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異世界編 3-15

 

フルカネルリだ。ミリスとは途中に立ち寄った村で別れ、私だけ次の町へと歩を進めた。まあ、旅の途中で偶然出会った者との別れなど、大抵はこのようなものだろうが。


《そうだよネー。普通はこんなものだよネー》

『……出会って別れてを繰り返すのも、旅の楽しみかたのひとつだものねぇ………♪』


そうだな。




別れたばかりのミリスだが、観察しているうちになかなか面白い事実を発見した。

それは、ミリスのような聖職者の内包する世界には、共通点が多々あると言うことだ。


そもそも、なぜ神の奇跡を人の身で扱うことができるのか。その事に興味があった私は、ミリスと出会ってからそれ以前にこの世界で出会った聖職者の内包世界を思い出しながら観察していた。

すると、程度は違えど聖職者(悪徳神父等は除く)の内包世界には、全く同じと言っても過言ではない部分があることに気が付いた。


それらは宗教の宗派ごとに僅かに違えど、根本に繋がっているものは同じだろうと確信できるほどに似通っていて、ミリスが神の奇跡を扱うときにその部分から力が溢れるのを見て確信を持った。


この部分は、信仰を土台として内包世界に現れた『その者が信仰している神の内包する世界』だと。


確かにこうすれば信者の数や信心深さによってその神が力を強くする理由がわかるし、信じる者は確かに神の座す場に行くことができるだろう。

信仰を持ったまま死ねば、神の内包世界の土台となっていた場所は神に飲み込まれたのを確認したし、洗脳して自分を棄てて神にすべてを捧げた者を殺したら魂はそのまま位を上げ、天使になったのも確認した。

そうして天使になった魂を自作した人の体に閉じ込めたら肉体が耐えきれずに崩壊したため、かなり本格的に魂が強くなっているのだろうという予想ができる。

ちなみに人の体に押し込めようとした元人間は出てきたと同時に私を殺そうと向かってきたが、アザギに捕らえられて逃げられなくなっている。


「食べるのなら研究が終わってからにしろ」

『……ふふふふ……はぁぃ……♪ よかったわねぇ……? まだ消えないでも良いわよぉ………♪』


人間だった頃の感性を呼び起こされたその元人間の実験動物モルモットは、顔を真っ青にして震えている。


……ああ、安心してくれて構わないぞ? 殺しも消滅させもしないさ。

ただ、殺してくれという願いも、辞めてくれという懇願も、いっそ消滅させてと言う哀願も、全て却下するがな。


『あ……あぁ……』

『……ふふふふ………可愛い子ねぇ……食べちゃいたいくらいに………』


こらこら、あまり脅かしてやるな。壊してしまっては以後の研究に差し支えるだろう?


『……ふふふふ……ごめんなさいねぇ……?』


……とはいえ、本格的に研究をするならやはり拠点が必要だな。世界を回り終えたら作ろうか。


……どうせなら、世界征服でも企んでみるか。

この世界の神の内包世界は理解した。そしてこの世界そのものは個人または個体の内包世界ではないことも確認した。

だから、まず私の研究所の周囲に神の力が減衰する結界を張り、神の干渉を抑える。

本気でやるなら陰謀を張り巡らせるところだが、ここはあえてよくあるゲーム等のようにラスボスの位置に立ってみようか。その方が研究には良いだろう。

実際に見て、感じて、解析した方が反応を楽しめるし、苦悩や思考回路などもわかるだろう。


………そうだな、そうしよう。勇者や救世主の登場を心待ちにしているよ。

まあ、実際に支配する気は欠片もないから安心してくれ。精々魔物を率いて拾い子を育ててぶつけるだけさ。私のところまで辿り着けたらそこで終わりにしてやろう。


……だが、諸国をめぐるのも辞めたくはないな。その場に楔でも置いて、勇者たちの到着と共に転移しようか。当然私達以外は転移は不可能にして。


私の名をそのまま使うわけにもいかないし、フルリ=カーネルの名も使えないから、新しい名を考える必要があるな。世界に宣戦布告をするときに名乗らなければ格好がつかないし。


……ナイアとアザギと私の名前の真ん中の文字を取って組み換えれば……カザーネラか。妙だとは思うが悪くはないな。これでいこう。


まあ、今はそれより諸国の見物だ。私の研究のために死んでくれる者達だ。名前くらいは覚えてやろう。


私が世界をまるごと理解するための礎となれ、異界の人間達よ。

足掻きながら知を築き、新たな力を身に付け、強くなり………その知識の全てを私によこせ!





  マッドアルケミスト、フルカネルリの野望。




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