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フルカネルリだ。去年の二の舞にはならないように白兎達にはさっさと宿題をやらせ、それからのんびりと遊んでいる。
私の研究は一部は遊びだが、遊びこそ全力でやるべきだと考えている私は今も全力を尽くしている。
バーチャルリアリティーのゲームを現代の技術力で作るのは難しかったが……漸く試作品を完成させた。これは恐らく町の外で売りに出せば大流行することだろう。
まあ、そのためには安全性を徹底的に高め、ソフトなどを作り、ある程度安く買えるようにならなければ難しい。
ある程度解像度を落とせばできないこともないが、それはあまりやりたくない。完璧を求めるのが科学者の仕事だからな。
《科学者の仕事って言うカー……ロマンでショー?》
そうとも言うな。出来る限り高性能に。そして事故を出来る限り少なくし、いつでも誰にでも同じ性能を発揮できるようにする。それが私の願いだ。
これを売りものにするならそこにコストを考えなければならないが………鋭意努力中だ。
『……ふふふ……♪ ……頑張ってねぇ………?』
うむ。頑張らせてもらおう。
八月と言えば海。と言うが、私は海では泳がないタイプだ。別に泳げないわけではなく、ただ単に水着が嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで仕方がないだけだが。
まあ、どちらにしろ泳がないことに変わりは無いわけだが、今はそんなことは関係無い。なぜなら私達は今、海ではなく山に来ているからだ。
《確かにこれっぽっちも関係無いネー》
『……海と山はぁ……対立していることが多いものねぇ………』
時に海と山のどちらも司る神と言うのも存在するが、神話やそれに出てくる神の絶対量からすると凄まじく少ないからな。およそそういった見解を持っていても問題はあるまい。
そういうわけで、山の中でキャンプの真っ最中。たまにはこんなのもいいだろうと父と母が行って行くことになったのだが、二人とももしかしたら私よりも楽しんでいるかもしれない。
バーベキューの準備やら飯盒でご飯を炊く準備だとかを嬉々として行っているように見える。
……やはり、私の両親は所謂バカップルと言われるタイプの夫婦であるようだな。仲睦まじいことは結構だが、流石に15も年の離れた弟あるいは妹はいらんぞ。相手をするのに困る。
子育てには慣れているが、この体では疲れるからな。なにせまだ15に満たない小娘だ。ずっと子供の面倒を見続けるには体力が足りんよ。
実際には大半の面倒を母が見ることになるのだろうが……母はあれで忙しい人間だからな。私が面倒を見てやることもあるだろう。
……まあ、なんにしろ私は父と母が睦んでいるのを邪魔する気は無いし、実際子を作るのは父と母の自由だ。産むなら産むで元気な子を産んでくれると嬉しいがな。
《実験にでも使うノー?》
お前は私をなんだと思っているんだ。流石にこの世界に異世界の業を持ち込むつもりはない。この世界は私にとっての休息地でなければならないのだからな。
故に、もしも私に弟あるいは妹ができたとしても、薬の効能を確かめるために一服盛ったり、サンプルをとるためにクローンを作ったり、作ったクローンを解剖して新薬を使って効能実験などはしない。
やるとすれば、精々効能が確認され、さらに危険性が皆無あるいは非常に低いものくらいしか使わない。
《使うノー!?》
『……もしものぉ……話よぉ………?』
ああ。ナイアの早とちりだな。使わないとも。
……それ以前に、本当に私に弟妹ができると確定したわけではないがな。できるならできるで構わないし、できないならできないでそれもまた良し。
変わらぬ日常を楽しめると言うのも、人間としては幸せなことなのだろうな。
……科学者としては失格かもしれないが。
《フルカネルリが科学者失格なんだったラー、現状の殆どの科学者は科学者として失格以前に問題外になっちゃうと思うヨー?》
そうか。
フルカネルリ、もしかしたらの未来を想像。