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フルカネルリだ。最高学年である六年生たちが卒業してゆく中、私と白兎はと言うと、特に変わらず日々を過ごしていた。
《それはひどくないかナー? 卒業式が変わったことに入らないってサー》
そんなものか?
《そんなものサー》
そうか。
春休みに入り、私はよく家で本を読むか、もしくは白兎とどこかに遊びに行くかといった行動を繰り返していた。
「瑠璃~♪」
「なんだ?」
白兎はにこにこと笑っている。
「楽しいね」
私もそれに合わせて笑顔を作る。
「ああ、そうだな」
『……仲が良いわねぇ……うふふふ…………♪』
アザギか。まあ、確かにな。
「……ねえ、瑠璃。なんか……寒くない?」
「気にするな。私に取り憑いているいたずら好きの霊が寄ってきただけだ」
ちなみにアザギだが、最近頭の流血が止まり、血色が良くなってきた。
《明らかに幽霊じゃないよネー》
『……それは、そうよぉ……亡霊だものぉ……あははっ♪』
楽しそうだな。
……ん? どうした白兎。顔色が悪いぞ?
白兎はガタガタと震えて辺りを見回している。何がしたいんだ?
《アザギ探してるんじゃないかナー》
なるほど。
「とりあえず、ここに何かしら見えるか?」
私はアザギのいる左肩を親指で差す。
「そ、そこにいるの……?」
「ああ。ここにいる。…………だが、やはり見えないようだな。安心しろ。アザギはあまり悪いことはしないさ」
多分な。
《多分なノー!?》
当然だ。なぁ?
『……そうよねぇ……?』
全く。何を言っているんだか。
私達、少なくとも私はこのあと起こる、または起こり得る事が全て予測できる訳じゃない。
前にもそういったことを話したと思うのだがな?
だが、そんな気休めの言葉でも白兎はかなり落ち着いたようで、青かった顔に血の気が戻りつつある。
「……よ………よかったぁ……」
……何がだ?
《フルカネルリはわかんなくて良いと思うヨー。理解できなくってよかったなんていう感覚なんかわかりたくもないでショー?》
そうだな。それはわかりたくないな。
「……ところで、宿題は終わっているのか?」
「あ」
私がそう聞くと、せっかく血の気が戻ってきた白兎の顔がまた青くなって行く。
……やっていないのだな。
《白兎ちゃんが涙目でフルカネルリを見ていルー。どうやら宿題が終わってないみたいだネー。助けてあげルー?》
……まったく。冬休みは自分でやっていたから注意していなかったが、また戻ってしまったか。
「……それで、何が終わっていないのだ?」
「…………ぜんぶ」
よし、今すぐ帰ってしまおう。
しかし、私が後ろを向いた途端に白兎に泣きつかれてしまった。
「………………」
「…………はぁ。わかった、明日はいつもの図書館に朝十時に。全部持ってこい」
「ありがとう!」
白兎は太陽のように笑った。
…………騙されているような気分だ。
《気のせいじゃないかナー》
私もそう信じたいよ。
瑠璃には結構不思議なところがある。
幽霊がそこに居るといきなり言ってきたりした時には、なんでかいつも寒くなったし、嫌な予感がすると言ったら大抵当たる。
この前なんて空飛ぶ人型の虫が居ると言われてそっちを見ると、寝っ転がりながらクッキーをポリポリとかじり、お笑い番組を見て大笑いしていた妖精を見た。
ちょっと固まってその妖精を見つめていると、その妖精も何かを感じたらしく、私の方を向いて……視線がぶつかった。
お互いに固まったまま時間が過ぎる。長かったかもしれないし、短かったかもしれない。
しばらくするとその妖精は慌てたような顔をして、一瞬で煙のように消えていた。その時にクッキーが二枚ほど一緒に消えていたのは愛嬌ってやつだと思う。
だから私にとって瑠璃の勘とかそういったものはかなりの信憑性があると思っている。
……つまり、瑠璃が私が宿題が終わってないことを当てるなんて簡単だよね、って話。
またもやフルカネルリに宿題を助けてもらった春原白兎の春休み。