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異世界編 5-8

 

フルカネルリだ。迷宮が入り口を開いたのはいいのだが、今までの客は殆どが野生の魔獣ばかり。知性ある獣が入ってくれればこの迷宮のことも少しは広がっていくはずなのだが、言語を理解して自分で使う程度の知性ある獣は中々いないようだ。

しかし、私の迷宮の中にはそういった獣が数多く存在している。ちなみに獣などが眠らされて捕らえられたまま迷宮の外……正確にはその階層から外に出ようとした場合には帰還魔法で即座に魔獣だけ元居た場所に送り返されるようにしてある。

一応人に近い姿をしている魔獣も多数存在しているからな。そういったことの一つや二つ、予想しておいてしかるべきだろう。


……私はこれでも一応自分の作った作品には愛情をもって接しているのだ。ある意味では私の作品とは私の子でもあるのだからな。

だから、私の子が迷宮の外に連れ出され、役目を果たせる状況になることを止めさせているわけだ。


愛情をもっているのに互いを殺し合わせるのはおかしいと言うかもしれないが、元々私の作品達は私の研究意欲を満たすためだけに産まれてきた存在。道具は最後まで使ってやってこそだと考えているのでな。

ならば作ったものにその本懐を遂げさせるために、私は好奇心と研究意欲の全てを満たすために、ありとあらゆる事を行うのがある意味では作ったものに対する礼儀とも言える行為だと考えている。


《なんて言ったところデー、結局フルカネルリはやっぱり我が道を行く我儘さんって結論に落ち着いちゃうんだよネー》

『……ふふふ……♪ ……そうなのよねぇ……』


なぜアザギが楽しそうにしているのかは知らないが、私が我儘だと言うのはけして間違いではないな。






迷宮の入り口を開いてから20年余りの時が過ぎた。しかし未だにこの迷宮に踏み居るのは野性動物ばかりで、知性ある生物は一人たりとも来ていない。

どうやらこの場所に来るような奇特な者はかなり少ないらしく、この世界に来てから原住民らしいものを見たことがない。実に暇だ。

暇なら暇でやることはいくらでもあるが、実験に支障が出るのはいただけない。どうにかしてこの迷宮に人を呼ぶようにしなければな。


「そんなわけデー、みんなでこの迷宮に人を集めるようにする会議を始めたいと思いまスー」

『……それではぁ……意見のある者は発言してくださぃ……』


……まあ、別に意見を出し合うのは有意義だし、お互いに意見を擦り合わせて新しい意見として確立させるのは楽しいから構わないが……。


「とりあえず、この迷宮の認知度が低すぎるのが問題だと考えるまずは街の噂話程度の認知度でも構わないから知らせておくことが重要だと考える。その場合、出来るならそれなりの実力者をごく少数か中堅どころをそれなりに多い数この迷宮に誘い込むことが理想なのだが、何かいい案はないか? できるだけ自然に、それでいて相手が誘い込まれたことに気付かれないような物がいい」

「意識誘導で一発じゃないかナー?」

『……わたしが気付かれないように憑いて来させるって言う手もあるわよぉ……?』


出来れば相当有名なパーティを一つか、そこそこ有名なパーティをいくつか呼んでくれるとありがたいが……アザギは複数人に同時に憑けるのか?


「……憑けるわよぉ……♪ うふふふふ……♪」


憑けるのならば問題無いな。ではどちらも合わせてみるとするか。

意識誘導とアザギの憑依、そして情報操作とを合わせて迷い込ませた後に帰らせれば、少しはここに来る者も増えるだろう。


初めのうちは情報操作でこの迷宮のある森に入ってきた者に限定して呼び込み、そして少しずつそれを広めていけば……。

となると、ある程度情報を広めるにはやはり口コミからか。情報屋に旅人からの情報として渡すところから始めようか。

その後はしばらくひたすら地道な作業になるが、そういった地道な作業がなければ成功には繋がらないのだから仕方無い。とりあえず情報を流してこの森に人を集めることから始めるとしよう。


次は流す内容だが……『放っておくと内部の魔物が溢れて世界が終わる』か、『中には数多の宝が眠っており、最下層に至った者はあらゆる望みを叶えてもらうことができる』、と言ったものがあるが……どちらが適切だと思う?

どちらも同時に流せば、人間らしく宝を狙いつつ迷宮に住む魔物を殺すことができると喜んで入ってくるようになるかもしれないが、それで迷宮の生命体が絶滅してしまっては元も子もない。


……数が少なくなってきたら自動で産み出すことができるようにしておくか。一部は侵入者が入れないように結界を張って、その中で種族と一族別に分けて子供を作らせ、ある程度数が揃ったら外に出す……と。


むしろそこに住まわせていつでも増やし続けると言うのもありだな。そうすればいつか本当に迷宮の外にまで進出することができそうだ。

それでは、実行するとしようか。まずは迷宮の改造からだな。十階層毎にワープポータルでも用意しておくことにするか。そうでなければまともに進むこともできないだろうし、あちらが進めないのはこちらも困る。

実験がいつまでも進まないのは、大きな問題だからな。


《いくつも平行してるからそこまでこまらないくせニー》


まあ、その通りなのだがな。実のところ廃棄物の再利用も兼ねているから、あまりにも生態系を壊されない限りは気にしない。

破壊され過ぎると困るが、かなりの領域までは自力で元に戻せるように組み上げているからな。私が手を出さなければならないような事にはならないだろう。






 フルカネルリは心配性



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