異世界編 5-10
フルカネルリだ。とりあえず一言、ナイアは優しかった……とだけ言っておくとしよう。細かい内容は省かせてもらう。私にも羞恥心と言うものが人並みにある。自分のそういった行為の内容を赤裸々に語るなどということはしたくない。恥ずかしいからな。
《だけど内容を細かく小説風にしたためた上に映像として記憶を保存したりまでするんだネー?》
まあ、その辺りは仕方がない。私の癖のようなものだ。
私にとってはある意味では人生での大きな記念とも言える出来事だからな。
この世界での私は生理が止まるから子はできないだろうが、それでも私は嬉しいぞ? ナイアが優しくしてくれたお陰で体に負担は殆ど無いしな。疲れも痛みも殆ど無い。
……若干残念だと思っていたりもするが、それならそれで仕方あるまい。
ナイアとの関係が若干変わったような気がする今日、とりあえずステータス画面を眺めてみることにした。
もう既存のスキルや身体的なスペックデータは省略して行くと……何やら見慣れないスキルを発見した。
邪神の寵愛。スキルレベルは無し。パッシブ効果とアクティブ効果の双方があるらしいが、アクティブ効果の方はどうやら現状では使用不可能らしい。
……ふむ。パッシブ効果の方から確認してみるとするか。
【邪神、ナイアルラトホテプに寵愛を受けている証。死後、確実に神霊以上に召し上げられる事が確定する。ナイアルラトホテプから加護を受けていた場合、ナイアルラトホテプに関連するステータス及びスキルレベルが倍加する。】
……つまり、私はこれからステータスが倍々で加速度的に増加して行くと……そう言うわけか。
……この世界でそんな風になってしまっては手加減が難しそうだが……まあ、ナイアならなんとかなるだろう。
《フルカネルリのステータスが倍々で増えていったラー、フルカネルリに力を貸しているボクの能力もその分だけ上がっていくって事だからネー》
そうか。正直に言ってそれは助かる。
ところで、私に加護を与えているのはナイアだけではないのだが、私の能力が上がればクトゥグア達の能力も上がるのか?
《上がるヨー。だけどみんなボクほどフルカネルリに加護を与えてる訳じゃないから倍率はそんなに良い訳じゃないけどネー》
なるほどな。それに、寵愛を受けているのもお前一柱のみであるわけだし、その辺りも関わってはいるんだろうが……まあ、私の知ったことではないし、私がどうにかできるようなことでもない。
それに私はあくまで私であり、ナイアとは別の存在なのだから何を考えていようと止めることなどできないしな。
それに、私がナイアの玩具であったところで今までと何ら変わることはない。今まで通りにナイアやアザギと共にこうして世界を練り歩き、私は自らの欲望の赴くままに知識を集めるべく研究を重ね、ナイアとアザギは私の行動を見て暇つぶしとする。そもことはどうなっても変わることはないだろう。
当然、ナイアが巫山戯た事をするなら私はその頭をひっぱたくし、アザギがケラケラと発狂し始めたらそれを止める。頼み事があるなら内容如何によっては聞いてやることも吝かではないし、ナイアとそのような関係になったところで他の誰かを突き放すようなことはしない。
……それに、私は白兎を嫁にすると決めているしな。
《付き合い始めて一日目にしてまさかまさかの浮気発言だっテー!?》
……いや、むしろナイアとの関係の方が浮気に近いものがあるような気がするが? 白兎の方がそう言った相手として意識するのは早かったわけだし、それにナイアにはヨグソトスとういらしい相手がいると聞いているしな。
《…………誰から聞いたノー?》
クトゥグアだな。中学時代にはとてもとても仲が良かったそうじゃないか。
《……えートー……ヨグソトスとは友達だけドー……そういう関係じゃないヨー? 確かに何回かそういうこともしたことはあるけドー、それはあくまで暇つぶしの一種というカー……》
何を勘違いしているのか知らんが、私は別に嫉妬していたりするわけではないぞ? ただ、そういう相手も居たらしいなという話をしただけだ。
それに、私には嫉妬心というものは殆ど無い。前世からそうなのだが、いいものはいいとすぐに認めてできるだけそのいいものに近付けようとしたり、それを超えようとすることはあっても、嫉妬するということは経験がない。私が普通の小娘であったのならば嫉妬といった暗い感情を持つことがあったのかもしれないが、幸か不幸か中身が私だからな。欠片も経験がない。
だからと言うか、私には嫉妬心を持ってクトゥグアを追いかけ回すアブホースのことが羨ましいと思うことがあったりもするのだが……まあ、その辺は仕方あるまいよ。それも私が私である証明だ。受け入れるしかあるまい。
…………待てよ? 『私であるから仕方がない』だと? すると、私が私でなければそういった感情を持つということも考えられるわけで……だが私が私でなくなる事など到底許容できる範囲を超えているから……。
……待て待て、逆に考えろ。つまり……私以外の私が私でなくなれば、私は私のまま嫉妬心や功名心などを知ることが出来るやもしれん、ということか?
……よし、次の研究が決まったな。となるとやはりこの世界の常識を把握することが重要になってくるが…………そちらもある程度は順調だ。
だが、やはり万全を期して各階級から最低でも千人ほど観察を続けてそれなりの精度を持てるようにしなければ。
とすると、人間の一生を何度化か確認するのが一番手っ取り早いだろうな。
ふふふふふふふふ……こうして考えるだけでも楽しみだ。
感情を知りたいフルカネルリさん、何かを考えた。
《まアー、またいろいろと人の道から外れた事なんだろうけどネー……ガンバレー》
そして煽るナイア。