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異世界編 5-14

 

フルカネルリだ。英雄制作中だが、いくつか問題が発生している。

具体的に言うと、この世界で成長した身体に英雄システムから来る能力が追い付かないで自壊を始めてしまうのだ。

流石にレベルで言うと1の肉体に限界値である9999を遥かに越えた能力値を数人分叩き込むのは多少無茶があったと言うことなのだろう。が、何とかするための道は既に見えている。

そう、初めから高い能力があるから駄目になるのだ。つまり、少しずつ慣らしていけばいいと言うことだな。


……まあ、その結論に至るまでに三体ほど駄目にしてしまったが、そのお陰で確証を得ることができた訳だし、三体程度の損失で済んだことを喜んでおかなければな。


『……くすくす……♪ 態々確認のためだけにぃ……二人減らしたくせにねぇ……?』

《確認は大事なことだヨー? 無駄な浪費を抑えるためには必須のことサー》


その通りだ。そのお陰で私はその問題を解決する方法を練ることができたわけだし、その方法は現在までしっかりと効果を上げている。

そしてその実験体はその後にアンデッドとして甦らせ、人間側の迷宮のボスとして流用しようとしている。


その名は『アンデッドブレイブキメラ』。死した勇者の力を得た三人の死体を合成して作り上げた、少なくとも鍛えてもいない英雄達ではけして勝てない程度の実力を持つアンデッドだ。

実際の実力は……まあ、そこそこと言ったところ。人間と言う大して強さの上限の高くない種族の相手をするには実に都合のいい存在だ。

最も都合がいいのはアンデッドであると言うことと、同時に場所が殺戮に溢れた迷宮であると言うこと。アンデッドであるがゆえに負のエネルギーを受けていればいつかは復活するし、殺戮が行われる迷宮であれば瘴気やら怨念やらと言った負のエネルギーには事欠くことはない。


主に瘴気を生むのは蟲の魔物。繁殖力と数が売り。

その蟲の食を支えるのが植物の魔物と冒険者。放置しておけば瘴気を生む植物と、迷宮にて死した一部の冒険者の死体が餌だ。

アンデッドは死んだ冒険者の肉体に怨念が宿ったものや魂そのものが魔物となる。そしてアンデッドは常に生者に対しての怨念を撒き散らし、消滅したときにも膨大な怨念(とは言ってもその存在からすればの話だが)を生む。

さらに言ってしまうと、それらの瘴気や怨念が強くなれば強くなるほどにアンデッドは力を増すし数も増える。

ゴーストやファンタズム、レイス等の非実体型モンスターも生まれるし、マッドゴーレム等の自然物に霊や何かが取り憑いたようなものも生まれる。


そう言うわけで、放置しておく迷宮ではアンデッド・蟲・植物の三点セットを使ったそれは実に有効だ。出入り口を封印されたとしても内部で着々と力を蓄えて封印を内側から破ることすら不可能ではないのだから。


《魔法使い系のリッチに食事が必要ないのは大きいよネー?》


そうだな。それも中々に大きい。

だが、私の中で最も大きいのはアザギだな。アザギをしっかりと観察していなければ私はこんなものを作る事はなかっただろうからな。

だから私がこの迷宮で一番期待しているのはゴーストの奇襲能力だ。特に狭い道で他の実体系モンスターに襲撃されているところに壁抜けからの奇襲をしてくれる事を期待している。


なお、将来的にこの迷宮で生まれる可能性のある魔物は……。


アンデッドならゴーストから派生する非実体型霊体系モンスター、ゾンビ及びスケルトンから派生する蟲・動物・人型アンデッド系統、ゾンビ同士や異なるアンデッドがくっつきあったキメラアンデッド、リッチなどが魔力で生み出す従者など。これらは太陽光等に弱いが、迷宮ならば関係ないな。


植物系ならば瘴気を生み出す瘴樹(しょうき)と、怨念を生み出す実をつけるようになるだろう怨実草(うらみそう)。蟲に食われぬように毒を持ったりせずとも瘴気や怨念が毒の代わりにかなるだろう。恐らく蟲も少しずつそれに耐えるようになって行き、それに引っ張られるように植物の方も毒の代わりとなる瘴気と怨念の生産・貯蓄力を増やして行くと言うループを続けていくのだろうな。

あと……ネーミングセンスについては放置しておけ。私も致命的だと理解はしているから。


蟲系統の場合は……流石にわからん。基本となる魔蟲があまりにも不完全にして進化の余地に溢れすぎているせいで、その全ての進化の方向を予測するのは面倒だし、実のところあまりやる意味がない。

大雑把に分ければ方向性としては三つ。植物を食べて怨念か瘴気を取り込むようになるのが方向の一つ。恐らく形としては今の蛭のようなものをそのまま大きくして、瘴気から来る猛毒や怨念から来る呪詛を使うようになるのではないかと予想する。

それから腐肉や同族の肉を食らうのが一つ。これはある程度の直接的な戦闘能力を保有することになるだろう。必要なことだからな。

また、大気中に漂う瘴気や怨念を直接摂取するような物も若干出てくるだろう。これは数は少ないが着実に強くなり、攻撃能力はともかく防御能力には優れた種になるはずだ。


それから番外として、怨念や瘴気が凝ったものがそこら中に存在する土や泥、水、大気などに宿った自然系の魔物も一応できるだろう。

他にも何かと共生するようになった蟲や、瘴気や怨念を固めて武装する騎士のようなスケルトン、超魔導リッチ、瘴気と怨念の装甲を持つ蟲人など……数を上げればキリがない。

そしてそれらを率いるように君臨するのが、剣・槍・斧の三人の勇者の力を持った英雄の成り損ないと、信仰・盾・魔法の三人の勇者の力を持った英雄の成り損ないと、鍛冶・錬金術・彫金の三人の勇者の力を持った英雄の成り損ないの三体のアンデッドを怨念と瘴気で繋いで混ぜ、ついでに私が少し闇の加護を与えた手製のキメラアンデッド。六本の腕にそれぞれ武器を持ち、ハルバードに追加でいくつか月牙を加えた怨念製の斧槍が一つ、瘴気製の長剣が一つ、それぞれ怨念と瘴気の結晶体がくっついた杖が一つずつと、巨大とはけして言えない金槌と、巨大な盾が一枚。

暇さえあれば武器を鍛え、盾を鍛え、杖を鍛え、自らを鍛え、そして自分の元にまで降りてきたアンデッドを近衛として鍛え続けるアンデッドブレイブキメラ。まあ、このくらいなら英雄達が頑張ればなんとかなるさ。


……倒しても十数年で復活するがな。


《鬼だネー》


研究者だ。






  やってることはやっぱり鬼。



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