2-25
フルカネルリだ。十二月になるとやはり寒いな。雪まで降ってきた。
……そして校長はまた雪合戦で雪玉を顔に直撃されている。
「ンのガキがぁあぁぁああぁぁぁっ!!」
「何度も何度も辞めなさいっての!」
その後のこれももう何度も見て普通の事になってしまった。
《あいつらは変わんないネー。当然だけどサー》
神なのだろう? ならばそうそう変わるわけにはいかないさ。
《……ボク、フルカネルリにあいつらが神だって言ったっケー?》
言っていない。だが、わかりやすすぎる。……隠す気も無かったのだろう?
《……まあネー》
なら良いじゃないか。知ったところでなにも変わらない。なぁ?
『……ふふ……そうねぇ……♪』
《………そっか。ありがとネー》
礼を言われる意味はわからないが、どういたしまして。
今年はスキーに行ってみようと思う。そう両親に伝えたところ、寂しそうな笑顔で許可してくれた。
《実際寂しいんでショー》
そうだろうな。解析しながら見ている私が言うのだから恐らく間違いないだろう。
《解析してるノー?》
ああ、している。と言うか今までほとんど欠かしたことは無いぞ? 白兎達と遊んだりしているとき以外は。
『……じゃんけんでそれはぁ、狡いものねぇ……?』
そうだな。流石の私もそこまで大人気ないことはやらない。
《クトゥグアじゃあるまいしネー》
……副校長はやるのか。
《クトちゃんのためならボクに土下座をして頭を地面にめり込ませる事ができるクトゥグアなら、それぐらいはやると思うヨー》
そうか。シスコンだな。
《まごうことなきシスコンだヨー》
『……シスコン、ねぇ……あはははっ……♪』
アザギは何故かとても楽しそうだ。
……まあ、今はスキーの準備が大切だな。
スキー合宿は二泊三日。初日の午後に少しと二日目全て、そして三日目の始めに少しだけ滑ることが出来るらしい。
……さて、どこまでできることやら。
『……瑠璃、少し、離れるわねぇ……?』
ん? ああ、構わないぞ。だが私達が帰るまでには戻ってこい。いいな?
『……はぁい……♪』
アザギは楽しそうに笑って、すぐ近くに見える白銀の山に向かって消えていった。
……たまに人を通り抜けているのはご愛嬌、というやつだろうか?
《違うと思うヨー》
そうか。
……たしか、この辺りよねぇ……?
山の奥深くにアザギは居た。辺りをくるりと見渡して、なにかを探している。
……うふふ……み~つけたぁ……♪
アザギは嬉しそうに笑いながらその場所をみる。
しかし、そこには雪しか見ることはできない。
『……出てきたらどうかしらぁ……お嬢ちゃん……?』
ずるり、とその場所から何かが現れる。
『……あははは……♪ やっぱり居たわぁ……♪』
現れたそれは、真っ白な和服を着た白い少女だった。少女は自分を見つけたアザギを剣呑な視線で睨み付けている。
『なんだ貴様は』
少女の言葉にアザギは笑うのを止め、いつも通りの緩やかな微笑み――ではなく、ニタリと真っ黒な笑みを浮かべた。
『……初めましてよねぇ、この山の雪娘さん……わたしは、見ての通り、ただの亡霊よぉ……?』
『……ふん。その‘ただの亡霊’が、こんなところまで何しに来た?』
雪娘の睨み付ける視線は変わらず、淡々とアザギに問いかけている。
そんな少女にアザギは軽口のように言う。
『……いま、この山にわたしの大事な子が来てるのよぉ…………手を出したらぁ……消すわよ?』
アザギの周囲の植物が、アザギの迫力に負けてその命を止める。
ざらざらとした冷気が山を揺らす。
『くっ……貴様……本当に人間霊か!?』
少女はその迫力に押され、一歩、下がる。
その途端にアザギからの力の放出が止まる。……それでも、暫くはこの山に他所の獣が近寄ることは無いだろうが。
『……じゃぁ、よろしくねぇ……? ……あはははははは……♪』
そう言ってアザギはゆらりと消える。今ごろはフルカネルリの元へと移動しているだろう。
ついさきほどまでアザギがいたその場では、白い少女が悔しそうに唇を噛んでいた。
目的のためには手段を選ばないアザギの暗躍
因みに雪娘さんは前にクトに負けていて学校の生徒に手を出すことはできない。
そんな受難な雪娘さんに出番はもう無い(多分)。