異世界編 5-7
フルカネルリだ。一つ一つの説明をするのが面倒なので詳細は飛ばすが、一応迷宮を完成させた。
階層は180。種族も属性も多種多様の魔物が存在しているが、100階層を越えるとかなりの量のユニークモンスターが存在している。
プレイヤー達のレベル制限もかなり外れてきていて、現在では9999。最下層まで行けるかどうかはともかく、途中まではなんら苦労することは無いだろう。
まあ、それでも一芸特化の魔物達にはかなり苦労するだろうがな。
例えば、硬すぎる亀の魔獣や速すぎる一角魚群など、倒すだけでも苦労するはずだ。
なぜなら、当たってもダメージがまず入らない亀と、攻撃がほとんと当たらない上に魔法も効かない一角魚群。倒さずにスルーするのが正しい。特に亀の方は暫く待てば餌を求めて移動してくれるからな。
……それは置いておくとして暫くは人は来ないだろうし、適当にのんびり研究と研鑽でも積みながら過ごす事にしよう。
《つまりはいつも通りって事でいいのかナー?》
まあ、その通りだな。いつものままだ。
ただ、私はこの世界の『レベル制』と言うところに深く疑問がある。いったいどのようにしてその『レベル制』という概念を人間だけではなくその他の生物にまで適用させているのか。
……うむ、実に不思議だ。神秘と言い換えてもいい。
私もレベルの概念を持つ存在をいくつも作ってきたが、多くの場合は同じ種族、同じ魔物だと言ってもステータスに若干の差異がある。それだけでなく全く同じステータスの魔物を作ったとしても、成長する環境によっては真逆のステータスをとることもある。
それが最も顕著なのは恐らくスライムだろうが、それ以外の魔物……例えば狼でも、雪原に棲むか密林に棲むかによって相当変わる。
雪原に棲めば雪や冷気に対応するために毛皮が発達し、そして新雪の上を走るために体は軽く、大きくなるだろう。
なによりその体毛は姿を隠すために純白に変わり、恐らくだが冷気や氷雪を操る魔法を覚える可能性もある。
密林ならば毛皮の代わりに爪が発達し、樹などの障害物を避けるために体は小さくなり、脚力は恐らく上がるだろう。
体毛は土や樹の幹に紛れるような茶色をしていて、樹の上を飛び回るようになることもあるかもしれん。
…………まあ、結果が気になるならば実行すればいい。今まで通りに実験を繰り返し、そして事実を私の脳に刻み込めばいい。
幸運なことに私に時間はそれこそ空にある星ほどにもある。このような異世界に限定すればほぼ無限に実験を繰り返すことができると言うことだ。
実験には終わりは無く、未知の謎にも終末は見えず……私は幸福者だな。世界はこんなにも面白い物で満ちている。
……神様、ありがとうございます。
《どういたしましテー♪》
『……邪神様だものねぇ……』
《その通りサー。別にこの世界を作ったのがボクって訳じゃないけどネー》
そうだったな、我が邪神様よ。
この日。この世界に新たな迷宮が産み出された。
魔王領と王国領、帝国領の丁度三つの国境に突如現れた一つの迷宮が広く認知されていくのは、まだ遠い未来の話。
一つだけはっきりしていることは、この迷宮に知らずに入った者はまず命を落とすと言うことだけ。
未来では冒険者ならば知らぬ者など誰一人としていなくなる、今はまだ名もない迷宮の話である。
~迷宮ステータス~
名称:未定 ……生まれたばかりの名もなき迷宮
階層:180 ……かなり深い
知名度:0 ……作った本人以外は知らない
二つ名:なし ……誰も知らないから何もなくて当然
様式:複合型 ……入り口は天然、後は天然と人工と魔法型の複合
地形:複合型 ……想像できるほぼ全ての地形が存在し、天気も変わる事がある
棲息魔物:多種多様 ……製作者によってひたすら作られ続けたため、多種多様な生物・非生物が蔓延っている
攻略難易度:計測不能 ……かなり難しい。罠等はあまり存在しないが、棲息する魔物の存在だけでも恐ろしいほど難易度が高い
備考:世にも珍しい、階層ごとに地形や棲息する魔物の種族が一変する迷宮。アンデッドと獣と魚とドラゴンが一つの迷宮に存在しているなど、普通はあり得ない。
それに合わせてか弱点属性や耐性属性等も様々で、者によっては無効能力を保有している物すら存在している。
高くはつくが、安全のために空間魔法を使って中身を広げた袋に武器をいくつか用意しておくべきだろう。
当然、毒や麻痺の回復薬、それに治療薬なども豊富に用意しておいた方がいい。この迷宮では材料はとれるが宝箱などの数が異様なまでに少ないため、用意していなければ色々と難しいだろう。