2-21
フルカネルリだ。今年はさっさと白兎と宿題を終わらせて遊ぶということになっているらしいので、白兎を私の家に呼んですぐさま宿題を終わらせた。何故か白兎だけでなく白兎の友人まで来ていたがな。
《ちゃっかりしてるネー》
そうだな。将来大物になりそうだ。
遊ぶといってもたいした遊びではない。誰か一人がその日に遊ぶことを決めて、他の者はそれに合わせて遊ぶ。これがまたかなり決まりが緩く、いつの間にか全く違う遊びになっていることも多々。
白兎は
「王様ゲーム式だよー!」
と言っていたが、王様ゲームとはなんのことだ?
《誰だ子供にそんなもの教えたノー!?》
さあな。私に聞かないでくれ。
まあ、これの良いところはあまり不正がない事だな。
《……これで不正してなんかあるノー?》
遊ぶときに意見が最優先される。ただし他の全員が拒否した場合は選ぶところからやり直し。
《結構考えられてルー!?》
そうだな。
ちなみに私の時は室内ゲームが多い。
それはトランプだったりウノだったりオセロだったり将棋だったりチェスだったり他の物だったりしたが、恐らく楽しんでもらっている。
その場合、私は大抵ハンデを背負う。そうしないと圧倒的すぎてつまらないと白兎に言われたからだ。
具体的に言うと、ババ抜きで何故か一人だけ最初の持ち札が0になることが何回も続いたり(後でアザギがなにかやったと聞いた)、大貧民で何故か最弱の札が「1」だったことが何回も続いたり(これもアザギがなにかやったらしい)、ポーカーで何故かロイヤルストレートフラッシュが何度も来たり(これもだ)…………。
こうして私はその時その場に居た全員に「ラッキー仮面」という名をつけられた。
……私は仮面など前世でマスクの代わりにつけていた以外でつけていた事など無いのだがな。
《マスク代わりにつけてたノー!?》
ああ。本当に始めの方は金がなくてな。援助してくれるような者も居なかったので削れるところは全て限界寸前まで削ったぞ。修繕や製作もこの頃に始めた。
《……「必要は発明の母」って言うけど……本当だネー》
ああ、そうだな。
……だが、私は大してラッキーでは無いと思うのだが…………。
《……ふーん、そうなんダー?》
ああ。
……何を拗ねているのだ?
《……別に拗ねてないヨー》
嘘だな。
『……嘘ねぇ……』
《ち、違うヨー!嘘なんてついてないヨー!別に「ボクと出会ったことも不幸の中に入ってるのかナー?」って思って不機嫌になった訳じゃないヨー!!》
……ナイア。お前は嘘が上手いのか下手なのかわからんな。
『……隠し事は得意なのよねぇ………嘘は、すっごく……下手だけどぉ…………♪』
なるほどな。そういうことか。確かにその通りだな。
ナイアは隠し事は上手いが嘘をつくのは下手。ああ、実にわかりやすい。
《……その通りなんだけどサー………わかってることをもう一度言われるのは気分のいいものじゃ無いネー》
それはすまんな。
フルカネルリに色々言われて、苦笑しながら考え込む。
一応ボクは神なんだけドー、やっぱりこういう付き合いって相性があるよネー。
ボクの嘘は相手によって騙されやすさが変わる。疑り深い相手ほどよく騙されるのサー。
実際、ばれても全然痛くないところでバレバレな嘘をつくのを繰り返せば、大体の相手はボクが嘘は下手だと思ってくれる。そこで本当に隠したいことを嘘をつかずに隠せばばれることはあんまり無いんだヨー。
……アザギとフルカネルリはその辺りを理解して乗ってくれてるみたいだけどネー。
疑り深いやつにはここでほんの少しだけ別の隠し事の事を含ませるとそっちの方に気をとられて本当に隠したいことは隠し通せるって寸法だヨー。クトゥグアにもアブホースにもノーデンスにもバレなかったしネー。
………あ、でも何でかヨグソトスにはバレちゃったんだよネー。黒歴史。
………ちょっと頭痛くなってきたヨー。泣きそうサー。
……クトゥグア達には内緒にしてもらったけどネー。バレたら自殺しかねないシー。
ボクが。
ついでにクトゥグアが凄いことになりそうな気がするんダー。
例えバー、クトゥグアがそっちの道に目覚めるとカー、そっちには目覚めずにお付き合いをお願いしてきたりとカー、アブホースが虚ろな目でボクを殺しに来るとカー、アブホースがクトゥグアと心中しようとしちゃうとカー、クトちゃんがボクをお姉ちゃんって呼ぶようになっちゃうとカー、そんなのだヨー。
……どれもやだヨー。そっちの道に目覚めたクトゥグアに襲われるのもお付き合いしようとして来たクトゥグアに女の子モードでときめくのも本気で殺しにかかってくるアブホースから永遠に逃げ続けるのもアブホースとクトゥグアが心中しようとするとこを見るのもお姉ちゃんって呼ばれることに何の疑問も持たなくなっていつの間にかどう見ても女の子になってるのも全部やだヨー。願い下げじゃなくて請い願われても絶対やだヨー。
……………うつだしのう
この後クトとクトゥグアとアブホースとヨグソトスに自殺を無理矢理止められたナイアの狂乱の理由