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3-15

 

フルカネルリだ。年越し蕎麦は美味いが、やはり食べにくい。わざわざ一根麺(丼の麺が全て一本で繋がっている麺のこと)にする意味はあるのだろうか?

ちなみに、蕎麦は蕎麦でも中華蕎麦……つまり、ラーメンだ。ただし麺の色は夕焼けのような鮮やかな赤で、スープの色は浅黄色という視覚的には大変よろしくないラーメンだが。


………味はいい。味はいいのに……なぜ母はこういった見た目がアレな物を作ってしまうのか……理解に苦しむ。


《まあまアー。食べられるだけいいじゃないカー》

『……美味しいわよぉ……?』


…………その通りではあるのだが……なにもこういったときに限ってこういう料理を作るのはな……。

……それに、普通に美味いというのがまた納得できん。理不尽だ。


《フルカネルリがそれを言ウー? 異世界でははめを外しすぎて理不尽って言葉にすらおさまらなくなっちゃったフルカネルリがサー?》


私でも理不尽に思うことはある。お前と出会ったときもそうだし、お前のことを深く知っていく度に理不尽だと感じていたさ。

ただ、今では常識としてナイアは理不尽なものだと思っているから、あまり外には出さないで済んでいるだけだ。

それに、私は人間としては理不尽の域に居るのかもしれないが、お前は神の中でも理不尽に近い位置に居るだろうが。


《否定はしなイー》


するしないの前に、できるわけがないものな。事実として理不尽極まりないのだから。




年越しそばを食べ終われば、例年通りの初詣がある。

私はあまり好きではないが、父と母に連れられて毎年行くことになっている。

毎年のように振り袖を薦められるが、丁重に断っておく。


「うう……瑠璃ちゃんの可愛い姿が見れるのはいつになるのかしら……」

「ははは……まあ、いいじゃないか。一度決めると動かないっていうのは、君によく似ているよ」

「そう? どちらかと言うと裕樹さんの方に似ているような………」

「いやいや、哀華に」

「いえいえ、裕樹さんに」


……いったいなんの譲りあいだ。両親に似ているでは駄目なのか?

それに、私の性格は前世のそれとたいして変わらん。似ているとしたら前世の私に似ているというのが正確なところだ。


そんなことを言っても両親に似ていないということではないし、もしかしたらどこかが似ているのかもしれないがな。


《結構似てると思うヨー? 発音のイントネーションとカー、頑固なところとかがサー》


そうか。まあ、似ているからどうだということは無いが、似ていなさすぎるよりはずっといい。

色々と面倒になりそうな事は、先に潰しておくべきだしな。

本当に、私の容姿が日本人らしいもので助かった。


《その辺りはあんまり手は出してないヨー? あんまりやり過ぎるとフルカネルリが言ったみたいに面倒なことになっちゃったりもするからネー》


……すまない。意外と考えられていたことに驚いてしまった。私にとっては凄まじく意外なことで、つい…………な。


《酷いナー。僕だって長生きしてるんだかラー。そのくらいのことは予想つくサー》


……そうだな。悪かった。


《別にいいサー。むしろその方がフルカネルリらしくて好きだナー》


そうか。まあ、何でも構わんが。


……さて、それでは早めに初詣を終わらせてしまおうか。あそこの神社にいても、神がいない状態では大したことが起きるはずがないのだし、さっさと帰ってしまっても問題ないだろう。


「あっ!? 瑠璃ちゃーん!待ってぇー!」


……やれやれ。






ぱん!ぱん!と手を打ち合わせ、フルカネルリが形だけのお参りをする。ここの神は大半をフルカネルリに消し飛ばされ、残った部分の寄せ集めもアザギが食べてしまったのでいないことを知っているからだ。

……その時からアザギが亡霊でありながら神霊でもあるようになったんだけドー、フルカネルリはそれに気付いているのかいないのカー………。


『……気づいてるとぉ……思うわよぉ……?』

「ボクもそう思うヨー」


けれど、フルカネルリの態度はそれ以前と以後を比べても一切変わったところが見付からない。

……それがフルカネルリのいいところでもあるんだけどネー?


誰が相手でも変わらない態度。何をするのかわからないと言う不透明さ。それらがボクたちを強く強く惹き付ける。

普通は一人の人間を相手にこんなに好意を向けることなんてあり得ないけど……なぜかフルカネルリが相手ならそんな気分になってしまう。不思議だネー?





  不思議な不思議なフルカネルリ。



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