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3-7

 

フルカネルリだ。遅くなったが、中学校の今年のスケジュールを確認しようと思う。

まあ、一度確認しているのだが、もう一度。


四月には入学式があり、七月には臨海学校。九月に体育祭と十月に文化祭及び音楽祭。そしてなぜかあるハロウィン大会。何故大会かは知らないが、恐らくクトが面白そうだからと決めたのだろう。

十二月にクリスマスパーティーがあり、一月にまた書き初め大会。そして三月に花見と終業式がある。


……十月の周辺に随分と行事が集中しているようだが、これもクトの仕業だろう。


《実はクトちゃんだけのせいじゃないんだけどネー》


ほう、そうだったか。だとするとクトゥグアかハスターが怪しいな。後はクトゥルフが食べ物目的で提案したか……。私の知っている邪神の中ではそのくらいだな。

……大穴でナイアと言う可能性もあるが。


《あっはっはっハー》


図星らしいな。

まあ、面白いことは大歓迎だ。それが未知の物ならばなおのこと良し。

そして邪神の大半は私にとっては未知。素晴らしいな。


まあ、私はそう簡単には死んでやるわけにはいかないので、あまり暴力を振るうことを躊躇わない者と会うのは嬉しくはない。

今まで出会ってきた者達が皆簡単に力を振るうことを良しとしなかったからと言って、これから出会う者達が皆そうだと言う確証はどこにもないのだから。


『……慎重ねぇ……?』

《普通はこのくらい慎重なのは当たり前だと思うんだけドー? どちらかと言うトー、普段のフルカネルリの方が異常なのサー》


そうか。まあ、そうだろうな。一応自覚はある。


……さて、本題に戻ろうか。

今月は七月。さっきのスケジュールから言うと、今月は臨海学校となるわけだ。

つまり私は今、海に来ていると言うことだ。




私は海に入ることなく、ただのんびりと海を眺めていた。解析を使えば、海底の地形やそこに住む生物も確認することができるため、特に困ってはいない。

私の隣には何故かクトゥグアが座っていて、海で遊んでいるクトを見守るように眺めていた。


「……泳がねえのか?」


クトゥグアは私にそう聞いてくるが、私は特に気負うこともなく言葉を返す。


「水着を持ってきていないからな」

「ナイアに頼めば作ってくれるだろ」

「入りたくないからわざと忘れた。作ってもらうわけが無いだろう」


女物の水着など誰が着るものか。ダイバー一式だったらともかく、水着はお断りだ。


「……後ろでナイアが白いの用意してるぞ」

「焼いといてくれ」


そう言うと、私の後ろでなにかが爆発するような音が響き、ナイアの悲鳴が聞こえてきた。


「アー!頑張って作ったのニー!」


そんな物を作るな馬鹿者。私は着ないぞ。


「エー? 似合うと思うヨー?」

「五月蝿い、脂肪吸引装置で全ての脂肪を吸い取られて体の熱を保てなくなって死ね」

「なんかすっごい自業自得な死に方が来ター!?」

「おお、何度聞いてもめんどくさい死に方だな。よくそんないくつも考え付くもんだ」


勝手に考え付いてしまうのだ。仕方ないだろう。

まあ、私が妙な死なせ方を考えてしまうことはどうでもいいとして……水着は着ないし、泳ぐ気もないぞ。


「フルカネルリは水嫌いか?」

「いや、女らしい服が嫌いなだけだ」

「……下着は?」

「アブホース!副教頭が私にセクハラを仕掛けて」

「おいちょっと待てぇぇぇっ!?」

「生徒にセクハラなんて仕掛けてるんじゃないわよこの変態性癖浮気男っ!!」

「ぶべらぶろっ!!?」


クトゥグアはアブホースに凄まじい勢いで蹴り飛ばされてしまった。飛ばされた先は砂浜だったため溺れずに済んだが、相当痛かっただろう。


「フー!フー!……大丈夫?」

「まあ、大丈夫と言えば大丈夫だが」


私はいつも通りの落ち着いた表情で返すが、何故かアブホースに不審な物を見るような目を向けられてしまった。落ち着いてもらおうといつも通りにしたのだが、何か間違ってしまったか?


「……セクハラをされたって言ったけど、どんなセクハラをされたの?」

「どんな下着をつけているのかと聞かれた」

「あ、それほんとだヨー。いつもは嘘ばっかりついてるけドー、これは嘘じゃないって先生に誓ってもいいヨー」

「有罪ね、クトゥグア」


アブホースはニタリと笑い、先程蹴り飛ばしたクトゥグアにロープを巻き付けていった。

そのロープの反対側はモーターボートにくくりつけられていて………。


「ああ、どんな仕置きかわかった」

「簡単にわかる問題だよネー」

「今回はお兄ちゃんが悪いです」


誰一人としてクトゥグアを助けようとはせず、クトゥグアはアブホースの運転するモーターボートに引かれて海面を跳ね回るのだった。


「……あれってキツそうだナー」

「私達には関係の無いことだ。とりあえず、日陰に戻るとしよう」


そうしないと、いつクトが熱中症を起こしてしまうかわかったものではないからな。


「最近は元気になってきたもん!」


目をぐるぐるとさせながら言われても説得力がないし、そもそもそれは私ではなく木だ。


「はーいクトちゃん大人しくこっちこようネー」

「うー……ナイアさんはまた私を子供扱いして!私はもう立派な大人なんですよ!お酒だって飲めるんですから!」

「うんうん、わかってるヨー」


クトはナイアに連れられて、旅館に戻っていってしまった。


……さて、私は海底観察に戻るとしようか。





  言葉の足りないフルカネルリ。




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