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フルカネルリだ。夏休みに入って宿題が出たのは良いが、簡単すぎて単純作業になってしまっているんだが、これはどうするべきだと思う?

《とりあえず終わらせるべきじゃないかナー?》

安心しろ、とっくに終わっている。

《なら安心だネー。ボクの中学の頃の先生ってこういうのにはアバウトなんだけど色々とめちゃくちゃな人でネー……》

いや、ナイアもおそらくその先生とやらも人ではないだろう。

《…………はっ!? そういえばそうだったヨー!》


さて、宿題も終わったことだし、図書館にでも行くとしようか。あそこの図書館はたまに不意打ちでいい本を追加するからな。

《へー、どんな本があるノー?》

そうだな……こんなものがあるぞ。

私はオススメの本を手に取った。

《えーとなになに……『簡単な人造人間の作り方~初級編~』ってこれはなんなのサー!?》

見ての通りの本だが。

ちなみに中級編と上級編もあったぞ。暗号化されて児童書のなかに混ざっていたが。

《これ書いたやつはなに考えてんダー!?》

まったくだな。こんな簡単な暗号にしおって。あの馬鹿弟子が。

《ツッコミどころが激しくずれてる上にフルカネルリの弟子の一人だっター!?》

ああ、この特徴的な筆跡を忘れるわけがない。この、どう頑張ってもUにしか見えないWなど、スプリングコートのやつ以外には狙っても書けはしない。……今の私ならばわからないがな。

《やってみルー?》

やめておこう。これで染み付いたらそれこそ馬鹿だ。

ところで、最近気づいたことがある。

《なになになんなノー?》

うむ。大したことではないのだが、この図書館で本を読んでいるとたまに血まみれな女がその辺りをふらふらと歩き回り、時々本を読んでいる者の後ろからひょいと覗き込んでいるということがあったのだ。

《どう考えても幽霊ダー!?》

そうなのか。幽霊か。

……………ふむ。

《……もしかして、研究したいとか考えてたり……》

 ? ナイアは何を言っているんだ?

当たり前じゃないか。

《まさか過ぎる返答だよそレー!?》

そうか? 私にとっては神だろうが悪魔だろうが幽霊だろうが妖怪だろうが私の知らないものは全て研究対象だ。

《……え、ちょっと待って……それはつまり、…………ボクも?》

してほしいのか? ならば私の全身全霊を持って解析して解剖して改造して改変してナイアの全てを理解できるまで研究しつくしてやるが?

《まっぴらごめんだヨー》

まあ、そうだろうな。安心しろ、神についてはいつか機会があればにしておくさ。

《……ふー、良かっター》

そうか。

さて、ナイアが安心したところで、今日は家に帰るとするか。

《あれ、なんかいつもより早くないかナー?》

ああ。明日が父の誕生日らしいのでな。何か手作りのもので母とお揃いにしても違和感が無いようなものを作るつもりでいるのだ。

《オー、親孝行なフルカネルリだネー》

からかうな。それに大したことではない。前世では足りないものは自分で作ることが多かったのだからこのくらいの事なら簡単だ。

《ちなみに材料ハー?》

父の飲んだビールの缶を削って潰して粉と板にした物だ。つまりアルミだな。

《小学生が考えて手作りするにはレベル高すぎでショー!?》

頭の中身は八十過ぎの爺だがな。

《あ、そういやそうだったネー》

忘れていたのか。まったく。






フルカネルリの作っているペンダントを覗き込む。

沢山のアルミ缶を潰してから削って粉にしたものをどうやってか溶かして一枚の板になっているそれを、フルカネルリは釘の先で細く模様を削り出している。

……よくこんなの作る気になったよネー。

縦4センチ横1.5センチ厚さ二ミリほどの角は削り取られて丸みを帯びているそれを折り曲げないように削るのは小学生には大変なはずなんだけドー………まあ、フルカネルリだし、結構簡単なんだろうネー。

お父さんにあげるそれは、絡まることなく上に向かって伸びている草と、その上で輝いている真ん丸な月が描かれている。

……正直フルカネルリにこんな美的センスがあるとは全く思ってなくて、凄く意外だナー、と思って見てた。

ちなみにお母さんにあげる方は上は太陽で下は大きな木を描くらしいヨー。

まあ、体を壊さない程度に頑張ってネー。



  夜更かしするフルカネルリを見守るナイアの思考より。


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