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異世界編 4-9

 

ヒーローズ。それは年々悪辣さを増して行く犯罪組織や凶悪犯に対抗するために政府が作り上げた、魔法だけでなく軍事や戦闘術、捕縛術に長けたエリート達の総称。子供の理想の職業の一つだったりもする。

一応、僕もそれを目指しているのだけれど、その道程は長く険しい。

特に僕は細かい魔法が使えないから、まずはそこからできるようにならないといけないし。


まあ、頑張ろう。頑張ればきっと上手くなれるから。


ちなみに、魔法学校の卒業生の一番人気の職業は警察の魔法犯罪課だったりする。自分の能力を加味した危険と給料を天秤にかけると、大抵はそこが一番割のいい仕事場なんだとか。

けれど、実際にはヒーローズは本当に一握りのエリートにしかなれない職業だから、諦めているというだけの話かもしれないけど。




魔法学校と言っても魔法ばかりを学ぶわけではなく、数学や国語などの一般教養も習う。

ただし、魔法を使って記憶したり、ノートを取ったりするのは合法だし、テストの時に上手くやればカンニングも合法だったりする。魔法学校万歳。

もちろんバレると点は引かれるし、あまりにもあからさまにやっていたりすると退場させられることもあるらしいけど、実力に魔法の腕や狡賢さも含めて考えるこの学校のことは嫌いじゃない。現実を見ていて、むしろ好きだとも言える。


浩二はこのシステムを利用して、鞄の中の教科書の中身を必要に応じて確認することで今まで落第や赤点だけは免れている。もちろん僕も同じように確認しながらやっているし、美保も他の人も似たり寄ったりだ。


まあ、こんな話をしておいてなんだけど、別に今日がテストなんていうことはない。今日あるのはテストではなく、現役ヒーローズ日本支部の一員である青柳あおやぎ哲也てつやさんの学校視察だ。

ここで優秀な成績を見せておけば少し注目されることがあり、そこからヒーローズから声がかかることがあると聞いた。


……けれど、いつも以上の力は出せるとは思えないし、僕はいつも通りに最小放出の放出量を増やしながら術式そのものの強度をあげる練習をする。どうせ変わらないしね。

じわじわと放出量をあげようとしているけれど、どうしてもまた最小量から放出量が跳ね上がってしまう。


何度も何度も行ってもう慣れた魔力の暴走を抑え、そして暴走した分の魔力を新しい術式に通してみようとするけど……また、発動する前に術式が潰れてしまった。

……どうしようかなぁ………。


「……へえ? 凄い魔力だね」


急に誰かに話しかけられた。声の聞こえた方向を見てみると、そこに青柳さんが立っていた。


「ん? 今の魔力って、君のだろ?」

「あ、はい……」


ぶっきらぼうに思われるかもしれないけど、今の僕にはこれが限界だった。

憧れのヒーローズの一員が、今ここで僕に話しかけてきてくれている。それだけで正直お腹一杯になったような気分だ。


「……でも、使おうとしてる術に比べて魔力が多すぎるかな……もうちょっと押さえた方が良いよ」

「……努力はしてるんですが……」


そう言うと青柳さんは少しの間考え込んで、なにかを思い付いたように顔を上げた。


「ここの保健医はまだフルリさん?」

「……あ、はい」


何でそんなことを聞くんだろう、と思いながら返すけれど、青柳さんはにこにこ笑いながら凄いことを教えてくれた。


「それじゃあフルリさんに色々聞いてみるといいよ。あの人、そういうのを教えるの上手いから」

「……そうなんですか?」

「そうだよ」


半信半疑で聞いてみるけれど、青柳さんはにっこり笑って肯定する。


「ちなみに、私も一時期すごくお世話になった。とても厳しいけど、その分だけ確実に上手くなるよ」


テストの試験官にフルリさんがいないことを毎回感謝してたなぁ……なんて言っている青柳さんは、嘘を言っている気配が全くない。

けれど、いつもいつも机に向かって書類を作っているだけだったり、なにかよくわからないものを組み立てているだけのあの人が、そんなに凄い人には見えないのだけど……。


そんな僕の心情を読み取ったのか、青柳さんは苦笑いを浮かべた。


「まあ、騙されたと思って行ってみるといいよ。ただ、用もないのに行ったり特に悩んでいたりしないのに行ったら怒られるけどね」


……なんとなく、青柳さんはきっと怒らせたことがあるんだなと思った。


「もしかして、怒らせたことあります?」

「………ちょっとベッドを無断で使ってたら、全身が少しずつ機械に改造されていくのに誰もそれに気付かないうえ、いつの間にか片手がドリルになってたり両足の数が15本くらいになってたりした……って言う夢を放課後まで見せられたよ…………」


うわぁ。えげつない。





  フルリことフルカネルリのちょっとした話。




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