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フルカネルリだ。今年の文化祭はおばけ屋敷だそうだ。私は作る側に回って、驚かすのは他人に任せよう。

《………気のせいか……なんかすっごくいきいきしてないかナー?》

しているが?

《あ、やっぱりしてるんダー?》

『……うふふ……わたしも、頑張るわよぉ………?』

協力感謝だ、アザギ。


まず始めにやるのはどのようなものを作るか。例えば昔ながらの妖怪変化の類いを出すのか、西洋の怪物を作るのか、はたまた中華系の変化か今時の都市伝説の物か……それだけでずいぶんと変わってくる。

今回は和風のものでやるようだが、所々難しいものがあるだろう。

………そういった難しい物は大好物だが。

その後には教室の大きさを調べ、図に書き出して細かく場所を決める。

どこに壁を作り、どの場所にどんなアトラクションを置くのか。その他にもどんな色にするか、音楽を流すか、流さないか。どのような怖いものが怖いものがあるか、それはこの教室に作ることができるかなど、様々な事を話し合い、意見を言い合う。

………最近の小学生の考えることはエグいな。そしてグロいな。グロい方は却下したが。


文化祭当日。私の教室からはそれなりに悲鳴が響いた。

……はぁ。実に楽しかった。

《趣味悪いヨー》

そうかもしれんな。

ちなみに最後の客は校長と副校長、そして教頭の三人だった。

《……あレー? クトちゃんこういうの苦手だったような気がするんだけどナー?》

やはりか。よかった。

《? どういうことかナー?》

……ふむ、つまり……片付けの手間が省けたということだ。


きゃああぁぁあぁぁぁっ!!


てめぇよくもクトをげぶらぁっ!?


生徒の作ったものを壊すんじゃないわよこの単細胞!


《……あー、なるほどネー》

わかったようだな。

……アザギ。巻き込まれないように帰ってこいよ?

『……大丈夫よぉ……』

そうか。


結局校長達が去ったあとはボロボロの教室が残るだけだった。使っていた段ボールやガムテープなどは跡形もない。

《……うーん。これは灰すら残さないようにクトゥグアが焼き尽くしたネー》

ほう。正解はどうだ?

『……ふふふ……大正解よぉ……みーんな、燃えちゃったわぁ……♪』

そうか。

……机もか?

『……そうみたいねぇ……?』

……そうか。金属部すら焼き尽くしたか。

…………恐ろしいな。

《クトゥグアは炎の神性だからネー。このぐらいはかるーくできちゃうヨー》

……そのようだな。

……しかも焼くものの指定までできるのか、天井にも壁にも床にも焦げどころか煤すら付いていない。

……いつか研究させてもらえないものか……………。

《ダメだヨー? 絶対ダメだからネー?》

…………そうか。

《……あ、解剖は絶対ダメだけど見て調べるのはやってもいいんじゃないかナー?》

そうか!

《元気になっター!?》






こ、こえぇぇぇっ!なんだよこりゃあっ!?

入ってすぐに後ろでドアがいきなり大きな音を立てて閉まるわ小さくライトアップされた所に座ってた人形がゲタゲタ笑いながら手足をカタカタいわせ、それに合わせて周りでも中途半端に肉の残った骸骨やら血濡れっぽく赤い絵の具の塗られたマネキンやらがガタガタ言い出すわポルターガイストが起こるわなんか妙に鉄臭くて少し気分が悪くなってくるわその状態で滅茶苦茶リアルな惨殺死体見せられるわで、さんざんな目に遭った。

……二度と小学生のガキんちょの作ったおばけ屋敷には入らねえと心に誓った。

………だけどよぉ。ここはちぃっと寒すぎだろ?

……お、出口か。

「……また、いらしてくださいねぇ……♪」

いきなり横から聞こえてきたその声の方に振り向くと、扉のそばの薄暗いところに、二十歳を少し越えたぐらいの女が立っていた。

……このクラスの担任か?

………まあ、相手が誰だろうが俺の答えは決まっている。

「まっぴらごめんだね」

そう言って俺は目の前の扉を開けて、廊下に出ていった。


……後になって知ったが、あのクラスの担任はあまり喋らない男らしい。

………なら、俺が会ったあいつは誰だ?



  お化け屋敷に入った一般客の話。



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