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フルカネルリだ。スキルのないゲーム世界とはどんなものなのかと聞いてみたが、ほぼ完全にプレイヤースキルに依存するようなシステムのゲームの世界であるらしい。
つまり、スキルがあったから技を使えたのではなく、それをすることができたからスキルに表されていた私には何ら変わりないと言う訳だな。
《つまるところその通りだネー。フルカネルリには全く関係ない話だヨー》
『……私にはぁ……ちょっと関係あるけどねぇ……?』
そうか。亡霊にもスキルはつくのか。
どのような関係があるのか、後で教えてくれないか? 私の知る限り、『冥界の冷気』、『魂の収奪』、『壁抜け』……まあ、亡霊や幽霊特有のスキルがあったはずだが。
『……いいわよぉ……ふふふふ………♪』
よし。アザギがおよそなにができるかはわかっているが、本人に自覚があるかないかで記録やら何やらを変える必要があるから助かるな。
六月には行事が少ない。基準が日本のこの町では、六月の行事と言えばクトが時々突拍子もなく妙な思い付きを実行してしまう緊急行事や町のボウリング場での大会、そして私と父の行きつけの店での大食い大会(ほぼ毎回参戦している)くらいだ。
そんなわけで、今日はボウリングに精を出すとしよう。得意ではないがけして苦手ではない。白兎は割と得意らしいがな。
今も、白兎は8ポンドのボールを構えてレーンの前に立っている。
ゆっくりと動きだし、そしてボールを体の後ろから前へ。
鈍い音をたてながら転がるボールは、見事にピンをすべて倒して見せた。これで白兎の得点は、六投目にして180だ。
「やったぁ!ストライクっ!」
「うむ、よくやったな白兎。頭を撫でてやろう」
「わーい!」
ぴょんぴょんと全身で喜びを表す白兎を呼び、よしよしと頭を撫でる。私に撫でられている白兎はと言うと、目尻を下げて嬉しそうに笑っている。
まったく、白兎は元気だな。それは実にいいことだ。
さて、それでは私も投げるとしようか。解析はできないが観察はできるので、先に投げた白兎の動きを逐一観察してシミュレートし、そして身長や四肢の長さの違いを計算に入れて投げる。
そのため白兎のようにストライクを連発することはないが、様々な回転をかけたり立ち位置を変えたりして狙った場所に放り込んでやっている。
簡単に言えば、あえて難しい形を作ってはそれを倒すというゲームを一人でやっていた。
お陰で私の点数はけして高くないが、コントロールはそこそこ良くなった。
今では曲げる位置や方向、角度、速度も大体狙い通りになるようになっている。
やろうとすればストライクを狙い続けることもできるだろうが、まだ完璧とは言えないのでこのゲームは練習に費やすつもりだ。
「……瑠璃にも苦手なことってあるんだね」
「私は人間だぞ? 得意な事だけでなく、苦手な事があってもおかしくなかろう」
「……なんだか納得できない………」
はて、どうしてだろうな? 事実私には致命的なまでに苦手なものがあると言うのに。
簡単に言えば、女装だが。
《最近出てなかったけドー……そういえばそんなのもあったネー》
ああ。実に忌々しいことにな。
……さて、それではそろそろ実験再開といこう。後ろで白兎が待っている。
結果として、ボールの操作はほぼ完璧。魔力を使えばさらに細かい操作をすることもできるようになった。
まあ、流石にこういった遊びに魔力を使うのは大人気ないので使ってはいないが、戦闘技術というのも平和に使おうとすれば使えるものだな。
《大体最先端の技術って言うのは戦場で生まれる物だしネー》
『……そうなのよねぇ……勿体無いわよねぇ………』
そうだな。あらゆる使い方をしてこそその技術は発展していくのだからな。
「なあ白兎。技術は色々な方面で使えるものな」
「そうだね。平和利用っていい言葉だよね。なんの話か知らないけど」
聞こえないように話をしているのだから、当然と言えば当然か。
フルカネルリ、久方ぶりに平和に遊ぶ。