異世界編 5-3
フルカネルリだ。スライムの研究を主体にしていた筈が、なぜかゴーレムなどの非生命体型の魔物の数が増えてしまった。
彫刻はあまり上手くなかったのだが、何度かやっている間にかなり上手くなった。物によっては凄まじい量の筋肉を見せつけるようなサイドチェストから突然動いて
『俺の二の腕が真っ赤に燃える!』
『脂肪を燃やせと轟き叫ぶ!』
と叫んでから炎を纏った強烈なラリアートを首の前後から挟み込むようにして打ってくる二体のミスリルゴーレムも居るしな。
《……ネタかナー?》
『……ネタよねぇ……』
ああ、これはネタだ。それ以外には嫌がらせ用の罠程度の効果しかない。
なお、このミスリルゴーレムは基本的に罠くらいしか使い道がない。サイドチェストの状態から突然叫んで二の腕の筋肉を隆起させ、そのまま突撃して首を刈るまではともかく、その後は何もせずにゆっくりと元居た台座に戻って行ってサイドチェストのポーズを取り直す。それだけだ。
しかもこれは扱い的には最早破壊不能オブシェクトに近い。この世界では頑張れば壊せるだろうが、片方倒すのに凄まじく時間がかかる上に攻撃された瞬間に突然
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!』
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!』
と、攻撃してきた相手を中心に置いたまま殴り合いを始めるからだ。
さらに、傷や欠損は自動で修復され、そもそもの防御性能が高すぎるほどに高い。無機物ゆえに幻術や毒などは聞かず、炎なども殆ど効果なし。ミスリルゴーレムの名前の通りに完全にミスリルだけでできているので、魔法耐性も尋常ではない。
欠片まで粉々に砕いたとしても二時間後には修復しているため、壊しても壊してもあまり意味がない。
だから単発の罠として一度発動したら、一度出ていくまでは二度と同じ人物には発動しないようにしてあるのだから。軌道も廊下の両端から廊下の中心までで止まり、何があろうとその軌道は変わらない。
明らかに終わるのを一歩下がって待っていようが、その間に決め台詞の間に通り抜けていても変わらずだ。
《……それでも挑んでくる相手は多そうだネー?》
仲間想いの馬鹿なら実によく引っ掛かるだろうな。そんな馬鹿は嫌いではないが、相手と自分の力の差がわからないような奴なら仲間には欲しくないな。
……そうだ、一応ミスリルゴーレムにはあの二つの行動以外にも行動権を持たせておくか。まともに動けなければ初見殺し以外にはただの的にしかならんしな。
《あんな酷い的があるかってノー》
『……あるじゃないのぉ……ほら、そこにぃ……♪』
《そう言う時にはその物は含まないんだヨー!》
ならば私が新しく作ろう。今度は全身刃に覆われた翼竜の像でいいな?
《乗っちゃっター!? フルカネルリが乗っちゃったヨー!? スライム作りはどうするのサー!?》
「ミスリルスライムができたぞ」
「マグマスライムができたぞ」
「グレイシアスライムができたぞ」
「ライトニングスライムができたぞ」
「バイク型ヒャッハースライムライダーができたぞ」
「シャイニングスライムができたぞ」
「オーシャンスライムができたぞ」
「カオススライムができたぞ」
「コスモスライムができたぞ」
「火焔放射機装備型ヒャッハースライムができたぞ」
「マジカルスライムができたぞ」
「アシッドスライムができたぞ」
「ショゴスライムができたぞ」
「ブラッドスライムができたぞ」
「マインドスライムができたぞ」
《なんか色々変なのが混ざってルー!? ネタ率高いヨー!?》
安心しろ。ちゃんと場所は分散するからな。
だが、ヒャッハースライムは荒野だ。それ以外には認めない。
《それについては文句の余地もないけどなんだかこの世界に来て突然はっちゃけすぎだよネー!?》
異世界に自重は持ち込まない。それは数少ない私のポリシーでもある。
故に私は遠慮も自重もしないで作りたいものを作るのだ。
《ツッコミたイー!三千世界の鴉を殺し尽くすくらいの勢いで激しくツッコミたイー!》
それは困る。カラスが居なくなっては山岳地帯に棲息させる予定のブレイドレイブンの作成に支障が出るではないか。確かにあまり強くはないが、それでも生態系の中での大切なピースの一つだ。
その他にも、鴉を素体にしたり、鴉の一部を持つ魔物はそれなりに多く作る予定だ。グリフォンは鷹の頭と決まっているが。例えばハーピー等の『鳥』であることが大切な魔物は色々と種類を作ってしまうべきだ。
その方が色々なデータがとれるしな。
……そうだ、内側からも外壁を強化しなければ。外からの攻撃には強いが内側からの攻撃には弱い迷宮など、迷宮とは呼べないからな。
フルカネルリは異世界で自重しない。