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異世界編 3-24

 

フルカネルリだ。英雄達が結界を抜けてきたようなので、持て成しの準備を始める。随分楽しませてくれたし、これくらいはやってやろう。

英雄達は戸惑いながらもこの城に進んできているようだし、どうやら道案内は必要ないようだしな。


《フルカネルリもいい趣味してるよネー?》


そうか? 役目を終えた実験体に優しくしてやるのは普通のことではないのか?


《フルカネルリがやるトー、なんだか違和感がすごいヨー。最近は特に外道なことばっかりしてたしネー?》

『……それもそうよねぇ………なんだかぁ……おかしいわぁ………ふふふふ……♪』


そうか。まあ、わからんでもないがな。


自分で自分が狂ったことをやっているという自覚はあるし、そしてそれを辞める気が無いと言うのも理解している。

子育ては随分やってきたが、一人一人が微妙に違って面白かった、と言う‘面白い’と、人間を生きたまま解体して解剖して解析して知識を得るのが面白い、と言う‘面白い’が完全に同一なのもおかしな話だろう。


恐らく私は子供と接する時に浮かべる物と同じ笑顔を浮かべたまま、何千何万と言う知的生命体を殺害できるのだろう。


…………まあ、今更な話ではあるんだが。


《今更だよネー。フルカネルリだったらそのくらいやっちゃうよネー》

『……まぁ……できるでしょうねぇ………』


できるだろうな。悲しいことに。


……おっと、今は料理に集中だ。この私がうっかりで料理を焦がしてしまうなど、あってはならないことだ。

冒険するのは一人の時でいい。客を相手に実験をするわけにもいかないしな。


《……してるよネー? 現在進行形で実験中だよネー!? 英雄達で実験中だよネー!?》


そうだな。それがどうかしたか?


《……アー、いヤー……何でもないヨー》


……引っ掛かるところは大いにあるが……まあ、構わないだろう。




とりあえず適当にメイドを配置して、それから私は玉座に座る。面倒だが一応形式的にはここの王は私だし、それらしくしなければならないときもあるということは理解している。


……普段は理解していてもやらないことが多いが。


そしてようやく英雄達が私の前に現れた。


「よく来たな。歓迎するぞ、英雄達よ」






英雄達の目の前に居るのは、城の案内を自称するメイドが一人。何故魔王の城にそんな親切なものが居るのかはわからないが、少なくとも罠では無いらしい。

理由は実に簡単。

このメイドはともかく、他のメイドは二十も数が集まれば俺達にも勝るほどの実力があるからだ。

そんな実力があるのに、わざわざ俺達を罠にはめることは無いだろう。


……いやまあ、その方が楽に俺達を殺すことができると言うだけで十分かもしれないが。


「そのようなことはございません。カザーネラ様は、あなたがたがここまで来るのを心の底から楽しみにしておられましたので」


…………。


「なあウィフト。俺って今言葉に出したか?」

「自分のやったことも覚えてないの? 本当に貴方は駄目ね。口に出してないわよ」

「なんでお前は俺には厳しいんだ? 他の奴にはそれなりとはいえ友好的なのにさ」

「相手が貴方だからなんとなくよ。わざわざ言わせないでよね」


……そうか。なんとなくで俺はこんなに嫌われてるのか。流石になんとなくを直すのは無理だよなぁ…………。


「……差し出がましいようですが、あまりそういったことばかり言っていますと後悔することになると思われますが」

「五月蝿いわよ」

「申し訳ございません」


そのメイドはすました顔で謝罪したが、どうしてもそれに謝罪の感情を感じることができない。何故だろうか。


「女とはそういったものでございます。それを学習しないからレイド様はウィフト様に辛辣なことを言われるのてございます」

「黙ってなさい」

「ご安心を。話して面白くなければ勝手に黙りますゆえ」


………なんか男には入り込めない空気だよな。


「特にお前にはそうだろうな。この鈍感スケコマシが」

「スケコマシってなんだよ……」

「詳しく説明してやろうか? 行為の内容から具体的な文章まで詳しくこってり五時間くらいかけて」

「俺が悪かった」

「そうだよレイドさん。この事に限ってはレイドさんが全面的に悪くなってるんだよ」


あれ? 俺だけ悪者? なんでだ?


「なあ、なんで俺だけが悪者みたいな空気に」

「到着いたしました。この先でカザーネラ様がお待ちです………くれぐれも、失言だけは避けてください。……特にレイド様は」

「なんで俺だけ名指し!?」

「いや、わかれよ」

「わからない方がおかしいって」

「どうしてわからないんですかねぇ……?」

「馬鹿だからだろ」

「確かに馬鹿だものね。それこそかつてないほど」

「なあ、酷くね?」


誰もが俺の言葉を完全にスルーする。なあ、酷くね?

……酷くね?




誰も答えてくれないまま扉が開き、魔王の姿が見える。


「よく来たな。歓迎するぞ、英雄達よ」


……って…………


「……幼女?」

「死ぬか貴様」


ズドンッ!という音が響いて、俺の頭が後ろに弾け飛んだ。

ウィフトの叫び声とかが聞こえるような気がするが、そういったものを気にできないほどに頭が痛い。


「安心しろ。放っておいても死にはしないさ。私のゲームをクリアした客人達を殺すわけがないだろうが」

「……もし、それが違ったら?」

「…………ふむ。とりあえず唇を焼き斬り耳を削ぎ落として鼻を砕いて切り取り手足の腱を千切り取り爪を剥ぎ」

「ごめんなさい」


とりあえず怖かったので謝っておいた。


「……まあ、いいだろう。食事の準備ができているから、もう少し待っていてくれ」


それだけ言って、カザーネラは姿を消した。


…………し……


「死ぬかと思った……」

「……ほんと、馬鹿ね」


ウィフトがそう言っていたのが聞こえたが、俺は反論できなかった。





  英雄、魔王の城で歓待される。





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