2-19
フルカネルリだ。そう言えば最近は私の体がどこまでできるのかを調べていない。調べるべきか?
《ちょうどいいことにもうすぐ身体測定と体力測定があるヨー。それで大体わかるんじゃないかナー?》
なんと。ならばその時に調べてみるとするか。
一言で表すと、予想以上。この一言に尽きる結果となった。
走る速度は速く、力は強く、持久力と瞬発力とを兼ね備えた私の体。これで今まで鍛えたことがないというのだから驚きだ。
《ほんと驚きだネー》
本当にな。
……まさかそこらの大人よりも良い結果が出るとは……少ししか思っていなかった。
《ちょっと思ってたんダー?》
少しだがな。
……まあ、悪いことではないし、良いとしようか。
とりあえず、この後にもう少しだけ体を鍛えておくとしよう。ナイアが言ったことが正しいならば、そこからはさらに早く身体能力が上がって行くことだろう。
いつか異なる世界に出かけるときに、少しでも役に立てば良い。立たなければ立たないで研究の日々だ。私に損はない。
《結構考えてるんだネー》
当然だろう?何があるのかわからない状態で私にできることは考えることと危険を排除するために必要なものを揃えることくらいな物だからな。身体能力は逃げるときには必要だろう。
故に私はまず体力を作る。徹夜にも道具作りにも研究にも、何をするにも体力は必要不可欠だ。
それに材料を取りに行ったり、畑などで薬になる草を育てたりするにも力が必要だし、行く世界によっては力がなければあっという間に殺されてしまうかもしれん。
そうならないように、私はできることは全てやっておかねばならない。
知識はかなりの量が集まった。次は死なないように、捕らえられて自由を奪われぬように、精神的にも肉体的にも強くならねばならないのだ。
《……そっか…………頑張ってネー》
ああ。
……と、言っても前世の私の20億倍で成長するために今でも人外と言って良い程度には強いのだがな。具体的には本気で投げたソフトボールが飛んでいる途中で焼き切れてしまう程度には。
《人外ダー!どう考えても人外ダー!?》
私もそう思うよ。
だが、私は私だ。人外だろうがなんだろうが私は‘フルカネルリ’であることに変わりはない。
《……ま、そうだネー。キミがそう思うんならそれで良いんじゃないかナー?》
そうか? まあ、ありがとう。
………だが、これはなんとかならないか? 目立ってしかたがない。
《………あー、じゃあ今度なんか考えておくヨー》
フルカネルリと約束したモノを作っている。
とりあえず身体能力の方にリミッターをかける。ただしこれはこっちの世界でも何かあったら簡単に外れるようになっている。
……うーん。今は大体八歳ぐらいの身体能力まで抑えておこうかナー。
……そしてここからがこのリミッターの凄い所なんだヨー!
なんと!抑えた分だけ成長が早くなるのサー!
具体的には、抑える前の能力をa、抑えた後の能力をbとすると、抑えた後に出せる力はb/a。そして上がる成長値はa/b。仮にbを4、aを20とすると、五倍も早くなるわけだネー。
凄いでショー!
ちなみにほんとはもっと成長値はおっきいヨー。既に人外なレベルから小学生レベルまで能力を落とすんだから当然だけどサー。
……え? 実際はどのくらい早くなるかって?
……うーん。一番小さいところで五十倍、一番大きなところで三千倍くらいとだけいっておこうかナー。
抑える割合がみんな違うからこんな風になるんだけどネー。
このまま何年も過ごしてから異世界に行くんだけどサー………向こうの人達逃げテー!超逃げテー!
「残念、興味を持ったフルカネルリからは何人たりとも逃げられはしない!」
……幻聴だナー。確実に幻聴だナー。実際そんな気がするしそうなってるとこが目に浮かぶけど幻覚だよネー。
……そうだよネー?
この後の事が怖くなってきたナイアの術式開発帳(ジャシニカ学習帳)のメモより一部抜粋