異世界編 4-3
フルカネルリだ。受験の方法はもとの世界のそれと大して変わらない。
始めにペーパーテストがあり、それから実技のテストがある。
私はペーパーテストをさっさと全て埋めて、それから次の実技テストまでの暇な時間を、瞑想と思考実験にあてる。
その他にも、試験官の頭の中身を覗いたり、試験を受けている全員の思考を読み取ったり、時計の進みを遅くさせてみたり、色々なことをした。
《……カンニングじゃないノー?》
安心しろ。バレなければ問題ないし、私はもう書いた答えを変える気は無いからな。
それに、どうもバレてはいないようだし。
やっておいて不思議なのだが、なぜバレない? 普通バレるだろうと思ったのだが………どうやら私の魔眼は魔力の流れを見るだけなので、外に魔力が一切漏れないために気付かれないようだ。
『……バレたときはぁ……どうするつもりだったのぉ……?』
バレた相手の認識を弄って何もなかったことにする予定だった。まあ、必要なくなったがな。
……さて、それでは時間まで、この世界の魔法について、復習も兼ねて説明するとしようかね。
この世界の魔法は、二つ目の世界の魔法と似ている。
意識的にか無意識かの差はあれど自分で術式を組み、自分で魔力を流して魔法を発動する。それがこの世界の魔法だ。
ただし魔力は自分で生み出したものを使うため、完璧に同じと言うわけでもない。
この点は一つ前の異世界に似ているが、自分の中に小さな世界があると言うことはなく、ただ単に無属性の魔力を生み出し、そして溜め込む器官が存在するだけのようだ。
まあ、だからこそ学校で魔法という技術を教えることができるのだがな。
そしてこの世界には精霊という存在はおらず、魔法使いは完全に自力で魔法を使わなければならないらしい。
そのため強い魔法使いというのはなかなかおらず、国家や企業には重宝されるらしい。
………ただし、私はこの世界の全ての魔法使い及び非魔法使いと個人で戦争を起こしたとしても負ける気はしないがな。
『ぶっちゃけフルカネルリに勝てる奴はもう上位神にも早々いないと思うヨー? 神殺しスキルもあるしネー』
『……最上位の竜でもぉ……難しいと思うわよぉ………?』
この世界に竜はいないようだがな。未来には生まれるかもしれんが。
そう言う理由は簡単。今までは人間しか魔法を使える種族はいなかったのだが、どうやら動物にも魔法を使うことのできるものが現れ出したようだから。
このまま放っておけば、恐らくこの世界に魔法を使えない存在はほとんどいなくなることだろう。その時にこの世界がどのような表情を浮かべるのか……実に楽しみで仕方がない。
そこまで考えたところでテストは終了し、後は実技と面接を残すのみとなった。
まあ、実技はともかく面接は合格させてしまえばいいので楽だがな。
……さて、いったいどのようなテストが行われるのやら。
実技の内容は、まずは魔力測定から始まった。
一人一人が魔力検知器を向けられ、常時発散している魔力の量と密度から、およその魔力量を測るらしい。
……だけど、それってどう考えても魔力操作が少しできるだけで反則できちゃうよネー? ボクには関係ないけどサー。
しっかり測りたいんだったら、最低でも弱い魔力波でもぶつけて相手の体内にある魔力を測り取る方法くらいはやらなくっちゃネー? 超音波エコーみたいにサー。
それから得意な魔法の発動速度や個人の特性を調べて記録。一応、簡単なものだったら魔法機械も開発されている。
さっきの魔力探知機に魔力が関知された瞬間からカウントが始まって、魔法が発動される瞬間までの時間を機械で計測………くらいならできるみたい。
今までの平均はおよそ4秒。最低11秒くらいで最速2秒くらい。そんな中で我らがフルカネルリはと言うと……
『記録、1.25秒』
「なん……だと………!?」
こんな結果を出して、試験官の度肝を抜いていた。
ただし、フルカネルリはたいして速くやろうとはしていない。フルカネルリは本気でやれば、多分今の記録の1/100000000倍の速度で同じ術式が作れるはずだしネー。
ちなみに、今回使った魔法は火の魔法の初歩、発火。空中に小さな火を出す魔法だけど、なんでかみんな自分の指先にしか出さないんだよネー?
《火の初歩は発火ではなく熱量増幅だと思っているがな。水は凝縮、風は気圧変化、土は操作か錬成と言う所だろう》
そうなんダー?
《少なくとも、私はそう思っている。熱量増幅を自在に扱えるようになれば、術式を逆向きに使って温度を下げることもできるし、気圧変化を使って風を圧縮し続ければプラズマを作ることもできる。実に便利なものだよ》
水と土ハー?
《使い道は様々だが………例えば凝縮で、空気中の水だけでなく地面や生物の体内の水まで一ヶ所に奪い取ってやれば簡単に砂漠を作ることができたり、錬成で簡単に物質を反応させて劣化させたり、もしくは劣化した物質を新品同然にしたり……といったところか。派手さはないが使い勝手のいい属性だと思っているよ》
そっカー。
……べ、別にフルカネルリが地属性の魔法を使ってくれなくて拗ねてるわけじゃないんだからネー!
ツンデレをやってみたナイア。