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フルカネルリだ。新年の書き初め大会で初優勝。見事に餅を十七キロときな粉、醤油、海苔、大根おろし、砂糖、餡子を‘お餅七つ道具’として渡された。家に帰ったらすぐに食べようと思う。
《ボクの分はあるかナー?》
『……わたしの分は……?』
……食べられるのか?
《ボクはお供えしてもらえれば食べられるヨー》
『……実体化……すればねぇ……♪』
そうか。ならば焼こう。なにがいい?
《ボクはきな粉がいいナー》
『……わたしは……砂糖醤油が……いいわぁ……♪』
そうか。わかった。
今日は朝から餅を食べる。母は
「お餅パーティーよ」
と言っていたが、食べなければ勿体無いと言うだけの話だ。
《もちゅもちゅ……お餅ウマー!》
『……わたしの分は……?』
アザギが悲しそうにしているが、これは仕方がない。
実体化するということは、それはつまり母や父にもその姿が見えるようになるということであり、説明するのに時間がかかりそうだったので後回しになってしまっているのだ。
……すまんな。後で旨い餅を食わせてやるから、今は我慢してくれ。
昼に白兎が遊びに来た。そしてそのまま餅パーティー続行だ。
「……このお餅美味しいね……普通に売ってるのより、ずっと美味しい……」
そうだな。
《そりゃそうサー。見た目はただの丸餅だけど作ったのはかなり位の高い神様デー、しかも三柱が一緒に作ってるんだからサー》
……なるほど。言われてみればその通りだな。
『……神様がぁ……おもちつきぃ……うふふ……♪』
《ぺったんぺったんお餅つきだヨー。……途中でクトちゃんが貧血で倒れてるところが目に浮かぶけどネー》
……ああ、有り得るな。
簡単に想像できた。そしてその後に副校長がいつものように暴走し、水を使う仕事を一手に引き受けていた教頭が怒って副校長に水を叩きつけるのだろう。
《……アブホースならやりそうだナー………》
そうか。
夜になってからアザギとナイアと三人だけの餅パーティー。アザギは満足そうに砂糖醤油で餅を頬張っている。
「……食べるのは、久し振りだけどぉ……美味しいわねぇ……♪」
そうか。それはよかったな。
《ほんとに美味しいヨー》
知っている。私も食べた。
……流石に神が作っただけあって、かなりの味を誇っている。私は磯辺に砂糖醤油に塩、大根おろしにポン酢をかけた物と絡めたり、薄切りにしてチーズと一緒に焼いた物に市販のつゆの元をかけて食べたりと、色々なことをして食べた。
どれも中々にうまかったな。
《次は絡み餅がいいナー》
『……わたしはぁ、チーズが食べてみたいわねぇ……』
わかったわかった。少し待っていろ。すぐに作ってやるからな。
……そうだ。軽く霊気の炎で中から焼けばいい。そうすればすぐに作れるだろう。
さあ、作るとするか。
臼の中には蒸かした餅米がいっぱい入っている。
これに‘おいしくなぁれ’と思いを込めながらついていく。
ぐりぐりと餅米を潰して、それから一纏めにしていく。
私もお兄ちゃんも水に触ると一気に調子が悪くなるから、これは毎年アブホースさんにお願いしてやってもらうことにしている。
……でもねアブホースさん。私のお兄ちゃんは一途で鈍くて素直じゃないところがあるから、そんなに回りくどいといつまでも気づいてもらえませんよ?
……まあ、私が言えることじゃありませんけど。
……あーあ。ナイアさんは自分の事になるとすぐに鈍くなるんですよね。
……まあ、私はナイアさんがいい人を見つけられればそれでいいんですけど。でもヨグソトスさん、あなたは駄目です。
さて、お餅つきお餅つき………………はれ?
杵を持って振り上げると同時に、世界がグニャリと歪んだ。
……あーあ。こんなときにも貧血かぁ……。
…………きゅう。
貧血だと存在に刻み付けられているクトの餅つき。