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書き溜めが十五を越えたので投稿しておきます。
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フルカネルリだ。雪が降り、いつもの光景が窓の外に見える。
「あははっ!行くyプフッ!?」
「くぉんのガキがああぁぁぁぁっ!!」
「毎年毎年五月蝿いっ!いい加減に慣れなさいっ!」
……うむ。実にいつも通りだ。
《……ほんと、変わんないナー……》
今年は恒例の雪合戦大会ではなく、音楽コンクールのようなものがあるらしい。校長は
「こんなのをやると楽しい気がする!」
と言っていたので、またいつもの気まぐれだろう。
《神になるとネー……暇な時間が多いんだヨー》
そうか。
私達のクラスではのんびりと歌いたいという者が多かったので、全員がゆっくりとした声で歌う曲を幾つか白兎がチョイスしてきた。
……そう言えば、伴奏は音楽教師の杉村がやると聞いたが、他の楽器はどうするのだろうか?
……やはり、私達の誰かがやるのか?
結局私がやることになった。
一応誰が一番上手く弾けるかを確かめてからの投票式だったのだか、バイオリンを弾くのは初めてだったので軽く練習しながらやったのが悪かったのか、何故か私が選ばれた。
白兎が言うには
「えっとね……なんか、瑠璃の方が……こう、のびのび弾いてて、楽しそうだったんだよね」
と、言うことらしい。
……やれやれ。
『……うふふ……期待してるわよぉ……?』
ああ、勝手にしろ。
《じゃあボクも期待すルー!》
……好きにしてくれ。
さっさと終わらせてすぐに帰る。そのために練習はちゃんとやった。おかげでそれなりの腕には成ったと思われる。
……外見の年齢から考えれば、の話だが。
《十分じゃないかナー? と言うかもう一介のバイオリニストとしてそっちの世界で生きてけるぐらいの腕は持ってるヨー》
……そうなのか?
《少なくともボクはそう思うヨー》
………ふむ、そうか……。
……まあ、私は私らしく生きて行くつもりだが、一応の選択肢には入れておくとしようか。
私は思う。
……瑠璃って万能だなぁ……と。
校長先生のいつものノリでいきなり音楽祭が開かれることになって、私達は結構困っていた。
私が持ってきたみんなで歌える歌は好評だったけど、どうしてもそれがいいっていう雰囲気になってから問題が出てきた。
この曲は、最低でもピアノとバイオリンの二つの楽器が必要で、先生がピアノをやってくれるにしても一人足りない。
仕方無く私達の中で上手い人にやってもらうことになったんだけど、あんまり上手い人が居ない。
……九条さんはいつもバイオリンのお稽古をしてるって言ってたから期待したのに………。お稽古してても上手くなかった。それとも本当は最初からお稽古なんてしてなかったのかな?
……まあいいや。
私もやってみたけど、やっぱり初めてじゃあ上手くいかないや。
それで私はそのバイオリンと弓を瑠璃に渡してみる。
「……私もやるのか?」
「うん。みんなやるの」
瑠璃は渋々といった感じで私から楽器を受け取り、どこかぎこちなく構えた。
ぼそりと
「……たしか、こう、だったか……?」
と呟いてから、腕を動かし始める。
……すっごい。普通にきれいな音が出てる。
九条さんはかなり音を外していたけど、瑠璃はあんまり外れない。
……ほんとは、最初は結構酷かったけど、弾いてるうちにどんどん上手くなっていった感じだ。一度きれいな音になってからは、まるで決められたレールの上を走っているかのようにずっときれいなままだったし、音の変え方も少しの練習で学んでいた。
……瑠璃って、ほんとに万能だなぁ…………。
瑠璃にそう言ってみたら、
「私は万能ではなく、学ぶ意欲が人より多いだけだ」
って言われた。
……嘘だっ!って言っちゃいそうになった。危ない危ない。
音楽祭の裏の苦労人、春原白兎によるフルカネルリ観察日記。ただし脳内メモによる。