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異世界編 5-20

 

フルカネルリだ。あの後、それはそれは色々あった。

初めての時の優しさが嘘だったかのように荒々しく、まるでナイア自身の存在を私の奥底にまで刻み付けるかのように、何度も何度も抱かれた。

正直、異世界の状態でなければ何度か死んでいてもおかしくない……と言うよりも、何度か死んでいないとおかしいと言い切れてしまうほどに何度も抱かれたのだが……やはり、かなり疲れた。

流石は相手は最高位に近い邪神、もう何日過ぎたことやら。

私の分身が殆どの実験記録を纏めておいてくれて助かった。お陰ですぐに実験に戻ることができる。


……分身は私の意識の一部が動かしているので、言ってしまえば私自身がやったのと何ら変わらないのだが……あれだけ抱かれても意識の一部を私の身体とは別にしておけるとは、知らなかったな。

5ヶ月と27日……180日。ナイアが適当に作った空間で、何度も何度も……合計すると両手の指を二進法式で使っても数えきれないほどの回数抱かれた。

異世界で月経が止まっていなければ間違いなく孕んでいただろうと思われるほどに精を注がれ、前だけでなく後ろにも注がれて、当然のように口からも飲まされた。


後ろと口から注がれた物は全て消化して吸収したが、流石に前の方のまで物理的に吸収するのは不可能だった。

精に込められた力を吸収することはできたが(正確にはやらなければ過労で腹上死確定だった)、物理的に詰め込まれたナイアの精を吹き出す姿を見られるのは……いくら私でも恥ずかしかった。


ちなみに、私を欲望のままに半年近く抱き続けたナイアはと言うと───


「殺してぇぇぇえぇぇェー!!誰かボクを殺してよぉぉぉぉぉぉォー!!!」


───と、ただひたすらに全力で転げ回って死にたい殺していますぐ誰かと悶えながら叫び続けている。見ていて少し可哀想になってくるほどに悶え続けているが、これには理由がある。


さっき、私は『何度か死んでいないとおかしいほど抱かれた』と言ったが、あれは間違いではないが正確ではない。



実際、一回死んだのだ。



原因はキスのしすぎによる呼吸困難から来る腹下死。呼吸ができないままあれだけ抱かれていれば、まあ窒息したところでなんらおかしいことはない。

ただ、私が驚いているのは……


「まさか『古鐘瑠璃』となってからの初の死因がナイアだと言うことは予想外だったな」

「キァァァァァァァァー!!!」


おや、ナイアの身悶えする速度が上がったな。頭を中心に見事な円を描き始めた。

禿げるんじゃないかと一瞬思ったが、ナイアだったら別に平気だろう。死んだ私を蘇らせ、流石に今回のはやりすぎだったとペナルティの記憶と経験の一部を失う効果と死亡による元の世界への帰還を無効化して見せたナイアなら。


「ごめんヨー!ボクが悪かったヨー!!ごめんよフルカネルリー!!!うわーん!!」

「泣くな泣くな、特に恨んでもいないし、記憶の中では孕んだ子供に腹を内側から喰い破られて死んだ経験もある。それに比べれば大した痛みでもなかったしな」


実体験ではなく、クローンの経験を引き継いでいるだけだがな。今ではもう数万では足りないほどの私の経験が私の中に存在しているが、それぞれをしっかりと記憶してあるから思い出そうとすればすぐにでも思い出せる。

思い出したくもない記憶もあるが、だからと言って思い出さなくてはいけない時もある。思い出さないのと思い出せないのでは大分違うのでな。


とりあえず、かなり本気で泣いているナイアの体を起こしてやる。暴れようとしていたナイアだったが、抱き上げているのが私だと解った途端にピタリと暴れるのを辞めた。

大人しくなったナイアの頭を無言で撫でて、気にする必要はないと耳元で囁いてやる。ぐすぐす泣いているナイアはまるで少し前の白兎のようだ。

白兎は幽霊は怖がらなかったが、一人になることを怖がった。気が付くと一人になっていたときはふらふらと私を探し、そして私を見付けて泣きながら抱き付いてくるといったことが多々あった。

今のナイアはそれとあまり変わらない。さっきと涙の理由が変わり、迷子の子供が母親を見付けて安心した時のような涙を流す。


……さて、今度はいったいどれだけ付き合うことになるのだろうな。


私は泣きじゃくるナイアの頭を抱き締めながら、ナイアが泣き止むまで頭を撫で続けた。






くすくすくす……と笑いながら、わたしは瑠璃と這い寄る混沌の二人を眺める。

神の位に上がっても、瑠璃は研究第一の瑠璃のまま。神のままのナイアはと言うと、元人間の瑠璃によってその在り方をかなり変えられている。

これは普通の神と人間の関係から見てみるととても異常なことだ。なにしろ神が人間に入れ込むなんてまずありえない。寿命が違いすぎる相手と一緒に居たいからといって、相手が嫌がらないように場を整えて囲い込み、その上戻ろうとすればいつでも戻れるようにしながらも長い時間を過ごさせることで神格化を進めていくだなんて……よっぽど首ったけらしい。


……瑠璃はどうやら気付いているみたいだけれど、本人にはなんの文句もないようで平然とそれを受け入れている。

本当に、この二人は見ていて飽きることがない。

わたしはそう考えつつ、くすくすと笑いながら涙を流す邪神と無表情の瑠璃を眺めるのだった。






  実は一番精神的に成熟しているアザギの日課



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