異世界編 5-1
フルカネルリだ。トンネルを抜けたその先は異世界だったが、振り返ってみれば通ってきたトンネルは思いきり洞窟だったな。
しかも、その洞窟は見覚えのない鍾乳洞で、私が出ようとしていた時には明らかに存在していなかった石荀や石柱が立ち並んでいた。
……出口に直接転移したのか、それともゲートかなにかで繋がっていたのが切れたのか、はたまた幻術か……。
少し目を細めて解析する。目から入ってくる全体の情報量を抑え、意識を向けたものだけに集中するという点では目を細めることには十分な意味がある。
…………ふむ。恐らく転移だな。幻術だった場合は掛けたのがナイアだろうからわからないが、ナイアはそんなものを使い続けるほど一つの事に興味を示すような存在では………ああ、私の例があったな。では保留だ。
《正解は『元はフルカネルリが最初に見たような平らな洞窟だったけどフルカネルリが通り抜けてすぐに僕の力で改造した』でしター》
そうか。それはまた随分と面倒なことをしたな。
……それでは、ちょうどいいしここを私の拠点としよう。どの世界でも拠点作りと言うものは大切だ。
それに、イカレ錬金術師らしく自分のできることを確かめてみたいしな。
まずは、割とまともなダンジョン作りから行こうか。今まで私が作ったダンジョンと言えば、大陸ひとつとその中心の島を使った巨大な物と、少しだけ位相をずらした異界まるごと。ダンジョンと言えるのは精々この二つだけだ。
だから今回は、よくある洞窟を基本としたダンジョンを作ってみようと思う。魔物も手作りでな。
とりあえず薬品を混ぜ合わせてスライムを作ったり、石や岩と機械を組み合わせてゴーレムを作ってみたり……科学的な魔物を主体にばらまいてみるとしよう。
………いや待て、一階には自然的な魔物を用意しておこう。自然的な魔物を多少改造することになるだろうが、機械部品等を混ぜない遺伝子操作や生体改造のみの魔物を。
そして地下二階には主に自然に存在する物質的な魔物。簡単に言えば機械の入っていないゴーレムや泥人形等を中心に……。
……空間を歪ませて中身を広げよう。外側から掘られたりしないように結界も張って、最下層には私の研究所を置く。実験場と廃棄場も必要だが、それは転移型のトラップとして独立させてやろう。
引っ掛かったら帰る方法は……その中に居る全ての魔物を倒せば転移術式が作動して入り口まで戻れるようにしておくか。
……うまくいけば、死にかけの魔物一匹を殺すだけで戻れるのだ。まったく、私は本当にお人好しだな。この甘さでいつか足元を掬われなければいいのだが。
《まずないから安心しときなヨー》
そうか。まあ、可能性がほんの少しでもあるのなら用心はしておくがな。
私は臆病者なのだ。
そんなわけでこれからしばらく研究・改造・創造パート
これから矛盾が増えていくかもしれません。流してやってください。