2-20
どんどん進めていきますよー
……今日は不意打ち出来るかな?
フルカネルリだ。つい最近になって私の胸が膨れ始めた。ナイアがなにかやったな?
《健康の呪いの効果のひとつだヨー》
そうか。どの程度まで大きくなる?
《体のバランスを崩さない程度かナー》
具体的には?
《八十半ばってところかナー。腰の細さと相まっておっきく見えるはずだヨー》
……そうか。全く嬉しくないな。
《そこら辺は便利な能力と引き換えにしたって思っといてヨー》
………仕方がないか。
あまり大きくなりすぎると腕を振るうときに邪魔なのだがな。
白兎は何故かよく私の膝の上で昼食をとる。私が食べにくいのだが、まあ食べられないわけではないし許容している。
私と白兎の身長の差はあまりない。精々五センチほど私が高いだけだ。
この日も私と白兎は一緒に昼食。白兎は何故か私と一緒に昼食を取りたがる。他の友人もいるだろうに、なぜそこで私になるのか、少々理解に苦しむ。
《人生なんてそんなものサー。わかんないことだらけだヨー》
そうだな。
だが、私は科学者で、錬金術士で、知識欲の塊だ。そのような謎の中に居るからこそ私は生きて行ける。
《生命活動に謎が必要なノー!?》
活動するだけならば必要ない。しかし、活動するだけの私などフルカネルリ/私/古鐘瑠璃ではない。
私は謎を解き、知識に変え、それを飲み込むためにここに生まれ変わったのだから。
《……あー、フルカネルリらしいネー》
『……ほんとにねぇ……うふふふふふ…………♪』
その通りだ。私は‘フルカネルリ’だからな。
「はい瑠璃。あーん」
「……あむ」
……ふむ。美味いな。
《……締まんないナー》
『……そうねぇ………』
別に締める必要がない所なのだから、締めなくても構わないだろう?
《………まあ、そうなんだけどサー》
最近になってナイアがかけてくれたリミッターのお陰で楽しみが増えた。
どう楽しいかというと、今までと同じ速度で本を読むだけで鍛えられるからだ。
その分本を読むのが遅くなったが、今さら新しい本が一度に大量に入ってくることは無いだろうし、別に構わないだろう。
それと、何故か目が良くなった。正確には、なっている。
今この瞬間も私の目はよくなり続けていて、今では地平線に人を立たせて指を上にあげさせればその数を数えられるレベルだ。恐ろしいな。なぜこのように視力が上がる?
《ヒントをあげるヨー》
ほう、なんだ?
《赤ちゃん→幼児でどれだけ視力は変わるかナー?》
納得した。だから体の方もここまで強くなっているのに壊れないのか。
《そっちは有精卵→幼児だからすごいヨー。十ヶ月で数兆倍までいくからネー》
人外になるのもわかるな。そんなことになっているとは。
……実に恐ろしい。
《成長速度増加も忘れないでネー》
ああ。元から忘れてはいないさ。
……フルカネルリに言ってるときはまだなんとか抑えられてたんだけどサー………。怖いネー、人間ってサー。
ボクたち神も成長する。だけどそれは物凄く遅い。例えば生まれたときの倍の力を得るには大体数千年の時間が必要なことだってある。
でも人間はあっという間に育って、あっという間に強くなる。
それが神に届くことは殆ど無いけれど、それでも人間が集まって、力を合わせれば最下級の神になら勝てる事もある。
そんな人間の成長率を上げて、限界を無くして…………最後はどこまでいっちゃうんだろうネー?
フルカネルリはボクより強くなったらどうする?
戦う? 殺し合う? それとも何にも変わらないのかナー?
……最後のだったらいいナー。
……もしそうなったらちょっとだけボクの昔住んでいた家とかを見せてあげてもいいかナー。
そこで皆を呼んデー……お酒を飲んだり遊んだりして、酔って騒いで楽しんで………………
……あははハー。きっとボク疲れてるんだナー。こんな事を考えちゃうなんてサー。
期待はしない。言いもしない。伝えられることはたぶん永遠に無いそれを、そっと胸の中に納める。
だって、フルカネルリは多分人間を辞めたいとは思わないだろうシー。
………でも、もし本当にそうなってくれたラー……
……嬉しいナー。
夢見るナイア。