2-23
フルカネルリだ。文化祭では簡単な工作物を作って発表することになった。白兎に
「どの程度本気でやっていいんだ?」
と聞いたら
「全力で!」
という答えが帰ってきた。
……お望み通り、全力でやってやろうではないか。
《自重って知ってルー?》
知っているとも。投げ捨てるものだろう?
《違うからネー!?》
そうなのか?
《そうだヨー!?》
そうか。
作るものはちょっとした小物。他のクラスメイトが作った物の中に混ぜておけば気付かれずにスルーされてしまうだろうと言うほどの物。別に目立つことはないが作るからには全力で作ろう。
《頑張ってネー》
ああ。
……さて、ここはこうして………
「何作ってるの?」「む? 白兎か。これはちょっとしたペンダントだ。文化祭が終わったらお前にやろう」
「ほんとに!?」
「ああ」
ちなみに私が今私が作っているペンダントは貝殻を削っただけの簡単なものだ。
《削るのが簡単じゃないヨー!?》
私の手先の器用さを舐めるな。このぐらい軽くやって見せるさ。
……ほら出来た。
《早すぎでショー!?》
そんなことはない。少し前ならばもっと早かった。
《力の封印前だったからネー!》
ああ。だが実際に前の方が早かっただろう?
《……そうだネー》
だろう?
「どんなの作って……すごっ!?」
白兎が私の手元のペンダントを見て驚いている。
別に大したものを作ったわけではない。貝に彫っだものは女の横顔。私の中にしかいない、私の妻の横顔だ。
……下らない未練だな。全くもって下らない。
………捨てる気は全く無いが。
これは私がフルカネルリ/私で在る限り、持ち続けなければならない物だ。持てなくなるときは私が死んだときだろう。
《死んでも平気かもヨー?》
そうだな。ナイアにとって死とはちょっとした睡眠か休憩のようなものだろうし、起こすのも簡単だろう。
私にはあまり理解できないが。
《人間には難しいと思うけどネー》
そうか。
手の中のペンダントの女に思いを馳せていると、急にそれが白兎に重なった。
…………まさかな。
《あ、安心するかどうかは知らないけドー、それは無いヨー》
……そうだよな。
《……わざわざ読心術まで使ったのにツッコミは無いんだネー》
『……空気の読めない子はぁ……果てればいいと思うわぁ……?』
《怖いってバー!》
後ろの方でナイアとアザギがなにやら喋っているが、私はそれを意図して無視しながら作業を続けた。
上の部分に貝殻が割れないように穴を開け、そこに銀色の糸を通す。……これでいいだろう。
最後に全体に保護のためにニスを塗ればそれで完成だ。
「クオリティ高過ぎでしょ!?」
「そうだな」
……ちょっと前に、私は瑠璃が私に近くなったと言った。それはまだ変わっていない。
……でもね瑠璃。小学生でそんなものを簡単に作っちゃうって言うのはもうすごいっていうのを通り越してむしろ呆れるよ?
しかも今二つ目を作ってる最中だし、それもかなりクオリティ高いし。
……せっかく近くなったのにあっという間に離れてったね。まだ近いけど。
「二つ目が出来たぞ」
「早ぁっ!?」
…………瑠璃。いくらなんでも早すぎると思うんだ。いくつ作るつもり?
「一ダース、つまり十二個だ」
「多くない!? と言うか普通に多いよね!?」
十二個って………。
……………あれ? 私今声に出したっけ?
ちらりと瑠璃を見てみると、瑠璃と目が合った。
「声には出していなかったぞ」
「じゃあ何でわかったの!? 心が読めたりするの!? 読心術!?」
「いや、おそらくこう考えているだろうと予測してな」
……そんなこと、できるものなのかな?
「実際できているだろう?」
確かに……あれ、また読まれた?
「だから読んではいない」
……ふーん。
………………。
瑠璃にドレスとか着せたら似合うんだろうな。
「絶対に着んぞ」
絶対に読んでるー!!?
近寄ったり離れたりと忙しい白兎の文化祭準備期間のある時