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フルカネルリだ。私の家にゲームの筐体が届いた。どうやら母が応募していて、そしてこの町の住民には優先的に配られるようになっていたようだ。
なお、それは外の応募とは関係無く、町の中で希望した者には全員にテスター資格が与えられるらしい。
ハスター達が何を考えているのかは知らないが、母の暇潰しになるのならば構うまい。
……安全性のチェックは執拗を通り過ぎて執念深く、重箱の隅をつつくように行ってきたが……もう一度やっておくか。私はこれでも心配性なのでな。
《執念深いどころか妄執じみてるほどだけどネー》
『……心配性はぁ……限度を知っていればぁ……むしろいいことよぉ……?』
自分に無理が出ない程度、と言うことだな。そのくらいは理解しているし、実行しているつもりなのだがな。
前にも言ったと思うが、私はどちらかと言えば臆病な方なのだよ。
学校もVRMMORPGのことで持ちきりだった。
白兎も当たったとはしゃいでいて、なんというか微笑ましいものを見ているような気になってくる。
私の家にも届いたかと聞かれ、母に届いたと返しておいた。
私もやろうと誘われたのだが………市販の性能の低いもので私の脳波を完全に読み取ろうとしたら、ラグが酷すぎるために遠慮しておくことにする。
自作のオーバーテクノロジーに未知の素材まで満載のハイスペックを通り越して廃スペックにまでなってしまった筐体ならばある程度は動けるようになるが、あれは使用するとエネルギーを多量に食うから使いづらい。
……未来技術で相当燃費を良くしていても、単1乾電池五本で二ヶ月程度しか動かないのだから困ったものだ。
ちなみに、市場で売られているものは、未来技術で燃費をよくすると単1乾電池五本で半年は動く。
……未来技術は使っていないし、コンセント式だから関係無いが。
《廃スペック版の燃費良すぎるよネー!? 驚きの燃費の良さだヨー!》
単1乾電池は非常用で、突然停電が起きてもいきなり体に戻されるようなことを無くしているだけなのだがな。普段はこちらもコンセントから電気を貰って動いている。
……それと、ハスターの会社のゲームサーバーは、現在の私に出来る最高傑作だ。まさか縦二メートル横二メートル奥行き一ミリ未満のスーパーコンピューターを、見た目が立方体になるほど重ねているとは思うまい。
一枚が128ヘプタバイトまで処理することができるそれを使えば、あの世界を丸々再現することも不可能ではない。
なお、私の研究所は魔王を倒した後の隠しステージとなっている。
外周で犯罪行為を行うと自動で所持金を1/10まで減らされ、大陸の外に追放される上に死亡扱いになってレベルが二割下がる。
内側の私の研究所ならば普通に暴れられるが、そこに行くまでの湖で魔王より強いモブが普通に湧き、上陸すると魔王を鼻で笑って殲滅できる程度に強いNPCが現れ(名前はディオ、ナギ、ウルシフィ)、ディオを倒そうとするとハヴィラックが現れて殲滅してくる上に、モンスターの最弱レベルがプレイヤーの限界レベルの50倍以上。高いやつだと2000倍以上と言う鬼畜仕様。
勿論ボスはフルリで、まず勝てない。勝つ方法は………今のところ無し。
世界観は私の行ったスキル&レベル制ゲーム世界だが、そこにディオとウルシフィの居た世界が一部混ざったような感じだ。
……そのお陰で難易度が鬼畜を通り越しているがな。私でもクリアは諦めた。
《それ人間じゃクリアできないよネー!? 絶対無理だよネー!?》
そうかもしれないが、違うかもしれない。
まあ、レベルキャップは少しずつ外していく予定だから……完全クリアもする者が現れるかもしれんぞ?
わざわざゲーム内外の速度差を6倍程度まで上げてあるのだから、そのくらいはできてもおかしくない。
その代わりに毎日2時間までしかログインできないようにしてあるが、12時間あれば十分だろう。
……さて、私は私でキャラクターを作るか。キャラクターではなくアバターと言うのだったか?
まあ、私がそれと理解できれば呼び名などなんでも構わないだろう。
私のアバターは……男にしておくか。いくらアバターでも、私がスカートはありえない。女性用のパンツルックも各種装備に取り揃えているし、ネタとして上半身装備に絆創膏二枚セットを作ってもあるが…………馬鹿以外は早々使うことはないだろう。防御力が強制的に一で固定される効果が着き、さらにモンスターとのエンカウント率がすさまじく上昇し、なにもしないでもヘイト値が双剣使いの最強連続攻撃並みの速度で増えていくからな。
……下半身にも絆創膏装備はあるが、絆創膏を装備するくらいならインナーの方がまだ防御力が高いため………まず使われないだろう。
なお、装備の絆創膏を得るには相当面倒な事をしなければならないようにしてある。クリアできないことは無いだろうが、連続で出てくる22のクエストによってかなり篩にかけられるだろう。
………初めのクエストの依頼主は、始まりの町の隠しダンジョン地下100階に居るしな。そこまで行くのにも一苦労だろう。
では、私のゲームを楽しんでくれたまえ。
邪神がみんな趣味に力を入れすぎた結果。