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異世界編 5-17

 

フルカネルリだ。ゴーレムの名前は結局『ソリキッド・フルメタルゴーレム』に決まり、取り巻きに『ソリッド・ゴーレム』と『リキッド・ゴーレム』の二体のゴーレムを作るようにした。

なお、ソリッドもリキッドも形は蛇だ。ソリッドの方は明らかに機械的であり、リキッドの方は波打つように滑らかな形をしている。

……ボスの部屋の前には金属製の歯車を使った罠があったりするが、特に意味は無い。


《メタルでギアな罠の奥には個体の蛇と液体の蛇がいるんだネー》


そうだな。だが、特に何かあるわけではないぞ。

……その事自体がなにかに含まれると言われたら否定できないがな。




さて、迷宮は既に作り上げた。予想外の事態に対応するための手もいくつか打った。後は制作中の英雄達を完成させて、いくつかの国に放り込めば実験を始めることができる。

人族の国のいくつかと、魔族の国のいくつかにそれぞれ一人ずつ。

人間は人間で、魔族は魔族で、それなりに固まっていてくれるから大きく二つに分けるだけで済む。

互いに仲がいい種族もあれば仲の悪い種族もあるからある程度注意が必要だが、それでも人族と魔族に別れればかなりの種族が魔族と人族に別れることだろう。

そもそも戦をしようとしなければ私の用意はかなりの量が必要なくなるわけだが、しないとは限らないからな。

経験上、勇者やら英雄やら新兵器やら、形を問わずに強大な力を得た国家や組織は尽くその力を利用して他者に戦を仕掛けようとしてくることが多い。時には自らの力を私が想像もしなかった方法で高めてくることもある。

そんな小賢しく、諦めの悪い人間達が、私はたまらなく愛おしい。愛おしいが……同時に私の目には愚かしくも映る。


……と、そんな私の人間評価はどこか適当なところに放置しておくとして、英雄の完成を待つ間にその次の段階のための下準備でもしておこうか。

英雄が全てを終わらせて平和になる……と言うのも悪くはないが、やはりお話としてはそこで終わったとしても実際には世界はまだまだ続いていくわけだからな。

特に英雄のその後と言うものには興味が持てる。戦の無くなった世界で、必要とされなくなった英雄達はいったいどのように生きていくのだろうか。できるならば、ディオとナギのように異世界に移動して幸福に……と言う結果には終わらないでもらいたいがな。


《あの二人は自分達の世界で割と幸せに暮らしてるからネー。幸福の形は少ないシー、似たようなものばっかりだけドー、不幸の形は千差万別で見ててなかなか飽きないもんネー》


だが、それでも飽きてしまうほどに神の一生と言うものは長いのだな。


《そうなんだよネー……自分で不幸な形を作ろうとしてもそれが結果として出る前にわかっちゃうからやる気も起きないしサー……フルカネルリで言えば『実験をする前から実験結果がほんの僅かの狂いもなくわかっちゃう』って感じなんダー》


それは無粋極まりないな。私がそんな状態になったら泣いてしまうかもしれん。


《嘘でショー?》


ああ、嘘だ。実験のために利用できるものは何だって利用するのが私だし、そもそも実験と言うのは情報が足りない状態から少しでも情報を補うためにするのであって、自分の持っている情報から答えを導き出す思考実験や予測とはまた別物なのだ。

そして私が実験をするのはその結果を導き出すことができないからであり、実験をしないでも結果を出すことができるのならばそれはそれでかまわない。結果さえ知ることができるのならば、私には一切文句はない。


……まあ、そう言いながらも実験は続けるだろうがな。私にも予想できないものや予想できない事態と言うものがあるし、予想できたとしてもその結果が本当に正しいのかどうかがわからない。

だから実際に試してみて確認する必要はどんなものにもあるし、確認したら確認したでそれを基礎として次の実験に移行させることも多々ある。

故に暇な時間など早々無いし、退屈だと感じることも滅多にありはしない。退屈しのぎなどいくらでも作れてしまう。


《……ちょっと羨ましいヨー。ボクは暇潰しができなくて色々やってきたからネー》

『……本当にぃ……色々……ねぇ……? うふふふ……♪』


ナイアがかつて何をしてきたかには多少興味があるが、あまり苛めてやるなよ、アザギ。


『……ふふふふ……♪ ……苛めるだなんてぇ……そんなことしないわよぉ……? うふふふふふ……♪』

《そんな楽しそうに言われても説得力に欠けるヨー……》


まあ、限りある生をできうる限り面白おかしく生きていくのが人間と言うものだ。かつて人間であったアザギでも、それは変わらないだろうよ。

ついでに、限りのない生を限界まで楽しくしようとするのが神生(じんせい)だと私は思っている。ナイアは長い人生の中の一時に潤いを与える何かを見つけることができたからいいが、恐らくかつては凄まじい暇の中にあったのだろうし、未だに暇の中に居るものもいるだろう。そんな神は是非頑張って神生の潤いを見つけてくれ。

ちなみに私のお薦めは限界が無い系統のものだな。知識の収集でも鍛練でも研究でも何でもいいが、日々の積み重ねが大切な何かを始めるといい。

限界が無いから極めようとすればいくらでも上っていけるし、それでいて結果がわかっても自分がその通りに動くか否かで簡単に未来を変えられるしな。


……それが何の役に立つかは知らんが。


…………さて、そろそろ人工魂魄の改造と知識の刷り込みは終わるだろう。次はそれを適当なところに放り込んでやらなければ。

魂魄は魂魄だからな。早めに入れ物に入れてやらねば磨耗してしまう。






  実験の準備が整いました。




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