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フルカネルリだ。現在の学校は体育祭一色。毎年毎年のことなのに、なぜここまではしゃげるのだろうか? 理解に苦しむ。


《そういうものなのサー。祭りは楽しく、かつ騒がしくなくっちゃネー》


……どうやら、邪神の中では『祭りは楽しく騒がしく』が当然のようにインプットされているのらしい。確かに静かな祭りには通夜にもにた空気があるが、だからと言ってわざわざこんなことのために町ひとつを包み込む大結界の中に騒気と陽気を纏めて詰め込むことはあるまい。


《おヤー? 気付いちゃっター?》


まあな。どうやらあのレベル・スキル混合制ゲーム世界での研鑽も少しは役に立ったらしい。

とは言え、日常生活で役に立つものはほとんど無いがな。料理と掃除と洗濯くらいか。


……まあ、どうでもいいな。自分の内側の力を増やせただけでも良しとしよう。


さて、それでは体育祭に出陣だ。いつもならばそこそこにしておくのだが、今回は少しだけ本気で技を使おう。

力の方で本気を出しては色々と不味いことになるからな。


《そうだネー》




一年生達が大玉を転がし、二年生達がトラックを走る。三年生達はそれを見て声を張り上げて応援し、四年生達は五、六年生を巻き込んで応援団を立ち上げている。

私は体操着(下は短パンだ)のまま両手にポンポン持ってしゃらしゃら鳴らしていただけだったがな。わざわざ応援などしなくとも結果は変わらないだろうに。


「瑠璃って……もしかしてあんまりやる気ない?」

「私がやる気がないのではなく、周りがやる気がありすぎるんだ。私はいつもと変わらないさ」

「ふーん……。つまりやる気は無いんでしょ?」

「まあ、周りに比べればな」


私と同じく短パン姿の白兎が話しかけてくる。私があまり体育祭に乗り気でないように見えたらしく、何故か不安げだ。


「……途中で帰っちゃったりする?」


白兎にそう聞かれた。この事で悩んでいたのか? だとしたらやはり白兎は素直すぎるな。


「安心しろ。とりあえず片付けが終わるまでは残る」

「そう? よかったぁ……」

「……第一、あの教頭が見張っている中から逃げ出せるわけが無いだろうが。私は無駄なことはしたくない」

「ああ、たしかにそうだね」


白兎は私の言葉を聞いて、苦笑いをした。

まあ、逃げようとするクトゥグアを捕まえて連れ戻せるのだから、私程度が逃げ切れるはずもない。そんなことは白兎でなくとも一年生の夏には知っていることだ。


「まあ、そういうこともあるし、ゆっくりしているさ」






しゃんしゃんと手作りのポンポンを小さく振っている瑠璃を見る。どうも乗り気じゃないように見えたのは気のせいだったみたいで、無表情ではあるけれど瑠璃なりに楽しんでいるみたい。

いつものように私と瑠璃は五十メートル走に出場する予定だけど、まだ少し時間が残っている。


すとん、と瑠璃の隣に座って、今は三年生たちがやっている障害物競争を見る。

時々明らかに自分の身長と同じくらい跳んでいる子や、足を踏み出す度にすごい速さで平均台の上を滑り抜けていく子がいるけど、今の三年生にはすごい子がいるね。

私たちの時にあれと同じことができたのは………きっと二~三人だと思う。勿論、瑠璃のことは除いて。


「今年の三年生はすごいね」

「私達の代には運動能力を格段に上昇させるような者は少ないからな。どうやら今年の三年生には運動能力上昇系の力を持つのが多いようだ」


……割といつものこと。大人たちも喧嘩の時に思いっきり殴って空を飛ばせたり、ジャンプで追いかけて空中コンボを決めようとしたら相手の空中ジャンプでかわされて逆襲されてアスファルトにクレーターを作って先生たちに怒られたりしている。なんで生きてるんだろうね?


「邪神の加護を僅かなりとも受けているからだろう」「へーそうなん……邪神?」


私の疑うような声にも、瑠璃は普通に返してきた。


「ああ、邪神だ。だが邪神なだけで禍津神まがつがみではないから安心していいぞ。宗教では他の宗教の神は邪神だし、ほとんど問題ない。変態は多いが」

「それかなりの問題だよね? 変態多いってかなりすごい問題だよね!?」

「安心しろ。教え子に手を出すような奴は」


………………。


「いないぞ」

「どうして今黙ったの!?」

「いや、そう言えば前に薬を盛られたことがあったな、と」

「それかなりの問題だよ!知ってる人はいるの!?」

「人はいないな。邪神なら居るが」

「それっていいの!?」

「クトだからな。やった邪神はボロボロにされていたぞ」


……なら………いいのかなぁ……?





  春原白兎は見た!




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