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異世界編 5-21

 

フルカネルリだ。ナイアを泣き止ませてからしばらくして、一時待機状態であった実験を再開することにした。

なお、今回のナイアの言動については嫉妬から来る行動だと言うことが判明している。どうも私と体を重ねてからと言うもの、私に対する独占欲が割と暴走気味であったのがついに爆発してしまった結果があれらしい。

……わかってはいたが、やはりナイアは人間臭いな。純粋と言ってもいいが、純粋すぎるのが少し考え物……と言うわけでもないが、やはり珍しいのだろう。


まあ、私の知る限りでは神と言えども人と同じように死と消滅を恐れ、それでいて自らよりも弱い存在には思い切り上から話すようなものばかりだが…………ん? なんだ、人間も神も大して変わらないのか。

そもそも神と言うものがいつから存在していたのか、それは人間……と言うより世界が始まるよりも速いのか遅いのか。なぜ人間の姿をした神が多いのか。色々と調べたいことが山積みとなってきている。

……やれやれ、少し前に大量の神を使って数多の実験をしたと言うのに、私の欲望はとどまるところを知らないようだな。

だが自重はしない。絶対にしない。自重して自らの好奇心を殺すような事をするくらいなら、私は全力をもって自重を強いる存在を排除しにかかるだろうな。今の私は未来を覗くことはできないが、それでもその事だけはしっかりと理解できる。


『瑠璃ならぁ……そうでしょうねぇ……ふふふふ……♪』


私をある程度知っている者からすれば、最早口にするまでもないことだろうな。

研究第一の人生を送り、健康や食事を二の次三の次。死ぬ時も多少の茶目っ気を出したとは言え見聞を深めてくると言って死んだ私……フルカネルリの人生を知っていれば。


『知らなくてもぉ……予想はつくわよぉ……? 見てればねぇ……♪』


そうだろうな。


さて、実験再開だ。魂と肉体は用意したので、一度それを巻き戻してから英雄の片割れの体内に転送する。これで孕んだのと同じような状態になっただろう。

実際には私のクローンから記憶の大半を削除し、調整した人工霊魂を押し込んだ物を培養器代わりの物に入れただけなのだが、そんなことはあの英雄達にはわかるまい。

あの英雄達はやることはやっていたし、いつ子供ができてもおかしくはない状態だった。そしてこの世界には産まれた子供が誰の子供かを理解する術が無い。つまり、私が埋め込んだ私のクローンの卵であっても、実際にそうだと証明することはほぼ不可能だと言うことだ。


そして産まれてくる私のクローンには、当然ながら私の祝福と言う名の呪いがかけられている。両親と同じようなものだが、両親に比べて『主人公補正』と一般的に言われているものが強く出るようになっている。

要するに、産まれてくる子供は奇運の持ち主となることが決定されていると言うことだ。


戦乱の話において主人公には悪運が必要だ。

何度も戦に巻き込まれる悪運が。

強者との戦いによって強くなり、最後の最後まで生き延びることのできる強運が。

いくつもの不条理を身に受ける凶運が。

不条理も異常も飲み込んで進むことのできる幸運が。

それらを同時に身に宿すという奇運が。


戦場での生死が運で決まり得るならば、その運を支配したものが生き延びることはけして不思議なことではない。故に私はクローンに奇運と悪運とを植え付けてみた……と言うわけだ。


『……昔ねぇ……「ラッキ○マン」っていう漫画がねぇ……?』


存在は知っている。だが流石にあそこまでの幸運は与えていない。幸運とご都合主義だけで勝ち抜けるほどの幸運など、私が与えられるわけがない。

私にできるのは精々イカサマ無しのルーレットで三点掛けすれば九割終盤の確率で当たる程度の、そのくらいの幸運を与えることだ。


『……ふふふふ……♪ 嘘ばっかりぃ……♪』


そうか? 嘘らしい嘘はついていないぞ? それ以上のことはやる気にならないからできないしな。

やる気になればもう少しできるかもしれないが、やる気になれないのだったらできないのと同じような物だ。


……必要ない事をするのは苦手でな。物事を予想してそれに備えることも、予想外の事態になってもすぐに反応して動けるようにするのもそれなりにできるのだが、意味もなく何かをするのは得意ではないのだ。

……まあ、行動には何らかの意味を見つけてしまうからあまり考えたことはないがな。逆に言えば何も考えずに行動することが苦手だと言うことでもあるが、何も考えずに行動できなくて困る時などこちらの思考を読み取る敵と相対したときくらいな物だろう。


その時もいくつか対応方法はある。例えば思考を加速して早送りしたカセットテープのように何を考えているのかわからなくしたり、思考をいくつにも分割して考えることによって声を重ねて何を考えているのかわからなくしたり、読まれても避けられないような方法で封殺したりすればいい。

相手が私と同等程度の実力を持っていればそれもできないが、その場合はさっさと逃げ切って見せる。私の本領は研究から来る開発力だが、その次に得意なのは防衛および逃亡と隠蔽だからな。


……やれやれ、話がよく跳ぶな。私の適正よりも、今は実験対象のことを気にしなければ。






  実験開始したいフルカネルリ






『……実際はぁ……色々な加護があるからぁ……攻撃防御支援妨害回復呪詛でも大体できるのだけどねぇ……うふふふふふふ……♪』





 そして既出のちょっとした事実




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