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フルカネルリだ。毎朝柔軟と太極拳の套路を繰り返すようになってから一月、中々に体の調子が良い。

《精神的な問題だけどネー》

そうだな。

『……はぁ……朝日は、いいわねぇ……とけちゃいそぅ……』

まだ逝くな。お前には聞きたいことが山ほどあるんだ。

『……あらあらぁ……死ねなくなっちゃったわぁ……♪』

《いやキミもうとっくに死んでるからネー?》

その通りだな。


ガスガンを触ってからというもの、銃と霊・妖力を組み合わせて炎の弾丸や水の弾丸を発射できないかと考えているのだが、この国では銃を手に入れるのは難しいという問題のせいで実験が全くできずに止まってしまっている。

…………仕方がない。作るか。

《フルカネルリがすごい結論出しター!?》

頭の中でナイアが騒いでいる。

《できるノー!?》

構造さえわかってしまえば簡単だ。ただでさえガスガンという劣化コピーを見て、触れ、解析までしたのだから。

ただし材料はアルミ缶だ。スチール缶が在ればそちらを使うのだが、残念ながら量がない。

《……平気なノー?》

実際に撃つのは反動のほぼ無い炎や風だ。それで平気ならば次へと進もう。

さあ、今日から徹夜だ。


パソコンで形を調べ、部品全てを見て、正確に真似て組み立てるまで三週間かかってしまった。最近では白兎に心配されるような顔をしていたらしいが、鏡など見てはいないためどのような顔かわからない。

《ひどい顔してるヨー》

『……寝なさいなぁ……』

後でな。

始めに霊力の糸で作った加熱術式が編み込んである布の上に削ったアルミの粉末を乗せ、私の霊力という燃料をくべて温度を上げてアルミを溶かす。

この時ナイアが

《いつの間にそんな術式使えるようになったノー!?》

と聞いてきたが、実はあの雪娘の服の術式を分解して組み替えたら出来ただけだ。おかげで術式の効率やら術式そのものの強度やらといった重要な物が見えてきた。

……話が逸れたな。

その後、溶けたアルミを大雑把な型に入れて冷却。余った分はもう一度溶かして別の部品に転用する。

ここまでは大して時間もかからないが、ここからが大変な所だ。

大雑把な形を整えるために鑢でガリガリと削る。ネジの一本一本全て私の自作の銃が、ようやく形を見せ始めた。

《ここまでで二週間だヨー。フルカネルリの執念って怖いネー》

『……倒れないようにぃ、体を、冷やしてあげてた……あなたが言えることじゃぁ……無いわよぉ……?』

《……そうだけどサー………》

こうしてできあがった部品を一つ一つ組み合わせて出来たのが、この銃だ。

《おめでトー!》

頭の中でナイアがクラッカーを連続して鳴らしたような音がする。

『……うふふ……おめでとうねぇ……♪』

ぱーん、とアザギも小さなクラッカーを鳴らした。少しばかり紙吹雪が鬱陶しいが、ナイア製のクラッカーは掃除をしなくても忘れた頃に勝手に消えてくれるから楽で良い。

……明日は組んでおいた弾丸用の術式で試し撃ちと行くかな。

…………ああ、もうそろそろ限界だ。……子供の体は……やはり、不便……だ……な…………






フルカネルリが椅子に座ったまま眠っている上で、わたしはいつも通りに浮いていた。

《……まだ夜は冷えるヨー》

『……そう、ねぇ……』

ふわりと毛布を浮かせて瑠璃の肩にかける。すると瑠璃はもぞりと動き、その小さな手で毛布をぎゅっと掴んだ。

……可愛らしいわねぇ……♪

《……寝てる時くらいしか言えないけどネー》

『……そうなのよねぇ……』

いつもの瑠璃にそんな事を言おうものなら、物凄い笑みを浮かべた瑠璃が何かしらの方法でわたし達にお仕置きしてくることは間違いない。

……特に最近は霊気や妖気の研究が進んできているようだし、もしかしたら例の銃の的にされる可能性もある。

『……怖いわねぇ……♪』

《……それにしちゃ楽しそうだネー?》

ナイアの言葉には答えずに、点きっぱなしの電気のスイッチを見やる。

『……いい夢を、見なさいねぇ……おやすみぃ……♪』

パチン、と電気が消え、辺りが闇に覆われる。

わたしは瑠璃をじっと見つめながら、のんびりと朝が来るのを待つ。

また瑠璃に一番におはようを言って欲しいから。



  亡霊は眠らない



《……ボクもちょっと寝ようかナー》


  でも神は眠る。



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