2-13
フルカネルリだ。クリスマスのはずなのだが何故か私はサンタクロースの格好をしている。ちなみに白兎のリクエストだ。
《別にミニスカサンタとかじゃないヨー。ちゃんとズボンだからネー》
説明ありがとう。
始まりは冬休みに入ってすぐのこと。白兎が私たちと一緒にクリスマス会を開きたいと言ったのが原因だ。
白兎は既に自分の両親に許可をもらっており、後は私たちがどう答えるかを待つばかりだったそうだ。
…まあ、今私がこのような格好でいる時点で答えは想像できるだろう。私の両親はどちらも喜んでいたとだけ言っておくが。
「おー、瑠璃サンタだー!」
「…メリークリスマス……?」
この服を着ることになったときにこう言うようにと言われた言葉をそのまま繰り返す。
すると白兎と母がしばらく静かになった。
「「…………」」
「哀華。鼻血鼻血」
「白兎? 鼻血が」
「「……あっ」」
父と白兎の母に状態を指摘され、母と白兎は鼻をつまんで上を向いた。
……上でなく下を向いた方が良いと図書館の医学書に書いてあったような気がするのだが…………まあ、良いだろう。
《良いノー!?》
良いさ。
幸いすぐに鼻血は止まり、何事もなかったかのようにパーティは続いた。
《いやいや!? ダメでしょそれハー!?》
気にしなくても良いと二人とも言っていたし、平気だろう。恐らくは。
《あ、断言はしないんだネー》
しない、と言うよりできない。私はこの先のことが全て見えているわけでもないし、見れるとしてもあまり見ようとは思わない。
《……ふーん、そうなんダー?》
ああ、そうだ。
……ところで、なぜ私はこの服を着たまま食事をしているのだ? そろそろ頭のあたりが暑苦しいのだが。
「……これは、脱いでは」
「「ダメ」」
間髪入れずに母と白兎に否定された。
父を見てみる。冷や汗を流しながら目を逸らされた。
白兎の両親を見てみる。ただにこにこと笑っていて表情が読みにくいが、加勢してくれることは無さそうだ。
ナイアは……頼るだけ無駄か。
《ごめんネー。何もできないこともないけどやらないヨー》
やはりか。
《……やっぱりツッコミはないんだネー……ボクは悲しいヨー》
しくしくとわざとらしく泣いているが………まあ、演技だな。無視して良いだろう。
《泣くヨー? 泣いちゃうヨー? ボクってけっこう打たれ弱いんだヨー?》
泣きたければ泣け。打たれ弱いナイアなど想像できん。
私がそういうとナイアは私の頭の片隅でしくしくと泣き始めた。
………おや、あんなところに羽の生えた人型の虫が。
《それ虫じゃなくて妖精だヨー!》
ほう、あれがか。あのテレビを見ながらクッキーをかじっているあれが妖精か。
《俗世に染まってルー!?》
まあ、妖精だろうが染まるときは染まるだろうさ。
フルカネルリ達のパーティを見てると、昔のことを思い出すナー。
それは何億年か前のこと。クトゥグアとアブホースとクトちゃん、その他にも仲の良かったやつらをボクのうちに呼んで、小さな小さなことで意味もなく宴会を開いてみたんだよネー。
何を思って開いたのかはもうあんまり覚えてないけど、その中で何があったのかは良く覚えてる。
皆が皆、色々なものをボクのうちに持ってきたんだけど、その中にお酒があったのサー。
……ちなみにお酒は一億二千万歳になってからだヨー。これを守らないと先生に鉄拳制裁されちゃうから気を付けようネー。
この時? 大丈夫、みんな一億二千万歳を越してたからネー。年増? ハハハハー、アブホースに言ったら殺されちゃうヨー? クトちゃんにもネー。
まあ、そんなわけでみんなでお酒を飲んで、歌って踊って騒ぎまくって、酔ったアブホースが意味なくクトゥグアにキレたりクトゥグアがヒャッハー言い出してボクにボッコボコにされたりノーデンスがボクのうちの本を勝手に読んでテンションがすごいことになったりしたわけだネー。
…………フルカネルリ達はそんなことはないみたいだけどネー。
……久々にかーさんに顔見せにいこっかナー。
次回の出番を失うことになっちゃったナイアの話
いつか里帰り編も書くかもしれない。
……望み薄ですがね。