異世界編 1-2
異世界編はそんなに長々とは続きません
――報告。哨戒任務中に‘人間’を発見。命令により、第三機甲兵大隊駐屯地へ進行中。ルートは直進。
第一原則の適用により、戦時行動を停止し、休戦の打診を提案。オーバー。
――全て了承。休戦連絡完了。仮想敵国、沈黙。オーバー。
――こちら仮想敵国本部。休戦は了承。一時撤退する。
――了解。
フルカネルリだ。何かあったような気がするが、気にすることはない。私を運んでいる機械の通信記録を解析して読み取っただけだ。
《解析をボクも予想してなかった方法で活用してルー!?》
人の頭の中身ですらある程度なら読み取れるのだから、これぐらいなら楽にできる。
……それにしてもこの時代のプログラム言語は素晴らしく進んでいるな。神位共通言語ほどではないが、少々苦労した。
《お疲レー》
ああ。
第三機甲兵大隊の駐屯地に到着。様々な形をした機械が見える。
……ああ、研究したい。
バラバラにして間接部分の造りを確認したい。
コンピューターを繋いで人工知能を上から覗いてやりたい。
素材の一つ一つを手にとって解析したい。
使われている技術を、全て私のものにしたい。
『……ふふふ……瑠璃は、我儘な子ねぇ……♪』
《それでこそフルカネルリって気がするけどネー》
私のことをよく理解しているじゃないか。
私の前に、人の形をした何かが跪いている。
外見は人と変わらないが、解析してみればわかる。
これは、完全に人の手で作られた人間だ。
いくつもの蛋白質を組み合わせ、筋肉や脳を作り上げ、内蔵を形作らせて、人と同じくなるように作られている。
ただ、頭の中に洗脳用の機械が埋め込まれている以外は、ただの人間だ。
………新たな研究対象が、向こうから来てくれるとは……素晴らしい。
「御名前を」
……ああ、これで認証するのか。
私は、この機械達の仮の主に向かって、名乗りをあげた。
「私は、フルカネルリだ」
自覚はなかったが、私はこの瞬間に、この世界での最高権力者になっていた。
「確認いたしました、フルカネルリ様。これより、我々、第三機甲兵大隊、以下全ての機甲兵は、フルカネルリ様の指揮下に入ります」
「わかった……ふむ。お前、名前はあるか?」
目の前の人造人間に名を聞く。あるとないとでは大違いだからな。
「機体番号、0000025番、です」
……二十五番か。
「ならばお前はハヴィラックだ」
「了解しました」
私が言った命令も素直に受け入れたハヴィラック。何故かは知らないが、私に全ての命令権があるようだ。
《そうらしいネー。……ところで、なんで二十五番がハヴィラックなノー?》
……前世で私が作った二十五番目の発明品の開発時の仮名称がハヴィラックだったのだ。
《……なに作ったのサー》
……正確には、作ろうとして技術と材料の壁にぶつかり、断念したのだがな。作ろうとしたのは、馬より早く、多くの荷物を運ぶことのできる機械だ。簡単に言うならば、車だな。
《あの時代にそんなの考えてたノー!?》
ああ、そうだ。
『……なんの話かは知らないけどぉ……車を作るには、早いと思うわよぉ……?』
……そうだな。
《まあ、確かに時代的にも技術的にも早かったネー》
異世界で王になったフルカネルリ(自覚なし)。