3-18
フルカネルリだ。桜が散る季節になり、私達は二年生になった。そこで、今年のスケジュールを配られたスケジュール表に照らし合わせてみよう。
まず今月に始業式と入学式。後輩ができるのだが、私のように部活にあまり関わりの無い人間には後輩の有無は大した差異にはならない。
細かいものは省いていくと、次の予定のある月は9月の工場見学。何故かは知らないが、クトの知り合いの所有している正露丸工場を見学するらしい。
確実に凄まじい匂いがすると思われるので、私は当日に完全防備で行く予定だ。
……風呂を借りることができるのかはわからないが、近くに銭湯があるらしいのでそっちを使うことになりそうだ。
ハロウィンパーティーやクリスマスパーティー、体育祭に文化祭等の全校行事は省くとして、なぜか二月に修学旅行がある。場所はハワイだそうだ。
………何故見学する工場が正露丸工場なんだ? もう少しまともなところもあるだろう。
それに正露丸は医薬品だ。よく知らない中学生を中に入れて、妙な菌やウイルスが混じったらどうするつもりなんだ?
《そのためのクトゥグアだヨー。燃やすものを指定して燃やしてくれるから安心サー》
クトゥグア。どうやらお前は便利な消毒剤扱いされているようだが……?
《いいんだよそれで。こっちがこの世界に邪魔してる身なんだし、少しくらいは力を使っても》
そうか。まあ、お前がいいと言うなら構わないが……力の付加は避けるべきだと一応言っておこう。クトゥグアはたまに凄まじく抜けるからな。
《うるせえ》
《でもほんとのことだロー》
《うるせえ》
やれやれ。仲のいいことだ。険悪であるよりはずっといいが、あまりそうしていると妙な噂が立つぞ。
《例えばどんなノー?》
…………ハスターが私に見せてくれたのだが、ナイアとクトゥグアが出てくる……所謂『薄い本』だ。
その中ではクトゥグアは誘い受けで、ナイアは鬼畜攻めだそうだ。
《…………描いたの誰?》
さてな? 私はただ見せてもらっただけだ。ハスターに聞いてくれ。
《……わかったヨー………行くよクトゥグア。ハスターとO☆HA☆NA☆SHIするために》
《ああ、そうだな》
おお怖い。ナイアとクトゥグアが怒っているせいで圧迫間が凄まじい。全身が軋むようだ。
……ちなみに、ナイアが女になって鬼畜なクトゥグアに強姦紛いの事をされているものや、逆に女のナイアにクトゥグアが苛められていると言う物もあったな。
《……………………あははははははっ!こんな気分になるのって、学生の頃にイタクァに大切にしてたオルガン壊された時以来かなぁ?あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!》
《コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス………………》
おお怖い。あまりの恐怖にナイアとクトゥグアが禍津神に見えてしまう。
実際はただの邪神であり、災禍を招くわけでは無いのだが……。
《……それじゃあ、フルカネルリ? ボク達はちょっと用事ができちゃったから行ってくるよ?》
《ちゃんと工場見学には間に合わせるから安心しとけ》
そのあたりは一切心配していない。クトゥグアはクトの事が大好きで、できることなら一時も目を離したくないほどのシスコンだからな。クトに頼まれた仕事を放り出すとは思えん。
そしてナイアはナイアで怒りはすぐに発散してしまうタイプだからな。持続時間はそこまで長くないかわりに、やることがいちいちえげつないだけだ。
戻ってくるのにそこまで時間がかかるとは思えないし、戻ってくる気がないと言うのも無いだろう。ならばすぐに二人(二柱?)は戻ってくるだろう。遅くなったとしても、工場見学には間に合わせる筈だ。
……まあ、とりあえず………いってらっしゃい。
《行ってくるよ》
《土産はそこそこ期待しといていいぞ》
土産があるのか。驚きだ。
まあ、そこそこ期待していていいと言われたし、そこそこ期待しておくとするか。
キレた二柱といつも通りのフルカネルリ。