表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
287/327

3-17

 

フルカネルリだ。花見と言えば酒と団子が邪神達の中では常識らしい。

まあ、それも昔の人間との付き合いで抱いた物だろうが、邪神らしいと言えば邪神らしい。

私の知る限りでは、この邪神達は随分と人間臭い。ナイアやクトやハスターから聞いた昔の話の中でもそれは顕著で、私はそれなりに笑わせてもらっている。


だからと言うわけではないが、私が今こうして団子の粉を捏ね回し、あんこを包んでから胡麻をまぶして揚げたり醤油ベースのタレを塗って焼いたり、何故か水の代わりに酒で捏ねた団子をみたらしにしたり、もはや団子ではなく草餅や桜餅と言った方が正確だろうと思えるような団子を軽く茹でたりしているのもおかしくはない。


《ボクが言うのもあれだけドー。おかしいって思いなヨー》


別におかしいことはない。前に私が作った豆料理はそこそこ人気だったから、こうして呼ばれても変ではなかろう。

私よりずっと料理が上手い者もこの町にはいるだろうが、一番呼びやすいのは私だろうしな。

邪神達の正体を知っていて、それでもあまり態度が変わらない人間と言うのもそこそこ珍しいだろうし。

少なくとも私が周ってきた世界では、基本的に力ある少数は排斥される側だったし、排斥できなければ服従するのが普通だった。


私はそのどちらでもないから、珍しいのだろうさ。


《……まアー、間違ってはいないネー》


そうだろう。

……お、次の胡麻団子が揚がったぞ。誰か持って行って


「みんナー。フルカネルリの胡麻団子の追加だヨー!」

「イヤッホォォウ!」

「いただきまーす!」


……そこまで喜んでもらえると、製作者冥利につきると言うものだ。

私は作りたての胡麻団子を一つつまみ上げ、口の中に放り込んだ。


……さて、それじゃあ私はこの欠食邪神達がそこそこ満足するまで団子を作り続ける作業に戻るとしようか。今さら桜の花を見ても、ためになるものはあまりに少ないだろうからな。

それならば、こうして団子(艾団子、桜団子、白団子の三色団子)を作っている方がまだためになる。

……主にスキル・レベル制ゲーム世界からいまだに引き継がれている料理スキルの上昇に。


………この世界に戻ったら見れなくなるものだとばかり思っていたが、どうやらそんなことはなかったらしい。やはり研究に固定概念を持つことはよくないな。見えるものまで見えなくなってしまう。

頭は柔らかく、思考を止めず、視界は広く、視点も一所に固定しない。それが研究を進歩させるこつだと私は思う。


「おーいフルカネルリー。もう無くなっちゃったヨー」

「少し待て!」


……やれやれ。私にどうしろと言うんだ。中学生の体でできる限界速……というわけではないが、かなりの速度で作っているのだが?

これ以上早くするとなると、明日は全身筋肉痛を覚悟しなければならないから嫌なんだが……。

もしくは封印が緩くなればできないことも無いと思うが………。


「ナイアさーん。フルカネルリちゃんの封印ちょっと解きますねー!」

「好きにしちゃっていいヨー!全部無くすとかそういうのはやめてあげてネー?」


急速に体が軽くなって行く。どうやら本当に封印を解いたらしい。

そしてファンファーレが私の頭の中で響き、そして更新された情報が脳裏に現れた。


特殊スキル【全ての微才】が進化。【全ての小才】になりました。

この効果により、あらゆるスキルをLv1で取得します。

Lv1のスキルは全て省略されますが、取得は成されています。


          】


…………スキルの進化? なんだこれは。


……まあ、花見の後にでもナイアに聞いてみれば良いだろう。

今は団子作りで忙しい。魔法を使えるからかなり時間短縮になったが、邪神達の団子の消費量がおかしくなってしまっている。


「追加ができたぞ!」

「ィヤッホーイ!」


まったく。まるで子供だな。






歓迎すべき事態が起きた事に気が付いたのは、その当人であるフルカネルリに相談されてからのことだった。

その内容とは、ボクがフルカネルリに与えた力の進化。あらゆる事象にほんの僅かだけ適正を与える【全ての微才】が、あらゆる事象にほんの僅かだけ才能を与える【全ての小才】に変わった。

たったそれだけのことだけど、それはボク達にとってはすさまじい出来事だったりする。


これでもボクの神格はかなり高い。そんなボクが渡した力も、そこらの木っ端神が扱えるような能力じゃない。完全に扱いきれるようになるには、中の上級程度の神くらいの操作力が必要だったりする。勿論、力の操作力に長けているのがその中級神の前提条件だ。

そしてボクが渡した力を進化させるには、その力を完全に掌握する、もしくは自分の中でその力の占める割合を増やすかの二択。本当はもう少しあるんだけど、そっちの方はかなり特殊だからカウントしないでおく。


今回フルカネルリが行ったのは前者。つまり、ボクが渡した全ての力を完全に支配下においているってこと。

自分の力の全てを制御し切るって言うのは、実はそこそこ難しい。大体の場合はちょっと自分の意思からはなれてしまうし、できるようになっても続かないことが多い。

それを無意識でできるようになるってことは、それだけフルカネルリが成長しているってこと。ボクは割と嬉しいヨー。

だってそれは、フルカネルリがボクらに近くなってきたってことだからネー。


フルカネルリは人間から外れることにこれっぽっちも忌避感を抱いてなんか無いけドー、なかなか人間から外れてくれないからネー。


まあ、悪いことじゃないから安心していいヨー。


《そうか》


そうサー。





  順調に外れていくフルカネルリ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ