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フルカネルリだ。私のステータスが非情(ある意味誤字ではない)に高いのを確認し、それから私はどうするべきかを一応考えた。

今回は聖杯戦争という明らかな殺し合いの舞台にお邪魔しなければならないわけだし、いつもよりさらに気を引き締めて行かなければならない。

しかし、私は昔からあの世界でやりたいことがあったのだ。それができるかもしれないというのは、私にとっては大きなプラスだ。


その内容とは、サーヴァントの使う宝具について。いったい宝具とは何がどうして逸話が形になっているのか。正直に言うと、その事を考えすぎて一時不眠症になりかけたほどだ。

だが、それがわかれば私の研究はさらに進むことになるだろう。そのためにもできるだけ多くの宝具を見ておきたいものだ。


《その願いは結構簡単に叶うと思うヨー》


そうか。それは実に嬉しい事だな。嬉しすぎて涙が出てしまいそうだ。




六月末の私の誕生日までは暫くの時間がある。それまで私はこの世界でのんびりと暮らしていく訳だが、いつもならばどうということのないその事も今の私には楽しすぎる。

それこそ、あまりに楽しすぎて気味が悪いほどに楽しくて仕方がない。


なぜか頭が異様なほど回るし、視界が妙に開けて見える。いつもは見えないような風の流れや水分の移動、拍動と共に血液の流動する音、あらゆるものが私にその姿を見せつけてきている。

所々で自然とは僅かに外れた風が吹いたりしているが、それは恐らく邪神達が原因だろう。証拠になるかはわからないが、その風の出元は生物実験室。つまりはハスターの城だし。


奇妙なほどに歪んでいて、歪んでいることを世界が受け入れ、統合性がとれてしまっている。私ではこう上手くはいかない。

私では恐らく目に入ったもの全てを悉く壊さなければ世界を屈伏させることはできないだろうし、その方法で屈伏させたとしたらその世界の寿命はごく僅かとなってしまうことは間違いない。

こんな高度な技術を当然のように使っていたことに、私は今まで全く気づかなかった。


……もしかしたら、私がこの世界が帰る場所だと思っている理由にこの事があったりするのではないか?

歪みを受け入れ、正しい流れと歪んだ流れを同時に流しているこの世界が心地よいから、私はこの世界を拠点としているのかもしれない。


…………まあ、そうであろうが違っていようが構いはしない。私の拠点はこの世界だし、帰ってくる場所はこの場所だ。その事に変わりはない。


「……なんだか、ご機嫌だね?」

「ん? ああ、まあな」


にこにこと笑っている白兎の頭を撫でる。最近はあまりこうして頭を撫でてやることが無かったから、なんとなく懐かしい気分になった。

目を細める白兎も久々に見た。久々と言っても精々数ヶ月だが、この世界の出来事は密度が高いから久し振りだという気分になりやすいために私は久しいと言う思いを持ってしまっている。

それは一切構わないが………まあ、研究の邪魔にはなっていないし、私の行動を阻害しているわけでもないし、問題無いか。


この世界とは暫くの間別れるのだし、今のうちに堪能しておこう。

白兎の頭を撫でながら、私はのんびりとそんなことを考えた。


《楽しめる時に楽しんどいた方がいいヨー》


そうだな。その点については完全に同意するよ。





  フルカネルリの平穏。




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