異世界編 3-16
フルカネルリだ。私の研究のためにこの世界で魔王として世界を荒らすことを決めてから一月。私は世界すべてを踏破した。
神の住む場所にも行ったし、魔界にも行った。海底宮殿にも行ったし、天空に浮かぶ城にも地底の遺跡にも行った。
そしてその全てに足跡を残し、楔を残し、情報を受けることができるようにした。
これでこの世界でこれから誰かが開発する魔導や行う実験の途中経過や結果が纏めて入ってくるし、ほぼ全てにの策謀を無効化することができるようになった。
魔王らしく堅実に足場を固め、それからわざわざ武力のみで攻めていってやろう。当然策も使うが、戦闘中のブラフ程度で止めておいてやろう。
戦略的には、私の所に敵対する誰かが来たら私の勝ち。そいつの情報すべてを解析して送り返し、そして一時消えてまたいつか出ればいい。
それと同時に、いつまでも続いていても私の勝ち。戦争ほど開発が進む状態は無い。進めば進むほど知識が増える。私に損は無い。
しかし、人間を全滅させてしまったら私の負け。わざわざ新しい命が人間のように知識を持って世界を支配するまで待つのは流石に嫌だ。
それに、滅亡させてしまったら研究がそこで止まってしまうではないか。ディオとナギの二人も生きているからこそ恋路の観察ができると言うのに。
……まだ見ているぞ? ディオとナギの体内に仕込んだ楔の術式を通してな。
《最重要観察対象だもんネー?》
そうだな。
ちなみに二人の世界は私達の居る世界――この場合は今居るこの世界ではなく、私達の本拠地とも言える世界のことだが――より僅かに時空の流れが速く、こちらの一年が二年と半年ほどになっているようだ。
その世界の中で学生結婚をごり押ししたらしく、少し苦労はしたようだが実に幸せそうに日々を過ごしている。子供はまだいない。
《仲睦まじいのにおかしな話だよネー?》
その通りだが、恐らく偶然かディオがナギに負担をかけたくないと思って自重しているかのどちらかだろう。種無しで無いことは確認しているし。
この世界にも捨て子や親無し子がいる。魔物や盗賊に親を殺されたものだったり、食わせていけないから捨てられた赤子のことだ。
私はそのような子供を集め、自作した亜空間にある私の研究室二号にて育てて教育と言う名の洗脳と鍛練と言う名の調教をして、同じく亜空間に作った農場や海で働いてもらっている。
殺してしまって数を減らすのもあれなので、怪我をしたら当然直す(誤字にあらず)し身体は最盛期のままとめてある。老化もかなり送らせているが止めてはいない。
止めることもできなくはないのだが、そうすると止められた方が動けなくなるので辞めた。平均寿命はおよそ四千から四千五百ほどになるはずだ。
死んだ時に一気に老いて骨も体も風化した(その辺に居た犬型の小さな魔物で実験済み)ので情報はとれないし、それ以前にレベルの最大値を無理矢理改造して最低80まで引き上げた上に限界まで鍛え上げているので倒すのには苦労するだろう。
まあ、そこまで強い(この世界の人間の最大レベルの平均はおよそ11)のは二百人程度で、後は裏方や工作兵や魔物の育成・調教を主にするものばかりだから安心してくれ。
当然こちらも食料などの問題もあるので男も女も戦えて畑仕事ができるように教育したし、人間味があるように育てているので恋もすれば愛情も抱く。そうすれば必然的に子供もできて数が増える。
とりあえず亜空間を拡げながら数を増やし、二百年過ぎたら外の世界に喧嘩を売ろう。
魔物には少しばかり悪意の波動をぶつけてやれば暴れだすし、現在亜空間の入り口で結界を破ろうとして逆に取り込まれてしまった神々もその頃になればこちらに手を出せないと言うことを理解してくれるだろう。
…………ちなみに破ろうとしているその結界だが、破ると破った力と破られた結界を構成していた力を練り合わせて瞬時に張り直されるようになっている。
入り方は靴を脱いで結界の境にある小屋に入ってインターホンを押してくれれば気分次第で入れてやる。
ただし、中で暴れて物を壊したら『ドキッ☆カザーネラちゃんの秘密研究所』でモルモットになってもらうが。
《罰ゲーム怖っ!? 死亡確定じゃんそレー!?》
そうだな。
だが、人の家に上がり込んで暴れて物を壊すなど駄目だろう。
他の世界に乗り込んで暴れている私が言って良いことでは無いような気もするがな。
………ああそうだ、結界を破るための道具をどこかのダンジョンにでも作っておいておかねば。光の玉でいいか。
これを外に作ったダンジョン(魔物は泥でできたゴーレムと土でできたゴーレムと石でできたゴーレムと岩でできたゴーレムとたまに金属でできたゴーレムが主体、ボスは完全にミスリル金属で出来たフルプレートメイルで倒すと普通に着れるが呪われる)に置いて、そして一度使うとそのダンジョンに自動で転移して戻るようにしておかなければ。
そうでなければ戦っても楽しくないからな。こちらが勝つとわかりきっている全力の勝負など、つまらないからな。
《どんな呪いがかかるノー?》
脱げない。脱ごうとすると手が震えて止め金が外せない。他の人に脱がしてもらおうとすると身体中のありとあらゆる部位に激痛が走る。その上脱がそうとした方も激痛が走る。最終的には血管が内側から沸騰して死ぬ。
《酷い呪いダー!?》
『………移るところがぁ……また、酷いわねぇ………♪』
そうか? 私は優しいから食事と排泄は問題なく行えるようにしてやるし、微量の回復効果で睡眠を取っても全身が痛くなることはないし、防御能力は桁外れだぞ?
装備者が死ぬとその血に含まれた魔力を使って自動で修復した後に修復が完了するまで周囲の味方を殺して修復完了後にはダンジョンまで転移して戻るようになっているが。
当然着られていた間の戦闘経験や技術は入っているため強くなるが。
《それ優しくないヨー!?》
『……着ている間、MPが減らないだけましかしらねぇ……?』
ちなみに、回復魔法でも修復される。
《ついに半分生き物になっちゃっター!?》
フルカネルリの楽しいダンジョン作成計画。
《楽しんでるのはフルカネルリだけでショー!》
アザギも喜んでいるが?