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フルカネルリだ。体育祭が嫌いになりそうだ。
《いきなりなにを言ってるのサー!?》
……ふむ、流石にいきなりではなにを言っているのか伝わらないか。
ならば一言で表すとしよう。
チアリーダー。
以上だ。
……ここまで読んできた者ならば理解してくれると思っている。ちなみにわからなければわからないで一向にかまわない。どうせ私がやることに変わりはないのだから。
《……シリアスっぽく言ったところで、結局スカート履きたくないっていうだけの話なんだけどネー》
それのどこが悪い? 私にとっては死活問題だ。主に精神面で。
『……そうねぇ……』
なんとかやらないで済むようになった。心の底からよかったと思ったのは久し振りだな。
《オメデトー》
ああ、ありがとう。
……それにしても、誰だあのようなことを考えた馬鹿は。
《あいつだけドー?》
ナイア頑丈さだけ示したのは明らかに悔しそうな顔をしているクラスメイトの中村。よし、少しばかり仕返しでもするか。
《……なにするつもリー?》
大したことではない。ただ気付かれないように霊気で圧迫して寒気を起こさせてやるだけだ。
……それだけで貧血を起こす程度に。
《予想以上に過激ダー!?》
『……そぅ……? ……瑠璃なら、これくらいやっても……おかしくないわよぉ……』
そうだな。全くおかしくなどない。さあ、始めようか。
二時間後、中村は真っ青な顔で早退した。
……ハ。
《鼻で笑い飛ばしター!?》
仕方ないだろう。私の中でアレは既に敵だ。これからは前世で積極的に私の邪魔をしてきた者と同じ扱いをすることは決定事項だ。
《……実験体扱いするには色々面倒だと思うヨー?》
そうだな。だが私の邪魔をしてきた者の末路はそれだけではないだろう?
『……あらあらぁ……怖いわねぇ……あははははっ………♪』
《……まあ、別にいいけどネー。気を付けるんだヨー?》
わかっているさ。警察は色々と面倒だからな。
……上手くやるさ。
その日から、中村はずっと休んでいる。何があったかは誰も知らない。
……私? 勿論私も‘なにも知らない’さ。
風邪でも引いたか? それとも重い病気か? もしかしたら事故にでもあったのかもしれないな?
……くくくくく………。
『……悪そうな顔ねぇ……』
嫌いか?
私がそう聞くと、アザギは久々に見る虚ろな笑みを浮かべながら、
『……いいぇ……大好きよぉ……?』
と、呟きを返した。
それから十日ほど過ぎて、中村が転校するという情報が担任から入った。
どうやら日本では治すのが難しい病気に罹患したらしく、海外に行くことになったらしい。
「へぇ……だってさ、瑠璃。…………瑠璃?」
白兎に話しかけられ、私は本から目を上げずに答えた。
「そうらしいな。病気をうつしていかなかったのがせめてもの救いだな」
《……白々しいネー》
……何の話やら?
瑠璃にお願いされて、久し振りに生きた人を呪った。
不幸になるように、しかし殺さないように、慎重に呪いをかけた。
それを見て瑠璃は、呪いについて少し興味を持ったみたいで、いつもの調子でわたしが呪いを調整するところを見つめていた。
「アザギ。呪いに方向性を与えるのは可能か?」
具体的には、金銭にのみ影響するものや身体的な健康にのみ影響するもの、そして本人ではなく周りの者に害を与えるものなど……と、ここまで言ったところでわたしが瑠璃の口を塞いだ。
『……また、今度に……教えてあげるわぁ………』
瑠璃は少しだけ不満そうだったが、すぐに了承して手元の銃弾のような何かを弄る作業に戻っていった。
……確かにわたしから習うのならば、それはその銃弾に組み込むことができるはずだ。
……人間に、と言うか生き物に撃つときは……気を付けましょうねぇ……?
……別に、瑠璃以外がどうなろうと……構わないけどねぇ………?
久し振りに悪霊らしいことをやった日のアザギの話。