異世界編 4-5
フルカネルリだ。合格の確認をしたので、とりあえず制限時間内に魔力の産み出し方を知る手伝いをしてくれた実験動物を処理する。適当にバラして錬金で骨ごと土に還せばバレやしない。
まあ、私の研究に協力してくれたので、そこそこ綺麗に埋葬してやる。埋葬品などは何もないが、言われれば確かに墓だと思える程度には。
……わざわざ実験動物に墓を作ってやるとは……自分で言うのもなんだが、私は優しくなったな。
《本当に優しかったラー、実験動物に人間を使うことは無いんじゃないかナー?》
『……数は少ないけれどぉ……魔力を持った獣だっているものねぇ………?』
人間と獣では生態や魔力溜まりの位置が違うかもしれないだろう。可能性の話だが、知っておくなら人間の魔力溜まりの位置も知っておくべきだ。
《正論振りかざしてきター!研究者としての正論振りかざしてきター!》
まあ、そんなことはどうでもいい。私は今から魔法学校の教科書一式を揃えなければならない。制服は一応あるが、着ても着なくても構わないそうなので私は着ない。面倒だし、スカートだし、膝上15センチなどとふざけたことを抜かすから。
正直に言ってこの制服を着ることを強要されたら私は学校に入らず悪の秘密結社にでも入っていたと思う。
《制服着用の義務がなかったから存在することを許された世界カー………》
『……そう聞くとぉ……なんだか、馬鹿みたいねぇ………うふふふふ……♪』
《かなりマジな話だけどネー》
私は初めから本気だったぞ。本気で悪の秘密結社に身を寄せてもいいと思っていた。いや、むしろ積極的に寄せてやろうと思っていた。
まあ、制服着用義務が無かったのでその案は没になったがな。
《……【制服着用】世界が助かった理由【世界崩壊】》
『……脳内スレなんてたててぇ……どうするのぉ……?』
《別になにもしないけドー? たててみただケー》
『……ふぅん……』
まあ、そのくらいならば好きにしろ。私は私で好きにする。
つまり、全員いつも通りと言うことだ。
《確かにそうだネー》
『……いつものぉ……通りねぇ……』
学校生活はあまり楽しくはなかったが、様々な問題点が見付かったことは喜ばなければならないだろう。
《まるでもう終わったかのような言い分だネー?》
それはそうだろう。事実終わっているのだから。
《まさかまさかの全はしょリー!?》
仕方がないだろう。ここの魔法は認知されて間もないのだから、習うことがほとんどないのだ。
そんな日常を送ったところで、大して身になるとは思えん。
それに、学科に関しては最高位を常時キープしていた私が実技はそこそこなのを見て、割といじめがあったことくらいしか書くことはないだろう。
……実行犯と教唆犯と協力者をバレないように呪ったら、同学年の八割が奇病に冒された時には笑ったが。
《……確かにあれは酷かったネー》
『……見事にぃ……空席だらけだったものねぇ……?』
まさかあそこまで荷担しているものが多かったとは思ってもみなかったが、やったことを後悔しているわけではない。
こちらとしては幸運なことに、この世界の魔法はまだまだ幼く、そして未熟に過ぎる。そのお陰で習うことは少なかったが、ここまで派手なことをしてもバレることはなかった。
まあ、実行犯は私ではなくアザギなのだが。
『……ちょっとは隠す努力はしたわよぉ………?』
《実はアザギの隠蔽能力って結構凄いしネー》
そうなのか?
《ボクたちの隠蔽が凄すぎるだけデー、アザギが下手な訳じゃない……って言うカー、アザギは上手な方だヨー?》
……そうだったか。やはり周りがあれだと常識を失うな。
《最初からフルカネルリに常識があったとは思えないけどネー》
そうだな。
《……久し振りにツッコミ狙いでボケてみたけドー………やっぱりスルーされちゃうんだネー………しくしく……》
『……ふふふふ……そんなものよぉ………』
そうだな。結局私達はこのまま変わることは無いのだろうな。
……ちなみに、卒業したのは中学ではなく、大学だ。
《そこまでぶっ飛ばしてたノー!? 中学の話だと思ってたんだけドー!?》
まちがってはいないな。大学を卒業する過程で中学も卒業しているからな。
そして就職先として、魔法学校の高校の教師になることにした。
教えることは得意分野だ。
拷問と生かさず殺さず追い詰めることも得意だが。
《それ誉められることじゃないからネー!?》
そうだろうな。だろうから私は保健医として、つまりちょっとした医者として高校に赴任している。
怪我をした生徒の治療をして、ちょっとした書類仕事を終わらせればいくらでも研究の時間が取れる。
それに、医療関係となれば誰をも簡単に解析することができるこの仕事は、私に実に合っている。
『……本当にぃ……色々飛ばしたわねぇ………?』
そうだな。その通りだ。
隠れ蓑を手に入れたフルカネルリ。