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フルカネルリだ。話に聞いていた雪娘が何故か菓子折り持って家に現れた。しかもアザギを見て土下座している。何があったのだろうか?
《色々あったんじゃないノー?》
そうだろうな。
話を聞いてみれば簡単だった。つまり、勘違いだった、と言うことだ。
……なぜそのような勘違いをしたのか理解はできないが、勘違いとはそう言うものなのだろう。
……ところでナイア。この雪娘だが、妙な感覚がする。心当たりは無いか?
《……って言うかネー、この世界にはこういうオカルト系の奴はいないはずなんだけどナー?》
……居るぞ?
《うん。だからおかしいんだよネー。……アザギみたいに世界を渡ってきたのかナー? でもそれにしては弱っちいんだよナー?》
……神以外にも世界を渡ることのできる存在がいるのか?
《それができる時点で神扱いされてもおかしくないけどネー》
……ということは、アザギは神なのか?
《基本と言うか大元は人間霊だけど、力だけならネー。でも神様として信仰はされてないから違うと思うヨー?》
そうか。
……ならば目の前で土下座中のこの雪娘は?
《さあ? 少なくとも一端の妖怪なのは確かだけどネー》
………ほう?
《……ねえフルカネルリ。もしかして、研究したいとか思ってないかナー?》
思っているが?
《やっぱり思ってター!?》
『……あらあらぁ……やめてあげてねぇ……?』
お前がそう言うなら我慢しよう。
……だが、この雪娘はどうする? 今は冬だからまだいいが、夏になれば溶けてしまわないか?
『……そっちは、平気よぉ……? ……すぐにあの山に、帰らせるからねぇ……あははっ……♪』
何が楽しいのかは知らないが、私はなにもしなくていいと言う事だな?
『……まぁ、そうねぇ……』
そうか。
……ああ、私の作った服はどうする? 私が貰っても良いのか?
『……貴女はぁ……どうするぅ……? ……ふふふ……貰っても、良いわよぉ……♪』
アザギがまだ土下座中の雪娘に問いかける。すると雪娘は頭を下げたままその服を受け取ると答えた。
……まあ、あのぐらいならば次からはもっと早く作れるだろうし、それに元々渡すつもりだったために痛くもなんともない。
結局、あの雪娘は服を持って帰っていった。最後までアザギに向かってペコペコと頭を下げていた。
《神様も妖怪も、結局最後に物を言うのは実力だからネー》
そんなものか。
《そうサー。ね、アザギ》
『……まぁ、大体はその通りよぉ……うふふふふ……♪』
そうか。
……この世界を覗き込む。
今起きていることを通り抜け、これから起きることをすり抜けて、昔に起きたことに注目する。
焦点は、さっきまでここにいたあの雪娘。あの子がもっと小さかった頃を覗く。
……いた。
もっと小さいあの子が、母らしき雪女と手を繋いでいる。そしてその雪女は、見えないはずのボクを見て……薄く笑って視線を外した。
……おっどろきだネー。まさか神として生まれたボクたち以外に、時間を越えて見られてる事に気付ける奴がいたなんてサー。
……まあ、居たっておかしかないけドー……かなり少ないネー。
そしてよくわかった。たしかにこの雪女だったら世界の壁も、時間も、うまくやれば飛び越えることができるはずサー。
……めっちゃ難しいと思うけどネー。人間で言うと‘五千万ピースのパズルを3日で完成させる’ぐらいかナー。
……え? 無理だって?
うん、そのぐらいの確率だヨー。失敗したらその場ですぐさま死ぬか、死ぬまで世界から外れた所で漂うか、運が良ければどこかの世界に流れ着くかだからネー。
……まあ、ボクにとっては何でもいいけどサー。
でも、フルカネルリに手を出されたら………………怒るヨー?
怒ると怖いと邪神達にもっぱらの噂のナイアが怒りかけたという話