異世界編 5-4
フルカネルリだ。この世界に魔法は一応あるが、スキル制ではないために覚えるのが大変難しい。
しかし、私はその点を『魔物の本能に使い方を刷り込む』ようにすることで解決。それによってそれぞれの種族に固有の魔法を持たせることができた。
勿論それはただ基礎を教えるだけなので、使い方の上手い下手が出るのは当然とも言えることだが……その後は勝手に研鑽して自分達の使いやすいように変えていくだろう。
しっかりと本能に刷り込まれた魔法の基礎の基礎が遺伝するのも確認したし、どのような進化を遂げていくのかは……こいつらの自由だ。
私に反逆するもよし、入ってきた者達と戦うも良し。何をしても構わないから、私を楽しませてくれよ?
虫と、蝙蝠と、苔と、影の魔物が大半を占める一階の生態系の調整を終えた。主に虫と苔と蝙蝠で組まれ、影の魔物は食われる魔物の瘴気のようなものから生まれ、そしてそれを餌とするためにあまり考えていない。
当然ただの植物もあるため、それを食べて初めのうちは虫の魔物は育つ。
後に虫は蝙蝠に食われ、蝙蝠は寿命で死ぬ。そうすれば苔の魔物が栄養として食い、分裂して増える。
そして増えた苔の魔物は虫の魔物に食われて………と、ほぼ無限にループする。
生態系が崩れる時は、何らかの原因で突然変異種が現れるか、あるいは外からの侵略者だな。
まあ、放っておけば勝手に平均レベルは上がる。物によっては既に700を突破しているものもいる。
とりあえず一階は放置して、地下一階に進もうか。
一階が自然洞窟だったのに対して、地下一階は人工洞窟をイメージした作りになっている。
鍾乳石等は無く、道も平坦なものが続いている。
そこに居るのは主にゴーレム。正確には自動人形といった風なものだ。
泥や岩、時々金属でも作られているそれは、魔力の結晶を核にした自動人形。自然に生まれるには、そこそこ大きめの魔力溜まりが必要なのだが……私の魔力は大昔ですら垂れ流すだけで島丸々一つに自生する植物すべてを結晶化させてしまう程度にはあるので、そこから送り込んで作っている。
この場に要れば、ゴーレム達は勝手に増えたり合体したり、様々に形を変えていく。
非生命体なので魔力を送ってさえいれば面倒を見る必要は無いという、実に楽な作りをしている。
なお、ボスは鈍重極まりないが、物理攻撃力と魔法・物理防御力は気違い染みている(なんと、プレイヤーの最大が四桁最終、ボスなどでも6桁になるのはなかなかいないのだが、そんな中で7桁中盤。体力も10桁に届く)ゴーレム。倒すのに時間はかかるだろうが、完全に物理攻撃のみの個体なので失敗しなければ余裕で倒せるだろう。
まあ、大概1しかダメージが入らないあるいはノーダメージの相手の10桁に届く体力を削りきるのは苦労するだろう。
まあ、挑戦するなら是非頑張ってほしい。
あと、これは余談だが……体力が1/10まで減るとゴーレム達のステータスの攻撃力の部分が倍になるから気を付けてほしい。
《それってただの苛めじゃないカー》
安心しろ、攻撃力の部分だけだ。それ以外のところは変わらんし、そもそも一撃受けたら終わりだというのも変わらん。
攻撃力が倍になったとしても、結果として出るのは多少攻撃の有効範囲が広がる程度だ。
地震のような衝撃で足止めしたり、攻撃の余波を使った攻撃を繰り出したりもするかもしれんが……私の知ったことではない。
それに、地下深くに存在させることにした二体のサイドチェストのミスリルゴーレムと違って勝つことができる。だからこれは苛めでもなんでもない。ただの試練だ。
ソロプレイではまず確実にクリアできないが、パーティを一時的にでも組めば勝てるだろう。二人パーティだったとして、片方が戦っている間はもう片方が休み、もう片方が戦っている間は片方が休む。そんな風にすれば、負けることは無いはずだ。鈍重だからな。
これで負けたらそれまでだ。そいつに運が無かったか、実力がなかったとして諦めるべきだな。
レベル的には1600。防御系と物理攻撃にのみ成長の幅を振った、正直化け物以外の何でもないだろうとプレイヤー達に言われてしまいそうな魔物だ。
《自覚あったんダー?》
自覚はあっても辞めないがな。
一階・地下一階は整備完了。
プレイヤーのレベルキャップは外されていくものです。