも許してくれないが。
……タバコは吸わないから良いとして、酒については実験どころか料理に使うこともできない。
……………やれやれ。
《何度も言うけど体は十歳だからネー!?》
頭の中身は爺だがな。
酒は嫌いじゃないフルカネルリ。