2-22
フルカネルリだ。何故か今年から運動会の名前が体育祭に変わった。なぜこうなったか理由を誰か知らないか?
《 》
ああ、理解した。
《まだ何も言ってないんだけドー!?》
‘昨日久し振りに話をして、運動会について話しているときに何故か行きなり改名すると校長が言い出して本当にやった’……なにか違うところは?
《うぐ………さ、最後は‘やったんだヨー’だけドー……》
つまり内容は当たっているわけだな?
《……うん》
そうか。
『……読心術かしらぁ……?……わたしは独身術を使い続けて千年よぉ……?』
《つまりいきおく》
………ナイア? いきなり黙ってどうしたんだ?
それとお前が黙った瞬間から鳴り続けているこの肉を金槌で叩いて柔らかくしているような音は一体なんだ?
……徐々に水音が混ざってきているが…………。
『……気にしちゃぁ、ダメよぉ……?』
そうなのか?
……だが、気になるな。
体育祭だ。周りのクラスメイトの応援の声が五月蝿い。
《……ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…………》
あとナイアも五月蝿い。
《少しぐらい心配してくれてもいいじゃないカー!》
心配? ナイアを?
……ハ。
《鼻で笑われター!?》
それは笑うだろう。ナイアがこの程度で致命的な事になるはずがないからな。同じ神同士の戦闘だったらともかく、アザギは千年存在してるとはいえ只の人間霊だぞ?
《千年自我を保っていられるってだけで只の人間じゃないって気付いてヨー!》
思考加速と同時思考の分も入れれば私も二百年程度は生きているが?
《……そう言えばそうだったネー》
ああ。
『……生きてる人間が、よくもまぁ……すごいわねぇ……♪』
《キミが言えることじゃないからネー?》
そうだな。
「瑠璃? どうしたの?」
「ん? いや、私に取り憑いている亡霊が非常識だと思っていただけだ」
「まだ幽霊居たの!?」
白兎は何をいっているのだ?
「幽霊ではなく亡霊だ。間違えると怒られるぞ?」
「何に!?」
「亡霊に。こいつは気合いで呪いすらかけるぞ?」
「怖っ!?」
怒らせなければ気のいい奴だ。年の事に触れても平気だしな。
ただ、行き遅れという言葉に敏感だと先ほどわかったがな。
《ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……》
ナイア、静かにしてくれ。もうアザギも怒っていないのだから平気だろう。
《……ほ、本当二ー?》
恐らくは。
……どうだ?
『……うふふふ……次は無いわよぉ……?』
「っ!? な、何かいきなり凄く寒くなった!」
白兎にはきつかったか。
アザギ。抑えろ。
『……ふふふ……瑠璃は、優しいわねぇ……♪』
そうか? 自覚はないんだが。
やったー!優勝できたー!
なんかよくわからないけど、うちの学校って妙に個人技が勝敗を分けるような種目が多いよね。別に良いんだけど。
……でも、いつまでも瑠璃にばっかり頼るわけにはいかないよね。
なんでかは知らないけど、瑠璃はある日からとっても……なんだろ………薄く……? なった。
その日までは、瑠璃を探すことなんてなかった。そんなことをしないでも勝手に意識の中に入ってきていたから。
その日までは、瑠璃は凄いわかりやすい雰囲気を持っていた。瑠璃以外にあんなに強く私を引き付ける人なんていなかったから。
その日までは、私にとって瑠璃は遥かに高いところに咲いている、とっても綺麗な花みたいだった。
でも今は、近くにある触ろうと思えば触ることができる綺麗な石のような、そんな感じ。
どこにでもあるようでなかなかない、普通な物。多分、簡単に言うとこれでほんとに瑠璃と友達になれたんだと、そう思う。
……今まで私は瑠璃の事を神様みたいだと思ってた。だから多分私は瑠璃と友達ではなくって、知り合いだったんだと思う。
……これからもっと、瑠璃と仲良くなれるといいな。
そう思ってる。
少しだけ大人に成り始めた白兎の思い