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3-2

 

フルカネルリだ。中学生生活が始まり二週間。


「一目惚れしたんだ!付き合ってください!」

「断る。面倒なのでな」


……こういった告白を断ることが日課のようになってしまった。やれやれ、いきなり色気付きおってからに。


《言い方が年寄り臭いヨー》


事実年寄りだからな。少なくともこうして告白をしてくる少年少女よりは。

愛だの恋だのという感情は、前世の頃からよくわからん。強いて言うならば研究と実験こそが私にとっての恋人であったかもしれないな。


失敗すれば失敗したなりの結果を出してくれるし、成功したら成功したなりの成果を生み出す。私のそれは未発達で、安定した結果は出せなかったが……それもまた実験の醍醐味だった。


《フルカネルリには奥さんいたでショー?》


ああ、居たな。美しい女だった。

そして、理解できない私の事を、理解できないままに愛し続けることができた、稀有な女だった。


……ああ、そう言えば私にも、恋をして、誰かを愛したことがあった。


正直に言ってよくわからない感情だったが、悪くはない気分だったことを覚えている。


………やれやれ。帰り道で昔語りとは、私も随分と年を取ったものだ。外身はまだ新中学生だと言うのにな。


《まあ、フルカネルリには似合ってるんじゃないかナー?》


否定できんな。外身がいくら変わろうと、私は私だし。

……さて、それではさっさと帰って検体の育成と改造に勤しむとしようか。


《……そう言えばサー。さっき、告白してくる少年『少女』って言ってなかっター?》


言ったが、どうかしたか? 実際に少年だけでなく少女からも告白を受けているのだ。

無論、断っているがな。


《……へー。そうなんダー?》


ああ。




検体。それは私のクローンであったり、異世界から拾ってきた生物であったり、クローンの子供であったり、合成獣であったりと様々だ。

……前にも似たようなことを言った気がするが、まあ、気にすることは無い。

その検体には人権や尊厳等をほぼ認めず、クローン技術や記録媒体に記録をするなどの方法で代わりを用意してから、私の実験したいようにして好きなように使い潰すのが私のやり方だ。

利用できる限り利用してはいるが、いつの間にか壊れてしまうのだ。どの程度で壊れるのかという実験にもなるから気にしていないが。

情は無いのか、と検体の一つに問われたこともあるが、検体に情など湧かせていては研究に差し支えるだろう。


最近では主に遺伝子研究に焦点を当てている。

遺伝子を組み替え、混ぜ込み、自在に操る。

実際は自由自在というわけにはいかないが、それでもかなり自由に組み替えられるようになってきた。

神にでもなった気分……と言うのはおかしいかもしれんが、これはこれで中々楽しい。


ちなみに、私の体は弄っていない。経験したという記憶やその内容を頭の中に入れて、擬似的に理解はしているがな。


…………そう言えば、そろそろ次の世界に行くのだったな。準備だけはしておこう。

どんな世界だ?


《普通に魔法が認知されている、この世界の現代にすっごく近い世界だヨー》


そうか。現代的な魔法社会か。

この世界の現代に近いと言うことは、魔法だけではなく科学も発達していると言うことか。

科学を主体としていた世界に偶然何かの因子が降り注いだか、それとも元々あったものに気付いたのが科学がかなり発達してからだったのか、はたまた科学が発達していた世界と魔法が発達していた世界が何かの拍子にくっついたか……。


なんにしろ楽しみが増えたな。


「それはよかった。できればその世界についての記憶を私にもくれないか?」

「構わない。楽しみにしていろ」

「ありがたい」


……同じ顔の者が、片方は白衣を着て椅子に座り、もう片方は鎖に繋がれ全裸で床に座っていると言うのは、随分と妙な気分だ。

それも、どちらも私と同じ顔をしているのだから違和感は増すばかり。


ただ、一つの大きな違いがあるためそこまで酷くはならないが。


「ところで、それの調子はどうだ?」

「小康状態だ。暫くすればまた私の腹の中で暴れだすだろうな」


まあ、そう言うことだ。ちなみにこのクローンが孕むのは29回目。腹の中身の成長が早いため、こうして短期間で何度も孕ませることができるわけだが、クローンになっても丈夫だな。


「外にある魔力を取り込み、体を強化しているからな。経験と技術はそのまま残っているから、このくらいは」


ボゴンッ!と私のクローンの腹が一部膨れ上がった。どうやらそろそろ出産の時期らしい。

放っておいても問題ないだろうが、一応手伝いくらいはしてやるか。

今回こいつに孕ませたのは………蛇の魔獣だったな。

半人半蛇か。楽しみだ。






  自分も検体にできる科学者、フルカネルリ。





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