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フルカネルリだ。三年生になったは良いが、特に変わったことも無く過ごしている。平和とは素晴らしいものだな。
《そうだネー》
この学校では三年から部活動が許される。つまり、私もそういった部に入ってみることができるのだ。
……とりあえず、一度全ての部を見てみるべきだろうな。
《あレー? たしか白兎ちゃんにどこかに誘われてなかったっケー?》
ああ、一応女子バスケ部に誘われているが、全て見てからでも遅くはあるまい?
『……そうねぇ……瑠璃が、思ったように……動けばいいわぁ……ふふふ……♪』
ありがとうな、アザギ。
ならば行こう。まずは体育会系からだ。
想像以上に部の数が多い。体育会系だけで五十近い数が存在している。文化系まで含めると、驚いたことに百三十にもなる。
……まあ、これには研究会や愛好会・同好会等も入っているが、それでも多すぎる。
まともにやって全て見て回るには少しばかり時間が足りない。
………ナイア。
《ハイハイ、封印ちょびっと解除っトー♪》
感謝する。
……よし。行くか。
この日、私は活動していた全ての部活に顔を出した。
目を使ってしっかりと見て、すぐに別の部へ移動するということを繰り返していたが、いくつかの部では体験として少しだけ道具に触らせてもらうなどということもやった。
……ガスガンなどは初めて触ったが、それなりに扱えるようだ。
《これもちょっとした才能に入るヨー》
銃を使う才能か?
《そうサー。でもフルカネルリって基本的に多才だからこういうことにも元々才能はあったんだよネー》
そうなのか?
《そうだヨー。ちなみに元々才能があった所には『全ての微才』は効かないからネー。すっごい才能がほんのちょっとになってるとかそんなことは無いから安心してネー》
そうかそうか。ならばそれなりに安心だ。
……これからはもう少し体を動かしてみようか。丁度武術研究会という所で太極拳や合気柔術といった非力だったり小さかったりする者が、体の大きく強い者を倒すために作られた武術の古い教本が目についたので解析をかけながら読んで覚えた所だし、毎朝太極拳の套路でもやってみようか。
《健康に良さそうだネー》
元々健康の呪いがかかっているがな。
《そういやそうだっター!》
まったくナイアは……。
………待てよ?‘呪い’だと?
この世界に呪詛は無い、しかし私が行く世界に呪詛はあるのか?
あるのならばもしや私の呪いも解かれてしまうことは……。
《無い無い。前にも言ったけどボクはアフターサービスまで万全な邪神だヨー? ちゃんとボクのかけた呪いを解けそうな奴には話をつけてあるからネー》
顔が広いな。
《小顔って評判なんだけどナー》
……そう言えば前に見たお前は小顔だったな。
《……泣いちゃうヨー?》
『……あらまぁ……かわいそうねぇ……あははっ……♪』
今日の瑠璃はすごかった。
色んな所を回っていたみたいだけど、最後にはちゃんとバスケ部に来てくれた。
……でもね瑠璃。何でその身長でダンクなんてできたの? すっごい跳んでたよね?
シュートだって一回目に外した後は一度も落とさなかったし、打ってるうちにだんだん遠い所から打つようになってるのに……しかも最後はハーフコートとはいえ向こうのゴール下から打って入るって………。
……瑠璃って、なんかやってたりしたのかな?
先輩たちはすごい目をきらきら(ギラギラかな?)させながら瑠璃を勧誘してた。でも瑠璃はあんまりやる気にはなってないみたい。
……ちょっと残念。
結局瑠璃はどの部にも入らなかったみたい。聞いたらちゃんと答えてくれた。
でも先輩たちはまだ瑠璃のことを諦めてないみたい。
……やめて欲しいって言ってるんだから素直に諦めた方がいいのに。
そうこうしてるうちに瑠璃はするりと逃げていた。かなり早く走ってるけど……瑠璃、前に計った時は手を抜いてたのかな?
でも、そんなに早く走ってると陸上部の人が勧誘に加わっちゃうよ?
女子バスケ部、未来の部長の小さな呟き